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28話 聖人院

 聖都の中枢にある聖人院、そこには聖人たちの大半がここに住んでるらしい。

 聖人院の敷地は広大で、聖人の分類ごとに区画が分けられている。


 聖人の分類は大まかに5つに分類される。

 聖戦士、聖女(女性)、賢者(男性)、聖魂人、神使、の5種だ。

 因みに聖戦士と聖女、賢者は上位ランクが存在する。


 聖戦士と聖魂人は男女どちらでも覚醒する可能性があると言われている。ただし聖戦士は神官出身者しかなることはできない。

 聖魂人は聖人の中でもかなり一般的で、熱心な信者とかでもいるらしい。なので基本的には一般人の扱いだそうで、聖人院に住んでない人の方が多いらしい。一応他の聖人ではない人たちよりは優遇はされてはいる。


 神使だけは特別で、聖戦士、聖女、賢者、聖魂人の何れかであり、その上で神の寵愛と加護を受けた存在がなるとされている、らしい。

 神使は例が少ないのでよく分かってないとのこと、まぁ仕方が無い。


 未覚醒聖人という分類もあるけど、これは正式には聖人では無いとのこと、よく分からない。


 道中でここまでは聞いたんだけど、私にとってはどうでも良かった。どうせ使命が終われば聖人として動くのは終わりだし、ここを拠点にするつもりが無いのだから。


 さらに言えば私は聖魂人の神使なのでしょ、と思っていた。聖女であるはずがないと……。


 それに聖人院は話を聞く限り堅苦しそうだから行きたくないのよね。毎日お祈りだなんだで気が狂いそうだわ。


「貴女のことは聞き及んでおります。既に神使であることは間違いないでしょう。聖気への感覚が鈍いことから、ユーリスティアの予想通り今は未覚醒聖人だと思います。しかしその強い聖気が聖魂人のものとは思えないのです」


 アステリア曰く、聖魂人の聖気は然程強くは無いそうで、私の聖気は大聖女や大賢者、聖烈士の中でも上位に匹敵する程とのこと。

 既に神使である、と言うのは多分例の地下道を通ったことと残歴転生のことを指してるんじゃないかな?


 一応、気質や才能で覚醒当初から上位クラスになる場合もあるそうだけど、大抵は研鑽を積んで上位クラスになるのが普通だ。

 私が大聖女として覚醒する可能性が高いとアステリアは予想しているようだ。うん、勘弁して。


「聖女と賢者の覚醒はヘムベレツの祭壇で儀式を経る必要があります。……近くその儀式が行われる予定です。当然ジャンヌさんも参加していただきます」

「……それはどれくらい先なの?」

「聖人院に招かれた聖女と賢者の候補者は15日後に聖都を出発する予定です。儀式自体は17日後ですね」


 思ったより時間がない。私や『光の翼』のメンバーたちも1つの懸念を抱いた。

 私が言うまでもなく彼らからアステリアに質問が飛んだ。


「待て、聖都の外でスタンピードが発生してるそうだ。さっき緊急依頼が発せられてたぞ。そんな早期に行えるのか?幾らなんでも聖女や賢者の候補者たちが危ういと思うのだが」

「え?本当ですか?スタンピードが起きてるのであれば解消されるまでは延期となるでしょう」


 あ、延期になるんだ。延期のうちに神言禁書庫に入れないかなぁ、入れれば楽なんだけどなぁ。


 最悪なのは討伐に駆り出されること、これは正直やりたくない。駆り出されるとガルブエリと会う予定が狂う可能性が否定できない。


 そうしているうちに聖人院に着いた。

 ここで『光の翼』の皆さんとはお別れだ。


「ジャンヌちゃんだったか、聖人院では問題起こすなよ』

「脱走でもしてやろうかしら?」

「おいおい、止めてくれ。……それと俺のカンなんだが嬢ちゃんとは戦場で会いそうな気がするんだよな」

「ん……?」

「いや、気にしないでくれ。そう言えば名乗ってなかったな。俺はジャッカス、『光の翼』のリーダーをしている。ランクはAだ」

「あら、真面目ね。私はCランクで登録して一度も上げてないわよ。パステル市のギルドでBランクに上がれって何度も催促されてたけどね」

「パステル?もしかしてワルカリアの拠点に厄災の嵐をぶつけたという少女は嬢ちゃんなのか?」

「そうよ」


 なんと『光の翼』の皆さんがバケモノを見るような目を向けてくる。

 そしてアステリアさんの目が鋭くなった。何故なのだ……。


「これは驚いた。嬢ちゃんのことこの国でも噂になってるぜ。あぁそうだ、お前らも自己紹介しとけよ」

「オイラはバンディだ。見ての通り斧使いさ。オイラの異名は『粉砕のバンディ』だ。どうだカッコいいだろ」

「私はフィーリア、巷では『凍結の魔女』と呼ばれているわ」

「僕はウェリックさ、魔法と剣の両方を扱いこなす魔法剣士だよ」

「ラヴド、弓使いだ」

「ラヴドは相変わらずだな……。陰気だが悪いやつじゃないぞ?ま、そんな感じで全員Aランクさ」


 このパーティーとんでもない強者の集まりじゃない!

 全員Aランクで魔法剣士まで混ざってるって普通じゃない。どちらも異常要素だ。これまで見てきたパーティーの中では最強だろうね。


 ただ、ウェリックだけは気に食わないわね。あのウィンク、女遊びが好きそうに見える。そんなので私を落とせると思ってるのかしら?甚だ不愉快だわ。

 そして何故かユーリスティアはウェリックにキラキラした目線を向けていた。多分世間知らずなんだろうな。だから幼馴染で元冒険者のアステリアが付けられたんでしょうけど……。


「Aランク5人パーティー……ちょっと規格外じゃないかしら?こんなの初めて見たわよ」

「なーに、嬢ちゃん程じゃないさ」

「お姉さんたちのところに来ても良いんだよ?強い子は歓迎するわ」


 やっぱり冒険者が気安くていいわね。パーティーに入るつもりはないけどね。


「パーティーに入らずとも何時でも歓迎だよ。時間があれば遊んであげれるよ」

「ウェリックとか言ったわね。その視線と態度、不愉快よ。アンタのような男は嫌いだわ」

「女と遊んでばっかなのがバレとるぞ!ナンパはいい加減やめとけや、さっさと身を固めときな」

「バンディ!?酷くない!?」


 やっぱり遊んでいたらしい。アステリアに至っては軽蔑する目線をウェリックに送っていた。

 うん、怖い。


「別れを惜しむのもここまでにしましょう。やるべきことは沢山ありますからね。改めまして『光の翼』の皆さん、護送ありがとうございました。ジャンヌさん、ユーリスティア、行きますわよ」

「皆さん、それでは失礼します」


 ユーリスティアの微笑みは可愛い。


「おう、またな」


 『光の翼』側はリーダーのジャッカスが代表して挨拶をした。他は頭を下げている。うん、やっぱり良いパーティーだ。


「えぇ、また会えると良いですね」


 そして私は聖人院の敷地に足を踏み入れた。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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