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24話 ザリファス(下)

 翌日、改めて教国神言館の地下にあるという神言禁書庫に向かった。


「止まれ」


 なんと地下の入り口には聖騎士が5人も待機していた。

 まるで見られたくないものを見せない為に彼らは立っているように見えた。ここで止まるわけにはいかないので何とかして説得する必要がある。


「これでどうかしら?」


 それは教皇猊下から渡された無制限許可証だった。無制限である以上は問題なく受け付けてもらえるはず……。


「これは驚いた、無制限許可証なぞ普通は発行されん。だがここは話が別である。教皇猊下に再度訊いてくるが良かろう」

「え?無制限なのに?」

「本来この教国神言館は区画単位で許可が必要になる。その無制限許可とは地下を除く全ての区画を無制限に閲覧できる許可だ。ここ神言禁書庫はまた別の許可が必要になる。どこの区画でもそうなのだが許可外の場所を閲覧した場合は重罪人となる。理解したか?」


 どうやら駄目らしい、と言うか無制限の意味が滅茶苦茶だ。本当におかしな規定よ。でもそう言われてしまった以上は引き下がるしかない。ここで揉めるのは得策ではないし、強行突破はあくまでも最終手段、穏便に解決できるに越したことはないのだから。


「分かった分かった、下がれば良いんでしょ下がれば」


 でも正直気分は乗らない。だって余計な手間を増やしてくれただけだし。

 と言うことで教皇にどうやって会うかが問題だね。私でもあの人と会うのは少し難しい。如何にしてその要件を作り出すかだけど……。いや、私が動くより親交のあるザリファスに話して動いてもらう方が早いかもしれないわね。

 行くなら今かな。


ーーーーーーーーーー


 あまり呑気にしているわけにもいかないので教国神言館を出るなりすぐに彼の自宅を訪問した。

 彼は独りでお茶を飲みながら何かの小物を作っていた。多分アレは何かの内職だろうけどあまり気にはしてはいけないわね。


「早速来たか、グレンも早速ギルドに足を運んでおるわ。恐らく軽い依頼でも探しておろうよ」

「幾ら精算したと言ってもそこまで資金は豊富じゃなさそうでしたし順当な動きだね」

「それにしてもお前も上品で色っぽくなったものよなぁ……。転生前とのギャップが慣れんわい」

「流石に10年もお姫様をしていたら多少は板につくわよ。私としても当時の言葉遣いや動作を完全に戻すのは難しくなってるわ」

「それもそうだろうな」


 ハッキリ言ってしまえば私と彼の古い関係を考えればグレンは邪魔者になることもある。

 彼はグレンがいては話せない話もしたいのだろう。私としても彼がどう生きてきたのか知りたいところだしね。


「お主があの時一度死んでからそろそろ39年になるか。いやはや時が過ぎるのは早いものだ。今回のフリードめの依頼が最後の大仕事になるであろうな。最後の最後に面白い仕事をさせてもらえたわい」


 私もこれには答えにくい。だけどこのやり取りはまだ本題に入る前の前座でしかない。それに答えにくいことを言った自覚はあるだろうし。


「お主が敢えて今ここに来たのには理由があろう、まずはそれを教えてくれ」

「先ほどまで教国神言館にいたわ。無制限許可と言いながらも地下の神言禁書庫には入れないと言われてね」

「それで儂に助けを求めに来たと」

「そういうことよ。極力早く教皇に会いたいと考えてるの」

「それなら話は早い、5日後に会う約束を取り付けた。そこでグレンの顔合わせをするつもりであった。その時に一緒に話せば良かろう」


 こちらとしてはありがたいんだけど……幾らなんでも早すぎて気味が悪い。なんか変な取引してないわよね?

 普通は要職に就く者にそんなに早く会えることはできないし、ばったり遭遇でもしない限りは会えないものだと思って良いはずなんだけど……。


「何から何まで本当に助かる、と言いたいところだけど昨日の今日で何故取り付けられたのかは大いに疑問ね」

「まぁ奴も儂には借りがあるんじゃよ。その借りを返せと言っただけだ」

「老獪ね。それは流石に教皇の立場のあるガルブエリも断り難いか……。流石にタダでは転ばないわよね?」

「何かしらの無茶振りは来るかもしれんな」


 リスクは承知の上でやったのか、老獪さ故の余裕を感じる……。それでも私も一肌脱ぐ必要がありそうな感じがする。

 まぁどちらにせよ、私の頼み事もある以上は何かしらの要求は確実にあるでしょう。


 ここは私が動くべき時、覚悟はしよう。グレンも多分道連れだけど有無は言わせない、いや、言わせるつもりはない。


「さて、グレンが戻ってくる前に昔の話でもしようかのう」


 そういう彼の顔は晴れやかな老人の顔だった。

 年寄りの長話は異常なほど長いのが定番で私も正直苦手なんだけど逃げるわけにもいかない。

 私も彼と話したいことはあるし、私と彼だけだからできる話は今するしかない。


 そして私は日が暮れる直前、グレンが戻ってくるまでお喋りを続けた。


「おーい、戻ってきたぞ」

「おう、戻ってきたか!ジャンヌ殿、スマンがお喋りはここまでじゃな」

「そうね。グレン、なんかあったかしら?」

「討伐依頼を受けたぞ。10日以内だったけど明日明後日でこなす予定さ。近場の依頼だけどどうにも数が多くてね」

「3日以内で終わらせろよ。5日後は教皇ガルブエリとの会談がある。その場にお前も同席してもらう。分かったな」

「あぁ、間に合わせてみせる」


 グレンは1枚の依頼書を見せびらかしてそう曰わった。

 依頼の内容はポイズンビーの討伐だった。


 ポイズンビーは毒針で攻撃してくる危ない蜂だったわね。大して強くないけどアイツの毒は結構強力で致死性も高いんだよね。これが街道とかに現れたら早急に駆除の必要が出てくる。

 ただ、コイツの毒は薬の材料としても使えるので倒すなら毒袋は回収したいのよね。

 討伐証明部位は毒針なのでコレの採取も必要だし、依頼である以上は優先度はこちらが上なんだけどね。


「毒袋はちゃんと回収してね。良い稼ぎになるはずよ」

「そうなのか?」

「あの毒は薬の材料になるのよ」

「まだまだ青いのぉ、そういう知識は生きる上で重要だ。よく覚えておきなさい」


 ここからはグレンとザリファスの話になるらしい。なので私は退散させてもらった。


 さて、明日からは何をしようか?いや、明日考えよう。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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