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20話 教国神言館(上)

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。

 会談の翌日、私は残歴転生の記録について調べる為に教国神言館に来ていた。


 建屋は荘厳で巨大、美しく彫刻の施された石造りの壁面は見る者全てを圧倒する。私も初めて見たけどこれは立ち尽くすレベルだった。


 噂に聞く情報が正しければここはチバンガ教国の智と記録の全てが揃っていることになる。何故ならここは神聖な場所の1つとされ教国で武力衝突に発展した大規模な政争があってもここに手をつける輩はいなかったらしい。

 宗教国家だけあって聖地に対する信仰は極めて強い。故にここに収められた書物は古から現代まで守られ残っているのだ。


 他の国では少なからず古い遺産が戦争で無くなりましたとかあるんだけどね。


 入館すると中は基本的にはゴテゴテしていないシンプルかつ高級感漂う内装が施されており完成度の高さと教国のスタンスを感じた。

 所々に置かれた像は迫力があり、空間に与える良いスパイスとなっていた。


 正面には受付があり、その側には聖騎士が控えていた。不埒者を排除するためなのだろう。それくらいしなければならない情報が収められているとも言えるわね。


「ここは教国真言館、貴女の入館資格を確認します。ない場合は入館を認められません」


 受付のお姉さんはハッキリと入館に関する規制の姿勢を示してきた。態度こそ穏便だけど普通にここは超厳戒態勢で守られている。ここまで凄いと逆に期待が高まるわね。


「教皇猊下からの許可証です。確認願います」

「確認しました。しかし無制限ですか、貴女一体何者のですか?」

「お答えいたしかねます。事情があって教皇猊下の支援を受けている冒険者とだけ伝えておきましょうか」


 彼女は少し考えた姿勢を見せてから返事を返してきた。


「なるほど、まぁ良いでしょう。こちらは当館の案内図です。お帰りの際に返却してください。それでは神々のお導きがあらんことを」


 彼女はそう言って私を送り出した。

 聖騎士たちの任務はあくまでも見張りと対処、なので私に何かしてくることはなかった。腐敗してなくて何よりね。


 この教国神言院で最初に私が向かったのは教国秘史の区画だった。ここには表向き隠されたものを含め教国の歴史に関する書物が置かれているらしい。残歴転生した人なら普通は教国を一度は訪問する。つまり残歴転生に関する記録の一部が眠ってる可能性は低くない。


 最初に手に取るべき本は1つだった。

 それは『教国秘史全目録』と呼ばれる本で、教国の表向きに出来ない歴史の一覧とその細々とした内容を収録した書物を記載した本だ。


 内容は想像をはるかに超えていた。


 教国が他国で仕掛けた暗殺事件、各国の要人による教国への密訪問等々、これは確かに表向きに出来ない話ばかりだった。無論この中には残歴転生した聖人たちの話も載っていた。

 全16巻あって残歴転生に関する話は僅か4件しかなかった。私は残歴転生が疑われる理由を本当の意味で理解してしまった。確かにこれは存在そのものを疑わざるおえない。実例無いものは疑われて当然、世の中の風潮はそんな感じなのだ。


「思ったより情報が少ないわね」

「なんだい?一般人が調べ物かい?」


 振り向くと一人の若い神官がいた。

 彼の右手には私が目星をつけていた本の1つがあった。


「過去の残歴転生について調べてるの、貴方何か知ってるのかしら?」

「まさかその言葉が出てくるとは思いませんでしたよ。私も残歴転生については詳しくは知りません、ですが1人だけ、芸術史で知った残歴転生の聖人を存じています」

「芸術史?」


 予想外の方向から話が出てくるとは思わなかったわね。

 政治に携わったとか戦争やスタンピードで活躍したとかなら分かるよ?まさか芸術の世界でその名が出てくるとは思わなかったなぁ。


「えぇ、彼の名はバーダル、戦闘においては斧による派手過ぎる破壊を好んでいたことから『粉砕の狂戦士』と呼ばれていたそうです。芸術家の道を志していながら残歴転生の使命によって戦争に駆り出されたことを口惜しく思っていたそうです」


 やりたいことだけをやれたらどんなに良いことか。それはよく分かる。それにしても本人は本当に、そう、本当に、使命によって戦わされることが嫌だったのが犇々と伝わってくるエピソードだった。

 本人にしてみれば神からやれと言われた以外に理由は無かったんでしょうね。


 私の場合は敵討ちと言う立派な目的が付随するから使命のために動いてるんだけどね。後、王宮の窮屈な暮らしが嫌だったのもあるけど……。


「転生前はどんな人だったとか指名の内容とかは記録に残ってるのかしら?」

「いえ、それはここにはありません。その手の情報は地下の神言禁書のゾーンに収められているはずです。あくまでもここは裏側の表面でしかありませんから」


 とりあえず今日はここで知ることができる情報だけ見よう。流石に入館してから時間が経っててるのでこれから全てを回るのは無理だ。

 この若い神官には色々と良い情報を教えてもらえた。感謝しなくてはならないわね。


「時間取ってくれてありがとう。色々と欲しい情報が含まれていたわ」

「お役に立てて何よりです。私もここに拠点を置く学者の端くれとして嬉しい限りです。1つ気になったのですが、ここに入るには許可証が必要なのですがどのようにして得られたのですか?」

「これでいいかしら?」

「教皇猊下直筆の無制限入館許可証!?とんでもないものが出てきましたね。詳しくは問わないことにします。色々と裏がありそうなので……それでは失礼いたします」


 この神官、学者だったんだ。道理で色々と知ってるわけね。色々知ってしまうと消される可能性があることも理解している。流石としか言えなかった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。本年も宜しくお願いします。

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