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13話 悪道神官(下)

「何があったのです?」


 聞き覚えのある声の正体は教皇ガルブエリだった。

 彼が顔を出したことで形勢が逆転した。私にとっては護るべき存在は増えたけど権力的には上回ったわね。これで心荻なく腐敗神官どもは一掃できる。


「教義に反し、教皇に楯突く馬鹿どもが騒いでるだけです」


 何をあったのか、この現状でそう問われたらそう答えるしかないわね。

 しかし保身の為にケチを付ける者がいた。


「野蛮な狼藉者の冒険者が何を言う!楯突いてるのはお前だろ!」

「聞き捨てならないわね、その首を落としてほしいのかしら?まぁ教皇直筆の書を否定し、他人の命を狙うような腐敗神官のお前がどうなろうが私の知ったことではないわ」


 このやり取りを見ていたガルブエリの顔が険しいものとなり、視線が鋭くなった。これはもう只事じゃ済まないわね、コイツらの処分は決まったようなものね。


「まず冒険者を狼藉者とし悪と決めつける行為、それは教典にある『神々の下、人は平等。人たる者は善を成すべし』に反します。この場において貴方を悪道神官に指定します」


 ガルブエリはいきなり処分を下したようね。それにしても悪道神官の指定、処分としてはかなり重い。殺されこそしないものの、人としては認められなくなる。奴隷すら可愛く見える程の扱いを受けると聞いている。


 悪道神官への刑罰の例を人体実験の材料にされたり、徹底的に強制労働を科せられる病などで働けなくなれば即処刑になる等が挙げられる。でもこれはまだマシな部類で、拷問の実験や口にするのも悍ましい実験に回されることすらあるらしい。

 この人数ともなると何人かは本当に救いようのない刑が科されることが予想できる。うん、自業自得ね。


「そして、貴方はどうしますか?貴方は聖騎士の1人です。己で道を正せるなら赦しましょう」


 審判は入ってきた聖騎士まで及んだ。

 これも至極当然の結果ね。厳しくはあるけれどやはり好感は持てるわね。頂点が腐敗していないのが救いだわ。上から下まで腐敗してる場合は冒険者としては離れるのが鉄足、これを変えようとするならば粛清の嵐となるのは間違いない。

 今回は上が大義名分を以て粛清を仕掛けるので混乱は少ないと予想できる。チャンスなのだからやらない理由がない、私が彼の立場でも断行する。


「ジャンヌさん、申し訳ありませんが、小奴らの捕縛にご協力願えませんか?」

「望むところです」


 私のところにまで協力要請が来たわね。断る理由もないしメリットの方が大きいので受けることにした。連中は会談の邪魔になるし、いつまでも命を狙われ続けるのも御免だし。それに邪魔にならなくても社会のゴミなので早期に処分すべき存在でしかないからね。


 腐敗した悪道神官どもを捕らえるために戦闘態勢に入った瞬間、想定を超える愚行をした者が現れた。なんと教皇に攻撃魔法をぶっ放したヤバい奴が……


「ハァッ!」


 どうやらガルブエリもそこそこ戦えるらしいわね。魔力を纏わせた拳で飛んできた攻撃魔法を粉砕してしまった。地味に凄い。


「ガルブエリ!貴様はもう教皇猊下として認めない!ここで死んでもらう」


 教皇を認めないと言った馬鹿が出たせいで腐敗した悪道神官どもが次々と同調し始めた。どうやら吹っ切れたようで保身の為なら文字通り形振り構わないらしい。


 連中を生かしておくと危険、私はそう判断して抜刀した。正直なところ、連中を悪道神官として捕えるのは難しい。故に安全の為に斬り捨てるのが一番だからだ。自分の命は大切だ、うん。


「卑しい野蛮人め!死ねっ!」


 なんと抜刀したのを確認した悪道神官が私に向かって『ダークネスクラッシャー』と言う凶悪かつ破壊的な攻撃魔法を使ってきた。この魔法は発動までの時間が短く、破壊力に特化した特性を持つ暗黒魔法の1つである。

 神官が暗黒魔法を使うこと自体がそもそもおかしいけど、それを指摘してる暇はない。私は禍々しい魔法攻撃を避けて術者に迫り、その刃を振るった。


 そして暗黒魔法を放った彼は近接戦の心得は全くなかったらしい。マトモな防御はできず、僅か一撃で息絶えた。予想してたけど近接戦闘はやっぱり連中には効果絶大ね。


「そういえばお前も私に向けて攻撃魔法を用意していたわね。放たなければ良いって問題じゃないわ、さぁ覚悟しなさい!」

「う……うわあぁぁぁあ!」


 逃げ惑ったって無駄なんだけどね。ちょっと追いかけて後ろから心臓を貫いてハイお終い。

 何でその様な真似をしたのか理解に苦しむ。余りにも無様すぎたわね。せめて抵抗すれば筋は通せたのにね。


 この場にいながら動けなかったヘタレな聖騎士もここに来てようやく動き出した。彼も悪道神官を取り押さえていた。


「動くな!この反逆者め!」


 抑え込まれても暴れる悪道神官を力技で地面に押し付けていた。体格、パワー、技術、どれをとっても単独では勝っている。

 しかし……


「離しやがれこのポンコツがぁ!」


 別の体格の良い悪道神官が飛び掛かったせいで拘束が解けてしまった。

 でも彼はその程度でへこたれる様な存在ではない、へこたれるようでは聖騎士は務まらない。彼はすぐさま反撃に出て2人をブチのめして拘束していた。因みに鎧があるからなのかこの手の対応の訓練をしているからかは判らないけど武器は抜いていないようだった。

 うん、これでは私が野蛮人みたいだね……。


 ガルブエリは実戦は不向きそうだったけどそれなりに抵抗できてるので後退しつつも時間稼ぎにはなっている。こちらはこちらで何とか持ち堪えてくれると助かるわね。


 幾ら弱すぎな奴らでも数が多いと馬鹿にはならない。ここには役人やってる神官が53人近くいたが、そのうち38人が腐敗した悪道神官だった。流石にこの人数をどうにかするのには時間がかかるし、漏れは出る。生捕りに成功したのは12人、残りのほとんどを私が斬り捨てた。そう、全員ではない。


「おい!1人いないぞ!」


 逃げた奴は直ぐに捕らえないといけない。放置すれば善からぬことを企むのは確実、故に確実に逃げた奴を仕留める必要がある。


「逃げた奴は私が追うわ。まだ近くにいるはずだし、善からぬことが起きる前に対処するわ」


 止める者はいない。魔力探知をしながら追跡すればすぐに捕まるだろう。私は庁舎の外へと飛び出した。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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