表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/196

11話 モグラ

 教皇との会談の3日後、私は依頼の為に聖地であるウノコ山に来ていた。

 この山に謎の魔物が住み着いたらしく、習性も分からず討伐に困っていると言う話だった。


 新種の魔物は稀に現れる。普通は新種が現れると政府やギルドが生態調査を始める。その一環で倒し方の研究を行うことがあり、上級冒険者や実力のある騎士が動員して弱点を探るのだ。

 無論前世の私も何度か動員されたことがある。二度とやりたくないけどね。


 しかし今回は単純に打倒を求められた。つまり面子に相当なダメージがあったということ、じゃなきゃこんな依頼発生しない。

 かつての聖人が祈りを捧げ天に召されたと言われる聖地だっけか。まぁそんな場所に新種の変な魔物が現れたら確かに面子は丸潰れ、こうなればやるしかない。


「えーと?特徴としてはモグラみたいな姿をしている?え?地面に逃げちゃうじゃん!」


 改めて魔物について分かってることを纏めた資料を読んで私は頭を抱えた。


 ソロじゃないと逃げられる、と言うのは分からなくはない。変な特性だけどその特性を持つ個体は極々稀にいるからね。

 問題はモグラ型なので地面に穴掘って逃げてしまうことだ。飛んで逃げるのなら魔法で追いかけられる。でも地中は無理、そんなの対応できる魔法聞いたこともないし完全に想定外もいいとこだわ。


 私もモグラ型の魔物との交戦経験は無いのでどう戦えば良いのか、まったく分からない。完全に一から手探りでの戦いになる。これまで経験してきた新種の魔物は類似する魔物の情報があり、その類似種との交戦経験があることばかりだった。


 今回は魔物の動き方、魔力の動き、情報を集めながらの戦いをしなければならない。

 これをソロでって言われてできる人は限られてくる。そもそも魔法(探知含む)と近接戦の両立という要素を満たしてる人が少なすぎるからだ。


「まったく……とんでもない魔物が出たわね……」


 既に私の探知魔法が敵の位置を捉えている。なので現地には迷うことなく辿り着けるはず。

 考察が一段落した私は探知魔法と地図を基に進んでいった。既に謎の魔物らしき魔力は見つけている。情報によれば現地は儀式の為に草木がほぼ無くなってるらしい。なので植物の根っこはほぼ無く、穴は掘りやすいはずなのでモグラ型はかなり厄介なはず。

 うーん、やっぱり戦いたくない。逃げても仕方がないけど……。


 辿り着いた場所はキレイに除草されたかの様な土地だった。辺り一面砂礫しかない。

 なるほど、これは確かに儀式の為なのか特殊な何かがあるのか、それこそ聖地と呼ばれる理由がありそうな土地ね。

 よく見てみると所々に祭具の残骸らしきものが転がっている。そしてその中心には土の山があった。多分アレが巣なのかな?


 敵は目視できないものの確実にその山の中にいることは分かっていた。私は大太刀を抜いて戦闘態勢に入り、飛行魔法で山の上まで飛んだ。


 飛行魔法を使ったのは上から攻撃するためではあるが、真の目的は偵察だった。

 魔物の対抗策を探り、山の細部の形状を明らかにする為のが目的であり、挑発でもある。


 この山の特色としては掘った穴の残土で出来ていること、穴は頂点にあり、綺麗な円錐状の山であることが分かった。

 ここまで明らかにされながらまだ攻撃はこないのはちょっと意外だった。複数人で攻めると逃げることから索敵能力は高いと私は考えていた。つまり1人なら始末しやすいと考えてノコノコ出てくることを期待してたわけだけど、そうはいかなかったようね。


 となれば動かざるおえなくするだけ、まずは炎系の魔法で巣を炙ってみる。使う魔法は『獄炎滅却』にした。派手に長時間焼くという嫌がらせをすることで無理やり動かさせる策だ。



 巣が燃えている。盛大に燃えている。良い感じに燃えている。さぁモグラさん♪出てきてちょーだい♪


 私の祈りが通じたのかモグラの魔物は巣の近くから顔を出した。

 すかさず大太刀を顔面に突き立てた。


「ピギャーッ!」


 凄まじい悲鳴をあげ、モグラの魔物は大暴れを始めた。掘ってきたところから抜け出して暴れ出している。相当痛かったんじゃないかなぁ?振り回される爪が怖いわね。

 私は顔面から大太刀を引抜いて右前脚の動きとタイミングを合わせてモグラの片方の前脚を斬り落とした。


 片方の前脚が斬り落とされたことで我に返ったのか慌てて穴を掘ろうとしていた。でも上手いこと掘れていない。どうやら前脚と爪が無いと上手く掘れないらしい。予想が当たってよかったわ。


 私はその隙を突いて右後ろの脚を斬った。バランスの取れなくなったモグラはマトモに動けなくなっていた。うん、今ならコイツの弱点部位を探せるわね。


 まずは腹を裂いてみた。凄まじい量の血液と共に臓腑が飛び出してきた。ちょっと臭いわね……。

 腹の次は目を狙った。目自体は潰せた、でも反応は乏しい。多分視覚情報に頼らない魔物なんでしょう。

 最後に調べるのは背中にした。まずは皮を裂いて骨格を確認する。この頃には出血多量で動きはほぼない。そして調べるうちに意外な事実を知ることになった。


「えーと、これは……?心臓を骨が覆ってる?心臓を守るための骨がある魔物なんて初めてだよ」


 これは意外な特徴ね。報告の価値はあるわ。


 最後に心臓を潰して討伐完了した。

 最後に解体なんてやったから服が汚れちゃったわね。まぁいいや、街で何か服を買おう。


 それにしても……


「ふぅ……こんな魔物のやっぱり相手やりたくないわね。大魔法なしで引っ張り出せる気がしないわ」


 さて、報告内容はどうしよう?倒し方が非現実的過ぎて困るのよね。まず誘き出すのが難しすぎて非現実的なのよね。

 まぁいいや、教皇のところに報告しよう。もう少し簡単なやり方をとか言われたら言われた時、どうにもならなかったと言い訳しよう。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ