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私の隣の幽霊サポーター  作者: 白い黒猫


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2/5

スタンドで広がり深まり……

 前回、隣の席にとうとう人が来た話をしたけれど、そのあとすぐ次の試合も観に行ってきた。

 とはいえ、まだまだ様子はつかみきれない。これはもう少し観察が必要だなと感じているところ。


 というわけで今回は少し視点を変えて、私が使っている「シーズンチケット」について話してみたい。


 シーズンチケットは、1年契約でスタジアムの同じ席を確保できるサービス。

 購入できるのはチームの後援会会員だけで、「全試合現地で応援するぞ」という熱量を持った人たちが集まっている。


 私がいるのは、じっくりと座って試合を楽しむスタイルの人が多いエリア。

 中にはカメラを構えて選手の姿を追う「撮って選手をサポートする派」もたくさんいて、大きな望遠レンズがずらりと並ぶ様子は、旗が靡くコアゾーンとは別の意味でなかなか壮観だったりする。


 このチケット、毎年更新のタイミングで席を変えられて、実際には自分で席を選べる訳ではない。

「抽選」という形で申し込むので、どこになるか“運”だけ。

 だから、これまでの席の変遷も、「当たった席に座ってみたら、こんなだった」という流れ。


 たとえば、我が家は最初2階席で俯瞰したピッチを楽しんで観ていたけれど、「もう少しピッチが近いほうが面白そう」と思って1階席へ。

 それから何度か抽選に挑戦し、ある年に最前列の席を引き当てた。

 臨場感は圧倒的で、目の前で繰り広げられるプレーに心が躍ったのを覚えている。

 でもその年は、やたらと雨が多かった……。屋根はまるで意味をなさず、試合中ずぶ濡れ。

 何試合も経験して「これはもう無理」となり、次の年には“なるべく濡れにくい席”を求めてまた抽選。


 で、今の席に行きついたというわけ。

 試合が見やすくて、ゴールが正面にくるのも嬉しい。雨もギリギリでしのげる。

 そして何より、席のまわりの人たちが最高。自然に仲良くなって、今ではちょっとしたコミュニティのようになっている。


 抽選の割り当てには、中央に寄せるように配置される「中央寄せ理論」なんてものがあるらしい。後援会年数かシーチケ保持年数ごとに優先順位がつけられてそのグループごとに分離され空いた中央寄りの席から並び替えられる。

 確かに私も移動するたびにメインスタンドの中央寄りに移動し続けた気はする。

 ただ、友人のひとりは元の席から外側へと逆方向に飛ばされた。そしてそこが居心地がよいようで今もそこにいる。

 だから、真偽のほどはちょっとわからない。少なくとも「完全なランダム」ってわけではないらしい。


 こうして移動を重ねた結果、顔見知りも増えて、観戦の楽しさが何倍にも膨らんだ気がする。

 席が離れてしまった友達とも、エリアは同じなので顔を合わせると挨拶もできる。

 会えば少し立ち話をしたり、お土産や推し選手グッズの交換会したり……それもまた、スタジアムに通う楽しみの一部になっている。


 スタジアムで声を上げて応援するのはもちろん楽しい。

 でも、それ以上に、通い続けることで少しずつ育っていく人とのつながりが、今の私にとっては大きな場所になっている。

 試合の展開に一喜一憂しながら、隣にいる誰かと笑い合える喜び。

 お土産を渡したり、推しの話をしたり、ハイタッチで喜びを分かち合ったり。

 そうやって広がっていったこの場所での縁こそが、私がスタジアムに通い続ける一番の理由かもしれない。

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― 新着の感想 ―
なるほどねー。 自分で席を決める訳ではないんだね。 でもいい席でよかったじゃん! しかも席の周りの人たちも最高!? めっちゃいい席じゃん! でも私なら一人ぼっちになりそうです。
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