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第4章 12話

 光のエフェクトとともにリポップが始まる。またか、また殺されるのか……。体に力が入ってこわばってしまう。何度繰り返すのだろう。いつになったら解放されるんだろう。生まれては殺される繰り返し。あー、あの時がすごく懐かしい。案内人がいてレイコがいる。みんなで騒いで笑いっぱなしの毎日。また戻りたいな……。


 それにしても遅い。もうリポップしたはずだ。なぜ殺されないんだろう。目を開けるのが怖いのに。


 「ごめんなさい」


 突然抱きしめられた。懐かしい。懐かしい匂いがする。モミモミ。この慎ましい感触はやはり間違いない。


 「ゴブゴブー!(レイコか!)


 「ど、どこで判断してんのよー!」


 ズバコーン!


 この平野の中にある丘は……。


 「ゴブッゴブゴブ!(まさか、レイコか!)


 「ど、どこで判断してんのよー!」


 ズバコーン!


 この永遠の洗濯板はまさか……。


 「ゴブゴブゴブッ(間違いないレイコか!)


 「お前もかー!」


 ズバコーン!


 これで10回連続だ。ゴブリンすげーな。ぶれないぜ。キャッキャッキャッキャッと楽しそうに騒いでいる。


 あれだけ辛い目にあってきたというのに、レイコさんの前では微塵もそれを感じさせない。やつら正真正銘の男だな……。それにしてもなんだ、ちょっとうらやましいじゃないか。僕も混ぜてもらえないだろうか。


 あれからダンジョンへの特侵隊の侵入はストップしている。ヨルムンガンドちゃんが首を飛ばしまくってたせいだからね。誰が指揮官でも迂闊には飛び込めないだろう。


 朗報は、ダンジョン内での討伐で予想通りレベルが上がったことだ。僕はレベル42のままだったけど二人は順調にレベルアップしていた。戦力がアップしたのはうれしい限りだ。


 レイコさんもすでに人間やめちゃってるレベルのステータスだし、ヨルムンガンドちゃんはもうなんというか、いろいろすごい。油断はしちゃいけないのだろうけどティアとレヴィもいるし『千葉ダンジョン』はかなり安泰なのかもしれない。


レイコ(元ダンジョンマスター)

レベル18

体力220

魔力230

攻撃力88

守備力93

素早さ90

魔法:土、闇属性初級

スキル:魔力操作レベル1


ヨルムンガンド(大海蛇)

レベル16

体力350

魔力175

攻撃力380

守備力370

素早さ410

魔法:水、闇属性初級




◇◇◇◆◆



 新しく隊長となった桜井は部下と話をしながら『山梨ダンジョン』に入っていった侵入者について考えていた。


 「最初のトラップからダンジョン近くのトラップまでのタイムはどのくらいだった?」


 「はい!7分程度です」


 「レベル5の隊員ならどのくらいで走破可能なんだ?」


 「お、おそらくですが30分は必要かと」


 「確かやつは子供と女の子を背負っていたよな。それで7分か……。どうやら関わらない方がいい化物であるのは間違いないな」


 「魔法と思われる攻撃も受けています。死者は10名、重傷者8名です」


 魔法……か。ダンジョンに飛び込んだ際も使用していたな。そしてダンジョンから大量の水とともに流されてきた首なしの隊員。あれも魔法なのだろう。『山梨ダンジョン』に水なんてないのだから。レベル上限を超える能力に魔法が関係している可能性はあるのだろうか……。


 まぁ、今ここで考えたところでしょうがあるまい。ゆっくりと頭を整理してから桜井は隊員に伝えた。


 「いいか、よく聞け!我々の優先順位はゴブリンを侵入者に持っていかれないことだ!侵入者には一切手を出すな。我々ではあの化物には勝てないだろう」


 可能であれば話し合いをしたいがこれだけやり合った後では残念ながら難しいだろうしな。彼らの目的、魔法の使い方、レベルアップをどこでしたのか。我々が把握していないダンジョンがあるのか、聞きたいことは山ほどある。


 「甲府駅のテロですが、特侵隊のものと思われるサブマシンガンを使用していると連絡が入りました」


 「山梨で紛失したとの報告は受けてないな」


 「では、千葉ですか」


 「そうなるな。広範囲の氷の魔法で全滅だったらしいからな、武器は拾い放題だったはずだ」


 「わざわざ千葉で武器を手に入れて甲府でテロですか」


 「どうやらこちらと無関係という訳でもなさそうだな」

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