第19章 3話
奥へ進むにつれて徐々にガルーダがリポップしてるのを見かけるようになってきた。所々で光のエフェクトと共に復活を遂げている。やはり数が数だけにレベル上げには持って来いの場所と思われる。
ボスモンスター達を連れてのレベル上げツアーなんかを開催してあげてもいいかもしれない。新人ダンジョンマスターたちにとって、ボスモンスターが強くなるのは生存力が高まることに繋がるのだからね。ダンジョンマスターも気軽に来れたらいいのだろうけど、流石に外出のポイントのハードルは相当高い。
火弾×10
逃げ惑ったり、攻撃を仕掛けてくる『ガルーダ』を適度に処理していきながら奥を目指していくと、どうやら二階層の入口で立っているミイラ男カールさんの姿が見えてきた。包帯を器用に操りながら『ガルーダ』を討伐している。
「これはこれは、タカシ殿。その節はお世話になりました。姫様は二階層におりますので、私がご案内いたしましょう。どうぞ、先へお進みください」
その節って、僕が『熊本ダンジョン』でカールさん達を殺した時のことだろうな……。
「はい、カールさん。ありがとうございます」
カールさんは階段に入ってくる際に、包帯を何重にも重ねた壁を作りだし『ガルーダ』達が侵入できないように封鎖してみせた。
「『ガルーダ』達はすべて一階層に集約させたのですね」
「えぇ。その方が効率がいいですからね。実はそろそろ一週間が経過して『大阪ダンジョン』の封鎖を継続するのに、みなの疲労が貯まってきているのですよ。最初の数日は『新潟ダンジョン』の三人組がいたので、そうでもなかったのですけどね」
カールさんが仰ることはごもっともだ。ダンジョンの入口と二階層を24時間封鎖し続けなければならないんだ。交替でとはいえ流石に疲れるだろう。
「早めの対策が必要ですね。『新潟ダンジョン』の三人組も、もう少ししたらこちらに戻って来れるはずです」
「そうですか、それはとても助かります」
「それに今日からは、うちのウンディーネが暴れてくれるはずなので、リタちゃん達にはゆっくりしてもらいましょう」
「ウンディーネ……確か、水の精霊様ですね」
「まだレベルが低いけど、能力はとても高そうなので、すぐに『ガルーダ』達を圧倒するでしょう」
かなりエグい討伐をするから近くで見ない方がいいだろうけどね。
「こちらです。姫様、タカシ殿が参られました。ご案内してもよろしいでしょうか?」
「おぉ、来たか! 待っておったぞ。すぐに通せ」
簡易的に建てられたテントのような中からリリアさんの声が聞こえてきた。どうやらここにとりあえずの住居を構えたのだろう。ちょっと苦労が伺える。
「お久し振りですリリアさん。なんだか、いろいろとごめんなさい。結構苦労しながら『大阪ダンジョン』を封鎖していたんですね。あまり深く考えてませんでした」
「そこまで苦労をしてる訳でもない。気にするでない。ここにはレベルを上げる為に来ているのだ。元より快適な暮らしなど望んでおらぬ。ジョナサンの居住区が利用できればよかったのだが、あやつカモメじゃろう。まるで使い物にならんかった……」
「とりあえず、今後の方針を決めるのと、ここでの暮らしをレベルアップさせましょうか」
封鎖する人員については熊本、新潟のダンジョンマスターと全国の希望するボスモンスターの持ち回りで一週間のローテーションを組むことにした。とりあえず今週いっぱいはこのまま『熊本ダンジョン』と僕とウンディーネが継続して引き受けて、次の週から『新潟ダンジョン』のサクラちゃんに来てもらって希望するボスモンスターのフォローをお願いする。
「うむ、それで構わぬ。リタもかなりレベルが上がったしの。また少ししてから訪れよう。そのローテーションってやつでな」
「次に快適な暮らしを整えましょうか」
「どうするのだ?」
「ダンジョンの外に居住区を構えます。取り急ぎ、今日は在日米軍に大型のテントを張らせます。食料と湯も用意させましょう」
「おぉ、それはありがたい。つまり、入口を外側から塞ぐのだな。すると二階層を誰かが塞がなければならぬか」
「1ヶ月以内にユニットハウスのような物を人数分用意させましょう。ちなみにですが、『大阪ダンジョン』の階層って何階層あるんですか?」
「五階層が居住区になっておるので実質四階層になるな」
五階層ぐらいなら別に塞がなくてもいいような気もするけど、その辺の判断はリリアさんに任せた方がいいか。
「なるほどですね。では、今週に関しては入口側は僕が封鎖しましょう。二階層側は『熊本ダンジョン』でお願いします」
「すまぬな。助かる」
「それでは、一旦ダンジョンの外で諸々の準備を整えてきますね」
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