第19章 2話
現在『大阪ダンジョン』周辺は特侵隊と在日米軍が立ち入り禁止区域にしているので、輸送用ヘリはダンジョンの目の前まで来ることができる。対外的には『大阪ダンジョン』も攻略はせずに『千葉ダンジョン』同様に封鎖をするという話になっている。なので一般の人や自称冒険者が入り込まないようにしっかり警備されている。
しかしながら、日課になっていた『大阪ダンジョン』のガルーダによる大阪湾ダイブが最近行われていないので、特侵隊が攻略を進めているのだろうというのが世間的な噂話として広がっている。
「やっぱり早いね。千葉を出発してから二時間半くらいかな。ウンディーネはレベルアップ頑張ろうね」
ウンディーネは僕の頭の上で落ちないように髪の毛を掴みながらも大人しくしている。最近は気温も上がってきたので頭が冷たくて若干気持ちいい。ダンジョンの入口にはスマホを持ったガルフがうるさそうにミミを押さえながら立っていた。
「意外に早く来たんだな。それにしても、この世界の乗り物っつーのはスゲーもんだな。なんであんな鉄の塊が空を浮くんだよ」
「僕も上手く説明できないけど、魔法みたいなファンタジーの力がないからこそ、夢を実現させようと文明が発達したんじゃないかなと思うんだよね」
「そんなもんか」
「そんなもんじゃないかな」
ガルフはスマホ番のために洞窟の外に居たのだろう。電波の届かないダンジョン内にいても使用できる通信機器とかないかな。第一世界で使ってるバッジみたいなのがこっちでも使えたらいいんだけど……。
「姫様がお待ちだ。さっさっと行ってやってくれ」
「あっ、うん。そうだね」
ダンジョンの中に入ると、『熊本ダンジョン』組のフランケンとリタちゃんが待機していた。おそらく、中間地点にも数名いて間引きするようにレベル上げをしているのだろう。周辺を見渡す限りでは『ガルーダ』の姿は見えないので、今は休憩中というかリポップ待ちなのだと思われる。ダンジョンの中はガルーダやカモメが過ごしやすいように止まり木や鳥の巣が多く設置してあり、天井はとても高く設定してあるようだ。現在は鳥の姿は見えず、とても静かだ。リポップしてはすぐに討伐されているのだろう。
「パパぁー、お久し振りでしゅー。むむっ、女の匂いがしましゅね。まさかとは思いましゅが、浮気とかしてないでしゅよね?」
あざとく抱きつきながら娘アピールをしていくるリタちゃん六歳。何をもって浮気なのかが判断に困るところではあるが、リリアさんから見た時に間違いなく浮気をしている自覚はあるな。
「リタちゃんはレベルどのくらいになったの?」
「乙女にレベルを聞くなんてデリカシーのない人でしゅね。そんなんじゃママに嫌われちゃいましゅよ。まぁいいでしゅ。驚いていいでしゅよ。なんと、もうレベル9になったでしゅよ!」
数日でレベル9というのはなかなか効率は良さそうに思える。問題はどのくらいでレベルが上がりづらくなっていくかだね。あとでリリアさんに聞いてみようか。
「おぉ、すごいねリタちゃん。ところでリリアさんは奥にいるの?」
「むっ、あまり興味なさげでしゅね。ママはガルーダを倒してもそうそうレベルが上がらないでしゅから、奥の居住区でお休みしてるのでしゅよ。今行けば二人っきりでしゅよ。二時間は誰も近寄らないでしゅ」
いい表情で親指をグッと突き出すリタちゃん六歳。君は本当に六歳なのか? 隣にいるフランケンがソワソワと僕の頭の上を見ているのだが、ウンディーネが気になるのかな??
「僕の仲間のウンディーネもここでレベル上げをさせてもらいたいんだ。少し面倒見てもらってもいいかな」
「フンガ」
言葉通じているのか不安になるが、両手を出してくれているのでおそらくウンディーネにこっちにおいでと言っているのだろう。
「ウンディーネ。みんなと一緒に頑張るんだよ。僕はこのダンジョンの運用方法とか少し話し合ってくるからさ。またあとでね」
うんうんと頷いたウンディーネは恐るおそるフランケンの手のひらに飛び乗った。
「フンガフンガ!」
フランケンにめっちゃ撫でられているので、嫌われてはいないようだ。見た目大きい男の人が小さな人形を撫でて喜んでいるようにしかみえないので、外にいたらお巡りさんに職務質問されること間違いないだろう。ウンディーネが少し困った表情をしているが、その内に飽きるのではないかなと思う、多分。
「カールさんは奥にいるのかな。きっと彼が側にいた方が話が進みやすいような気がするんだ」
「まったくパパは恥ずかしがり屋さんでしゅね。カールは奥でガルーダが階層の移動をしないように見張ってるはずでしゅ」
「そっかそっか。ありがとうリタちゃん。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
5月24日に集英社ダッシュエックス文庫より発売となります。
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