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第16章 11話

 何故かパール君が二階層をポイント交換してしまったようで……。アイシャちゃん大慌てです。


「ちょっ、パ、パール君? 今、何したの? まさか、二階層造ってないよね!?」


「いや、マスターが迷っているなら案内人として背中を押さなきゃならないかなって」


「えーっ! 交換しちゃったの!? で、どっちにしたの!?」


「『海(闇夜)』だよ。アイシャがそっちにしたかったのわかってるし」


 最初の頃にピースケが温かいスープをさらっとポイント交換してたのを思い出したよ。今じゃすっかり千葉の特産品を交換しまくっているけどね。


「た、確かに気にはなってはいたけど、これ以上、いろんな人に迷惑掛けたらダメでしょ。もう既に今更だけどね……」


「ここはアイシャのダンジョンなんだからアイシャが好きなようにするべきだと思うんだよね。もちろん、いろんな人に助けてもらっているのは重々承知なんだけどさ、案内人としては、アイシャの背中をポンっと後押しをしてあげたかった訳」


「して、パール君、その心は?」


「(闇夜)とか、なんか格好いいし気になるよね! これ、絶対凄い階層になるよ。消費ポイントが必要な階層なんて今まで聞いたことないし、ダンジョン協会的に選ばせる気マンマンでしょ」


 ノリと勢いで動きやがったな。とはいえ自分の命が掛かっているのは案内人も一緒だ。パール君の判断も尊重してあげてもいい。ただ、何か重大な問題があっても本当知らないけどね。


「タ、タカシさん、かさねがさね申し訳ありません」


「いや、まぁ、選択しちゃったのはもうしょうがない。過去には戻れないんだからさ。とりあえず、召喚可能なモンスターのチェックからしてみてよ」


「は、はい。えっとですね、『ブラックタイガー×10万匹3000P』? 、『ブラックシャーク15000P』……せ、せんごひゃくぅ!!!」


「違うよアイシャ、1万五千だからね」


「パ、パール君、これじゃあモンスター増やせないよ!」


「アイシャ、そんなことより『ブラックタイガー』って虎なのか? ガオーってやつか? モフれるやつなのか?」


 どうやらタイガーという言葉にリノちゃんが反応したようだけど……これってね。タイガーというよりエビ感すごい漂ってるよね。


「わ、わかりません」


 階層が海だし、むしろ10万匹という単位でタイガーの方が出てきたら怖いわ。1体あたり1ポイントないんだからね。


「アイシャちゃん、階層については何か情報ないのかな?」


「さっぱりです」


「よし、じゃあ、みんなで二階層に行ってみようよ」


 と、みんなを誘ってはみたものの、ローパーのいない海に興味を失ったティア先生をはじめ、どうやら何人かは居残って会議室で見ているとのこと。ダンジョンバウムクーヘンでも食べていてください。


 ということで、二階層に向かったのは僕とアイシャちゃんとパール君、雪蘭さん、モンスタードールズからはサクラちゃんにリノちゃんだった。


 先頭を歩く雪蘭さんが二階層に入ると、早速あまりの暗さに戸惑っていた。


「やはり階層全体が闇夜ということもあって暗いな。タカシさん、何かよい手立てはないのか」


 二階層は暗く月明かりでほんのり辺りが見渡せる程度だった。海のさざ波の音が響いていて妙な怖さを感じる。階層全体の雰囲気が何とも言えない雰囲気に感じられる。ほらっ、夜の海ってなんか怖いでしょ?


「了解、火弾(ファイアボール)


 大きめの火弾(ファイアボール)を上空に浮かべながら浜辺を歩いていく。


「サクラさん、何で撃った魔法が自動的についてくるのだ。あれは、私もいつか出来るようになるのか?」


「あー、無理無理。出来る訳ないよ。師匠の『魔力操作』スキルはかなり異常だから気にしたら負けだよ」


「や、やはり、これは異常なことなのだな。安心したようなちょっと残念なような」


 やべー奴扱いはもう慣れている。もうそこまで傷つかないんだよ。気味悪がられたって便利なものはしっかり使うまでさ。


 この暗い海にはまだ何の生物もいない。ちょっと信じられないよね。


「アイシャちゃん、残りのポイントはいくつなの?」


「えっと、ちょうど7000ぐらいですね」


「ということは、『ブラックタイガー』を召喚しても4000残るのか」


 消費ポイントが毎日1000引かれるけど、コウモリさんの外出で十分お釣が出るし問題ないだろう。マレーシア政府も今日同様にかなり訪れるだろうしね。


「召喚、しますか?」


「そうだね、パール君よろしく」

「わくわく」


 いや、タイガーの方は出ないからね?

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