第2章 7話
ようやく気を抜くことが出来るな。
敵はいないが妙に疲れさせられる通路だった。
私は今、水の流れる神殿の中に入り休憩している。
どうやらここで後方部隊を待ち情報を整理してから行動方針を決めるという。
ダンジョンマスターとやらが重傷ということから血痕がまったく見あたらないというのはおかしい。
おそらくだが、あの黄色い花畑に倒れていたのだろう。
今頃、後方部隊が発見していることだろうな。
問題はこの先がどこまで続いているのかだろうが、後方部隊と合流したら一度撤退をするのではないかな。
ダンジョンマスターという脅威が去ったからには、あとはゆっくり探索していけばいいからな。
それにしても不思議な場所だ。
洞窟内のはずなのに光が射しており、水が流れ、神殿が建てられている。先ほど通った花畑だって考えてみるといろいろとおかしい。
異様だな。だからダンジョンなのだろう。
最早考えてもしょうがないが、ダンジョンマスターとやらの目的は人殺しだけだったのだろうか。
このような不思議な空間に魔法を扱う能力を持ち、死んだ人間を操ることも出来るという。
何のために人を殺していたのだろうか。なぜ人類に敵対しようと考えたのだろうか。考えれば考えるほどわからなくなるな。
おっ、あれは花畑を探索していた大久保達だな。ようやく合流か。さてダンジョンマスターは見つかったかな。
「大久保、やつはいたのか?」
「はい。すでに死んでおりました。私の隊3名が外に運び出しております」
「そうか。これで一段落だな」
「まだ先に通路があるのですね。どうするのです?」
「川崎隊長も心配だろう。一度全員戻ろう。探索はこのあといくらでも出来る。そういえば、水路を確認させていた隊員は見なかったか?彼らとも合流して戻るぞ」
「神殿のまわりに人を見かけませんでしたが、裏手側を探していたのでしょう。では、我々7名が殿を務めましょう」
「うむ。頼んだ。では全員戻るぞ!」
「はっ!」
14名の後ろに大久保隊7名がつき神殿を出ていく。
しかし水路を捜索中の隊員は見当たらない。
「おーい!中村!柴田!、何処にいる?佐久間、矢沢!」
水路組に呼び掛けをしているとカチャっと音が鳴る。
振り返ると、大久保隊7名がゆっくり囲うように放射状に広がり短機関銃を構えていた。
「っな!」
ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!
ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!
「うぁーっ!!おぁー!………。」
ピコン!侵入者を討伐しました。
討伐ポイント42万P取得。
◇◇◇◆◆
「2階層に届きませんでしたね。お姉さま」
「『てんとう虫』さん無双ですわ!1Pモンスター、略してワンモンなのに無双ですわ!」
どこが残念そうなレヴィとテンションあげあげな様子のティア先生。
「『てんとう虫』がすごいのはもちろんだけど、寄生を可能にしたのは10万株の『菜の花』達による催眠効果だし、『半魚人』のチームプレーも見事だったと思うよ」
「もちろんですわ。でも、彼らに戦術を与えたのはタカシ様です。さすがでございます」
「ありがとうティア。でも課題もいっぱい見つかったよ。特殊部隊の方にはもう少し進んでもらいたかったんだけどね」
「お兄さま。課題なんてございましたか?私には完璧に見えました」
「レヴィ。言い出したらきりがないけど、せっかく細い通路をつくったのに仕掛けを準備してなかったのはもったいないなぁとか」
「あと、『菜の花』の催眠(生きたまま乗っ取る場合)はやはり時間がかかるなぁとか。あの部屋で時間を稼ぐモンスターがいてもいいなぁとか」
「水の神殿の効果を生かすモンスターがもう一種欲しかったなぁとか。ホント言い出したらきりがないよ」
「すごいです。そんないっぱい考えていらっしゃったなんて、お兄さまは戦略家なのですね」
「そんなたいした考えではないけど、みんなを守るダンジョンだからね。しっかり管理しないと」
ダンジョンもよりよい方向へ変化させていかないとね。またみんなでダンジョン会議をお菓子とお茶を飲みながらしたいな。
ちなみに、大久保さん以下10名は土棘しときました。
ピコン!侵入者を討伐しました。
討伐ポイント30万P取得。




