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第11章 12話

 あれから数日、僕たちはついに決行の日を迎えていた。準備も万端に整っている。情報もかなり精度を高め収集することができ、最終的に狙いも『ガルーダキング』に絞ることに決まった。


「師匠、私の役目は『ガルーダ』達が飛び込まなかった時に海に落とせばいいんだよね」


「うん、サクラちゃんとミクちゃんに判断は任せるよ」


 久々に『新潟ダンジョン』からはモンスタードールズ揃い踏みでの登場である。ミクちゃんとリノちゃんは何故かヨルムンガンドちゃんの手を引いて面倒をみてくれている。よくはわからないけど小さな子が好きなのかもしれない。助かるからいいんだけど。


「オッケー! で、師匠は何をするの?」


「僕は『ガルーダキング』が同行していた場合の足止め役だよ」


「なるほど。じゃあ気兼ねなく魔法に集中出来そうだね」


「魔法は合体して撃つの? ちなみに……」


「大丈夫、大丈夫。これでも五分ぐらいは合体したままでいられるようになったからさ。威力もかなり上がるし申し分ないはずだよ」


「それならいいんだ。よろしく頼むね」


「レヴィ、準備は大丈夫?」


「そうですね。あとはヨルムンガンドちゃんが網を抱えて海の中に待機するくらいですかね」


「こんな小さな子に海に入って『ガルーダ』を捕らえさせるとかタカシは鬼畜マスター」


「リノ! ヨルムンガンドちゃんは『大海蛇』なのよ。私たちが束になったって敵わない強者なんだから」


「まぁ見た目は五歳児だからね、リノちゃんの言いたいこともわかるよ」


「なんだ、姉ちゃん達心配してくれてんのか。俺は久々に海に入るの楽しみなんだぞ。エラ呼吸出来るしな」


「か、かわいい。タカシ、この子持って帰ってもいい? サクラと交換でもいい」


 サクラちゃんいなかったら君ら合体できないんだからね! デストロイヤー出来なくなっちゃうんだからね。攻撃力ガタ落ちだよ。

 しかしながらよく考えてみるとヨルムンガンドちゃんと交換ならむしろ攻撃力アップだな……。


「なっ、マスター! 何真剣に考えてんだよ。い、嫌だかんな!」


「いい子にしてたらね」


「うぅぅぅ……」


「お兄さま、ヨルムンガンドちゃんが可哀想ですよ」


「ごめんごめん。冗談だって。頼りにしてるんだからね」


「ほ、本当か?」


 レヴィの太ももに抱きつきながら聞いてくるヨルムンガンドちゃんがうらやましくてしょうがない。くっ、これが子供の特権というやつか……。ヨルムンガンドちゃん的には、レヴィに掴まっていれば『新潟ダンジョン』に売られないとでも思っているのだろう。


 ちなみにだが、今回のガルーダ誘拐作戦のメンバーは僕とレヴィ、ヨルムンガンドちゃんにモンスタードールズだ。


 また、『静岡ダンジョン』のリナちゃんからガルーダ達が大人しくなるヤバい薬をいただいている。かなり濃度が濃いめらしいので扱いには注意してほしいとのこと。出来れば使いたくない。


 その時ポケットに入れていたスマホに連絡が入った。ダンジョン周辺を見張らせていた『てんとう虫』さんからだ。


「ヨルムンガンドちゃんそろそろ仕事の時間だ。海中待機よろしく」


「おぅ! すっげー活躍するから見とけよ。めっちゃエラ呼吸すっからな!」


 ヨルムンガンドちゃんは海に飛び込むと、腐った小魚の匂いがプンプンの網を闇の門(シャドウゲート)から取り出した。正直あまり触りたくないし吐き気を催す類いのものだが、ガルーダ達には撒き餌代わりになり、ヨルムンガンドちゃんの気配も消せたらなと思っている。


 しばらくすると海中で大きなうねりが広がり波が打ちつける。ヨルムンガンドちゃんが変身したのだろう。何度も練習したので上手く捕まえてくれることを祈りたい。


 実は新しい階層を追加している。海のフロアを六階層に造り練習を重ねてきたのだ。海に飛び込ませれば何とかしてくれるはずだ。


「じゃあミクちゃん達もよろしく頼むね。まだ連絡はないから『ガルーダキング』は来てないみたいだけど念のため僕たちは淀川沿いに移動するよ」


「任せてください。リノ、サクラ配置につくわよ」


「ヨルムンガンドちゃんのためにも頑張る」


「師匠もしっかりねー」


 軽く手を上げて了解の意を見せると僕とレヴィは大阪湾から離れた河口近くまで移動する。レヴィの役割は失敗した時の保険だ。逃げてくる『ガルーダ』達を少しでも多く捕らえるために待機してもらう。


 『ガルーダキング』が来なかった場合は僕も捕獲にまわる……はずだったのたが、つい先ほどスマホに入った連絡には『ガルーダキング』も後方から来ているとのことだった。


「レヴィ、イーグルが来ているようだ」


「お兄さま、ご武運を」


「あぁ、任せて」


 リリアさんの会談もそろそろスタートしてる頃かな。僕は僕の仕事をきっちりやろう。

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