第11章 5話
「リタちゃんごめんね。今度は反射の練習をしようか。僕が反射するから適当なタイミングで魔法を撃ってよ。ミサキさんは離れた場所で見ていてくれるかな」
「そうでしゅね、ではこうしましょう。パパはかなり上達してきているのでミサキお姉ちゃんと二人で攻撃しましゅよ」
「えっ、大丈夫なの? いくらタカシ君でも二つも反射出来るのぉ?」
「実戦を考えたら複数の魔法を反射出来なければ使い物にならないでしゅよ。パパに必要なのは実戦に近い応用力なんでしゅ」
なるほど、そうきたか。
「で、でも反射された魔法は術者に跳ね返ってくるのよね」
「ミサキお姉ちゃんはパパに治癒を撃てば安全でしゅよ」
「な、なるほど。リタちゃんは何の魔法を撃つの?」
「そうでしゅね。炎弾にしましゅよ」
「大丈夫なの? 何も攻撃魔法にしなくてもいいんじゃない?」
「練習とはいえ、ある程度の緊張感は必要でしゅ。……最悪跳ね返ってきても炎弾程度なら装備品で弾けるでしゅよ」
「ん? リタちゃん、何か言った?」
「何でもないでしゅよ。さぁ、練習を始めるでしゅ! ミサキお姉ちゃんから撃ってくだしゃい」
幼女先生の前では反射の複数展開は見せていないが、実は20回分は展開可能なのだ。2、3回程度しか使えないと思っているのだろうな。彼女の作戦は透けるように見えている。すでに両手に炎弾を準備していることからも数で勝負してくるつもりなんだろう。ミサキさんから先に撃たせて反射を消費させようとしているのも見え見えだ。
「タカシ君、じゃあ撃つわよー」
ミサキさんが治癒を撃ってくるのを反射で返していく。
「さぁ、死ぬでしゅよ!!!!!!」
気持ちが込もっているじゃないか。幼女先生が放った魔法は二つ。しかも直ぐ様、さらに二つの炎弾を追加して撃ってきた。
僕は反射の際に、炎弾の乗っ取りに成功し意思を持って操作した。これはただ跳ね返すのではなく、僕の魔力操作で自在に動かす。
「なっ! 何回反射出来るのでしゅか!? で、でもこれをわたちが反射するとは思わなかったはずでしゅ! あ、あれっ、あれー」
反射しようとした幼女先生の前で炎弾はUターンした。はい、反射失敗と。
「な、何ででしゅかー!? 何が起きてるですかー!」
幼女先生の周りに四つの炎弾がぐるぐると分裂しながら勢いは増し、その数を増やしていく。数が100個を超えたあたりで幼女先生は何かを諦めたのか綺麗な土下座をし始めた。
「た、大変申し訳ございませんでしゅ。少し調子に乗っておりましゅた」
しっかりと頭を地面に擦り付けているあたり謝り方に慣れを感じさせる。
「リタちゃんも調子に乗っていたのはわかったけど、タカシ君も大人げないわよー。今この場面を初めて見た人はきっと魔法で一方的に幼女を土下座させているようにしか見えないわよ」
そして、都合の悪い場面は見られてしまうものなのである。ちょうど『熊本ダンジョン』からガルフが戻ってきたのだった。
「おーぅ! 戻ったぞー。って、タカシこりゃ一体どういうことだ! 場合によってはぶっ殺すぞ!」
「ガルフちゃん、落ち着いてー。これは違うのよ。何というか、親子喧嘩? 躾みたいなものなのかな?」
「そうなのか? どうみてもこれは一方的に幼女を蹂躙していますの図にしか見えねぇじゃねぇか」
「まぁ、見た目はそうなっちゃうわよね。私も五分前に同じことを考えていた気がするもの。どっちもどっちなのよね。まぁ、当人同士に任せておけばいいかも。リリアさんもお休みされているようだし、ガルフちゃんお茶入れるから居住区にいらっしゃい」
「ミサキがそう言うなら信じるか。お、お茶はぬるめで頼む」
そう言って二人は居住区に行ってしまった。頭を地面に擦り付けていた幼女先生の頬を冷たい汗がたらーっと流れた。
「リタちゃん。なかなか美しい土下座をするじゃないか。さて、君は何回反射出来るのかな? 大丈夫。ゆっくり練習しようか」
「ひぃぃぃ! 反射! 反射! ブフォッ!」
「あっ、言い忘れてたけど炎弾の魔力量はいじってるから気をつけないと反射出来ないからね。威力はそのままだから痛みはそんなにないでしょ」
「パ、パパのばぁかぁー!!!!!」
立ち上がり逃走を選択した幼女先生に容赦なく力を調節した炎弾を全て追尾させた。
ふぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
遠くで叫び声が聞こえた。いくつか治癒も追尾させたから装備品が少し破れるぐらいで、あとはきっと無事なことだろう。悔い改めるがいい。
ガルフが戻って来たということはティア先生もそろそろ帰ってくるのかな。ガルフに聞いた方が早いな。僕もお茶を頂くことにしよう。
「はぁ、はぁ、はぁ。じ、実力は申し分無いでしゅね……。性格面にやや問題があるようでしゅがママの色気で矯正可能な範囲だと思いたいでしゅ」
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