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第11章 1話

 私の両親はホテルで働いている。ここはマレーシアのペナン島。観光地であり、世界遺産もあるこの島は観光をメインに成り立っている。


 パパとママは同じ職場で一緒に働いているのだけど、うちの家はお世辞にも裕福とはいえない家庭なので私はというと午前中は弟たちの面倒をみながらおばあちゃんと家事を手伝い、午後からは近隣のゴルフ場でロストボール拾いのアルバイトをして家計を助けています。


「アイシャ、今日も暗くなる前に頼むよ」


「はい、ボス。きれいなボールいっぱい探してきますね」


 日が落ちてしまうとゴルフボールはほとんど見つけることが難しくなる。夕方までの短時間勝負になるけど、私はこのロストボール拾いが得意だ。ボスからの信頼も厚い。すごく目がいいという訳ではないのだけど、なんとなくボールがありそうな場所がわかってしまう。勘が働くというやつなのだろうと思う。


 その日もいつも通りたくさんのボールを集めてアルバイト代を稼ごうと思っていたのだけど、珍しく全然見つからなかった。


「今日はあまりボールないなぁ……」


 なかなかボールが見つからない時に、決まって私が行く秘密の場所がある。ここは谷底になっていて落ちたボールが集まり易いのです。下に降りる秘密のルートを知っているのも私ぐらいしかいないため、ボールが見つからない時の保険にしている場所なのでした。


「あれっ、少し雰囲気が変わったかな……」


 いつもと何か感じが違う。私は異質な雰囲気を感じていました。でも、もうすぐ日が暮れてしまう焦りもあってか、そこまで気にすることなくボールを探すことにしたのです。

 

 するとその時、洞窟のような場所にボールがいくつかあるのを見つけました。


「あれ? こんな場所に洞窟なんてあったかなぁ」


 私はボールを拾いながら奥の方へ入ってしまいました。すると、奥の方で光るボールを発見したのです。


 お、お金の匂いを感じました。まさか宝石でしょうか。秘宝的な物を発見してしまった高揚感と弟たちに美味しいご馳走を食べさせてあげられる喜びで私は懸命になって光るボールを追い掛けていました。


「ん? 追い掛ける? あの光るボール動いている……ちょ、ちょっと待ってよー」


「お、お姉さんの目が怖いからだよ! 目がお金になってるよ!」


 おっと、私としたことがはしたない。いや、そうじゃない。まさかこのボールが喋ってる?


「お姉さんは今こう思ったね。この真珠、喋ってる? とね」


 ゴルフボールではなくてパールだったのね。それにしてもこんな大きなパール見たことない。手のひらサイズのパールなんて一体何億するのか想像もできないわ。こ、これはアッラーの思し召しに違いありません。


 ゴキュッ


「お、お姉さん、もしや僕の身体が目当てなのかい!?」


「こ、怖くないよー。こっちにおいでー」


「野良猫を呼ぶみたいにしてもダメだよ。目がお金になってるからね! それに残念だけどお姉さんはもうこのダンジョンからは出ることは出来ないんだ。名前を教えてよ。新しいダンジョンマスターさん。僕の名前はパール君だよ」


 ダンジョンマスター!? この洞窟がダンジョンなの! 私がダンジョンマスターなの。


「わ、私はアイシャ。あ、あなたは一体……」


「僕はこのダンジョンの案内人さ。さぁ、特別に僕の輝きを近くで見せてあげよう」


 そう言って私に近づいてきたパール君は私の手のひらに乗ってきた。


「き、綺麗ね」

 白銀の中に特有の虹色が美しい色合いを魅せる。オークションに出品すれば多額のオイルマネーが動くこと間違いない。


「案内人奥義ビーム!」


 突如撃たれたビームを避けることなどできるはずもなく私は倒れた。私、まだ16歳なのに。こんなところで死んでしまうなんて……。



 目が覚めると木製のベッドの上に寝かされていた。確か、ロストボールを探していて洞窟に入り込み……。

「あっ、起きた? 気分はどう?」


「パール君! な、なんであんなことしたのよ? あなたは敵なの? そ、それとも味方なの?」


「あれは儀式みたいなものだからそんな気にしないでよ。僕は案内人。ダンジョンマスターの味方だよ」

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