第10章 1話
いつものようにピースケが魔法陣を準備してくれている。『新潟ダンジョン』からもらったボスモンスターチケットを使うためだ。
「じゃあ、準備はいいっすか?」
「うん、召喚しようか」
やっぱり水系をイメージするべきだよね。なんとなく水系ならみんなと仲良くやってくれそうな気もする。しかも出来ることなら新しい種族を迎えたい。ヨルムンガンドちゃんの時は『ワイバーン』が召喚出来るようになった。ダンジョンには多様性、特殊性を求めていきたい。『熊本ダンジョン』のような特殊な魔法を操るモンスターもいいね。
魔方陣は青い色の光を放ち回り始める。よし、水属性で間違いないね。
光は強くなり勢いを増していくと、小さな姿が浮かび上がってくる。
「!?」
魔法陣には可愛い手のひらサイズの女の子がプカプカと浮かんでいた。体は薄いブルーの水で構成されているようで、後ろの景色が透けて見えた。
「ピースケ、彼女は?」
「これは驚いたっす。さすがマスターっすね。彼女は四大精霊の一柱、水を司るウンディーネっす」
「四属性は水、火、風、土だったよね。精霊は全部で四柱いるの?」
「光、闇、氷、雷の特殊属性の精霊もいるっす」
「全ての属性に精霊はいるんだね」
プカプカと浮かんでいたウンディーネは僕を見つめると空中に浮かんだまま手を広げて抱きついてきた。彼女から伝わる思いは『大好き』だった。言葉は喋れないようだけど気持ちが伝わってくる。ちなみに抱きつくといっても小さいので頬っぺたに張り付いてる感じだ。
「ウンディーネ、君のステータスを僕に教えてくれるかな」
ウンディーネは僕の頭によじ登ると髪の毛を掴みながらキャイキャイと楽しそうに遊んでいたが、僕の要望に応えてくれるようでステータスが表示された。
ウンディーネ(精霊)
レベル1
体力80
魔力350
攻撃力20
守備力80
素早さ100
魔法:水属性初級
スキル:水操作
完全に魔力特化タイプだね。レベル1にして魔力がえげつない。僕の初期ステータスで魔力は200。ティア先生の初期ステータスでも魔力が280だったことを考えるとこの子の将来が末恐ろしい。
「ウンディーネ、水操作のスキルはどんなスキルなの?」
首を傾げるとウンディーネは気持ちを伝えてくる。『水がいっぱいある場所に連れていって』と。どこがいいかな。ここからだと温泉が近いけど、魔法を使うのだから『水の神殿』がいいね。
「じゃあ、ピースケちょっと行ってくるね」
「了解っす」
ドタバタッ!
「ちょっ、ティア先生押さないで」
「お姉さま、見えませんわ」
「レヴィ、少し我慢なさい」
興味津々な三人が覗きに来ていたようだ。隠れてないで最初から居ればよかったのに。
「ウンディーネ、彼女達は仲間のティア、レヴィ、そしてレイコさんだよ」
ウンディーネは僕の頭の上で少し隠れるようにしてしばらく三人の様子を見るとプカプカとティア先生の方へ近寄り、胸の中に収まった。
「あら可愛いい子ね。水の精霊かしら」
「な、なんで私の方に来なかったのでしょう」
「レ、レヴィちゃん言わせないで」
ティア先生とレヴィからは同じ属性の匂いを感じているのかもしれない。ティア先生の胸の谷間から顔を出すウンディーネは僕の頭の上よりも居心地の良い場所を見つけたと言わんばかりに満足げだ。
「む、胸の大きさなのね! み、見た目で判断するのは良くないと思うのです。や、やわらかさだったら負けないんだから。ほ、ほらっ、こっちにおいで」
胸元を広げて懸命にアピールするレヴィをまったく気にすることもなく、ウンディーネは目を擦りながらちょっと眠たそうにウトウトしている。そんなに気持ちいいのだろうか。後で僕にも貸してほしい。
「レヴィちゃん自分が傷つくだけよ。こ、ここは勝負するとこじゃないわ」
「くっ……」
その後、場所を『水の神殿』に移して『水操作』スキルをみせてもらった。
ウンディーネは水に干渉することで自由に操ることか出来るようで、回廊を流れる水を使い大きな壁を作ったり、分裂してみせたりと自由度はかなり高いようだった。
最初は魔力操作の下位互換なのかと思ったけど、分裂とか面白いね。分裂したのは全部本物なのだという。今はまだ二体までだけどレベルが上がることで分裂の数も増えるとのこと。水のある場所なら無双出来そうだ。
とりあえずレベルアップ頑張ってもらおう。
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