第8章 6話
元勇者のショウ君は再び『新潟ダンジョン』へと連行された。サクラちゃんが勇者専用の牢屋を用意するそうだ。中学生アイドルに飼われる元勇者。なんだか犯罪臭がキツい。しっかり、情報収集してもらいたいのだが大丈夫だろうか。
最初に深い催眠からの『てんとう虫』さん乗っ取りという一連の流れで一通りの情報を取得させてもらう予定だ。その後はサクラちゃんの治癒取得を待って、レベルアップの上昇度や勇者の強さの仕組み、弱点の洗い出し等、ひたすら調べ尽くす。
『香川ダンジョン』は『新潟ダンジョン』の傘下に入り、釜揚げさんとスケルトンリーダーは『香川ダンジョン』に残ることになった。一応、魔素を得られる中継地としての活用も視野に入れ侵入者が入らないように見張っていくこととなる。
意外だったのが、ミクちゃんからボスモンスターチケットをもらったことだ。これは、開通から一年以内に他のダンジョンを傘下に入れた際に得られる特典だ。そもそもチケットを渡せるの知らなかった。
「ミクちゃん、このチケット本当にいいの?」
「はい。三人で話し合って決めました。私達にはタカシさんの助けがないとダンジョンをやっていけません。ですので、協力出来ることは勇者の調教からダンジョン特典の提供までしっかりやり遂げてみせます」
「そ、そっか。では、ありがたく頂戴するね」
「はい。では私も『新潟ダンジョン』に戻って恨みを。じゃなかった、調教してきます」
「あっ、うん。程々に頑張ってね」
ミクちゃんが帰って振り返るとピースケの様子がなんか変だ。
「あれっ? なんかおかしいっすね」
「どうしたのピースケ?」
「ダンジョンがまた増えたっす。んっ? 二つっすかね?」
「そうか。またいつも通りに会談の手配をしといてよ」
「い、いや、それが何かおかしいっす。会談が出来ないっす。これは……まさか敗者復活っすか。そ、それにしては早すぎるっす」
珍しく慌てたピースケを見る。レアだな。
「なになに? 敗者復活ってどういうこと?」
「前の世界で5億以上10億ポイント未満だったダンジョンには敗者復活戦のチャレンジがあるっす。通常だと終盤に出現し他のダンジョンを吸収してクリアを目指してくるっすよ」
「き、吸収ってどうやって」
「傘下に入れたり、攻略することで今までそのダンジョンが貯めたポイントを吸収出来るっす」
「なるほど。つまり5億ポイント以上のダンジョンが攻めて来るってこと? ダンジョンの場所は? ピースケ、どこに出来たのかわかる?」
「そ、それがわからないっす。普通なら場所もある程度わかるし会談も可能っす。でも何故か干渉出来ないっす。いったい何が起こってるっすか」
「とりあえず、『てんとう虫』さんと日本政府に状況把握を急がせよう。情報収集が第一優先だ。他のダンジョンとは会談出来る?」
「大丈夫みたいっす」
「じゃあ、みんなにどんな些細なことでもいい。敗者復活組の情報や動きがわかったら連絡をするように伝えて」
「了解っす」
ちょ、急展開なんですけど。ぼ、僕ののんびり養鶏ライフがぁぁ! って、ニワトリさんの面倒まだ一回しかみてないな……。
ボスモンスターチケット使おうと思ってたのにそれどこじゃなくなってしまったな。ティア達にも話をしてこよう。
◇◇◇◆◆
ある会議室の一室にて
「『千葉ダンジョン』が周りのダンジョンの保護を始めよったか」
「このまま、じっと時間が経つのを待つのも退屈じゃな」
「元勇者には少し期待をしていたのたがな」
「ダンジョンに必要なのは力より頭ということだ」
「然り、強いだけならボスモンスターの役割」
「そろそろ敗者復活戦を始めてもいいんじゃないか」
「それは時期尚早だ。まだ日本のみ、しかも数ヵ所しかダンジョンはないのだぞ」
「会談で『千葉ダンジョン』と組まれたらまた一緒じゃないのか」
「そこは協会の設定を変えればよい。復活組とは相互不干渉とな」
「干渉出来ない復活組か」
「第二勢力の登場で面白くなるか」
「日本以外のダンジョン候補はどうなっているのだ」
「それがまだ候補者が見つかっておりません」
「さて、10億ポイントを超えるダンジョンは、あといくつ出てくるのかのぉ」




