第8章 5話
「タカシさん!」
「師匠! 大変だよ!」
「戦争」
モンスタードールズが慌てた様子でやってきた。
「うん、三人ともいらっしゃい」
そして、僕の後ろで隠れるようにしてもう一人。
「や、やあ。ひ、久し振り。というか、さっき振り?」
「ゆ、勇者!」
「……師匠、なんで勇者がここにいるのよ!」
「タカシどいて、それ殺す」
戦争とか殺すとか、とてもデンジャラスだ。
時間を10分程遡ろう。実は、彼女達が来る少し前に『香川ダンジョン』のマスターであるショウはやってきた。『てんとう虫』さん情報で問題になりそうな戦力が無いことはわかっている。
「『千葉ダンジョン』は入口封鎖されて大変らしいじゃないか。僕と一緒に組んで危機を乗り越えないかい? あと君のレベルはいくつなんだい?」
「いや、別に困ってないからいいよ。レベルはまぁ40は超えてるね」
「へっ、よ、40……。や、やっぱり、ダンジョンマスター同士、助け合いが大事かなぁって思って……。い、いや違います。……ど、どうかお願いじまずぅ。た、助げでぐだざい」
急に泣きながら足にしがみついてきた。こ、こわい。やべーやつが来た。情緒不安定にも程がある。話を聞こうにも『新潟ダンジョン』に殺されるの一点張りで要領を得ない。いったい何があった。
そして最初に戻る。
モンスタードールズの鼻息が荒い。ショウ君が僕の後ろに隠れているせいで僕まで責められているような気がしてくる。それにしても勇者ね。まずは彼女達の話から聞こうかな。
「三人とも、とりあえず落ち着いて。何がなんだかわからないよ。一応、何があったのか教えてもらえるかな。まぁ、ある程度わかってきたけど」
「『香川ダンジョン』のマスターは元勇者なんです。」
「私達を殺して、カイトも殺した」
「モフモフの怨み」
「あっ、やっぱりそうだったのね。ショウ君、あー言ってるけど間違いない?」
「は、はい。で、でも今は、こ、この世界では同じダンジョンマスター仲間ですよね!」
ショウ君の言うことも一理ある。あるけど、当事者が目の前にいて、じゃあ今度は仲間だね。とはならない。なる訳がない。
「三人に聞くけど、やっぱり彼を殺さないと腹の虫がおさまらないかな?」
「まぁ、そうなりますね」
「もちろん」
「ぶっ殺」
ふむ。しかしながらこれはこれで貴重なサンプルかもしれないんだよな。出来れば勇者の基礎ステータスや成長スピードとか調べられる情報は持っておきたい。こう見えて、この元勇者は10億ポイントを貯めたカイトさんを倒しているのだ。
「ぼ、僕を殺してもあまり美味しくないと思うんだ。ほら、あまり脂肪も多くないしさ。好物はセロリだし」
「た、食べないわよ!」
「こいつバカなの」
「ジュルッ」
「最後のやつぅ! や、やっぱ食べる気じゃないかぁぁぁ!!!」
「冗談に決まってるでしょ。ところで、あなたレベルいくつなの?」
「開通したばっかなんだ。レベル1に決まってるだろ!」
「私達もレベル1だけど、合体でステータス爆上げされるからね」
「私の魔法だけでも倒せるんじゃない?」
「モフモフ三匹でいける」
「ちょ、ちょっと、みんなに提案があるんだけどいいかな?」
「た、助けてくれるのか」
「いや、そんなつもりはない。というか、どちらかというと僕は『新潟ダンジョン』よりだからね」
「僕の味方はどこにいるんだぁぁぁ!」
「提案って何? 師匠の言うことならある程度は聞いてもいいよ」
「今後のことを考えたら勇者って貴重なサンプルだと思うんだ。これをただ殺すだけってのは勿体ない。君たちも一回殺すより何回も痛めつけた方がより恨みも晴れるんじゃないかな」
「私はどっちでもいいけど、サクラとリノが乗り気みたいね」
「さすが師匠、魔法の練習に使えるね」
「モフモフにも殺らせる!」
「エグい! エグ過ぎるよ! この国では基本的人権が保障されてるんだろ。イジメいくないって!」
「まぁ、ここはダンジョンだし。ダンジョンの中では強い者がルールだよ。さて、ショウ君には『新潟ダンジョン』のボスモンスターになってもらうよ」
「師匠、殺さないように気をつけるよ」
「やるのはサクラちゃんが治癒覚えてからだよ。あと、ちゃんと記録を付けてくれよ。弱点とか、すごく大事な情報になるかもしれないんだからね」
「タカシ、ちゃんと飼うから安心して」
どうしようものすごく不安だ。
ショウ(ダンジョンマスター)
レベル1
体力60
魔力100
攻撃力5+5
守備力10
素早さ5
装備:聖剣 攻撃力+5
ゲリュオン(合体)
レベル1
体力120
魔力80
攻撃力70
守備力120
素早さ70
魔法:火属性初級
スキル:魔力操作レベル2




