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第7章 14話

 今日は迷路造りを終えたサクラちゃんが遊びに……じゃない、魔法練習にやってきた。


 「師匠、これはまたどえらいことになってるようだけど大丈夫なの?」


 「あの銃を持ってる人達のことかな。今映ってるのは味方の人だよ」


 会議室に案内したあと、事情を説明するよりも見てもらった方が早いかと思い一階層を見せている。


 「じゃあ、あれは?」


 「あれは……侵入者だね」


 「ちょっとー、見分け方がわからないよー!」


 「何て説明したらいいかわからないんたけど、動きに統一感があるんだよね。『てんとう虫』さんらしい品のある動きとか優雅さとかね」


 「そんなの分かるわけないじゃない!」


 「そうかなぁ。品の良さは所々の動きに現れるんだよ。サクラちゃんも女の子なんだから気をつけてね」


 「な、なによ! まるで品がないみたいに聞こえるかな!」


 中学生をからかうのはこのぐらいにしておこうか。


 「ところで、一階層の迷路の印象を聞きたいんだけど、新潟と比べてどんな感じ?」


 「さすが師匠ね。通路の幅が統一されているだけで同じ場所を通っているような感覚に陥るのね。普通のことで凄いと思わされたわ」


 「通路幅、統一じゃないんだ」


 「私のスキルレベルでだいたい同じかなぁくらいよ。ピッタリ同じに造れるなんて気持ち悪いわね」


 女子中学生にディスられている。おかしい、師匠なのにディスられている。


 「あと思うのは、この迷路はやり過ぎじゃないかな。完全に来るものを拒む感じよね。師匠のやり方を見てるとそれでもいいんだろうけど、ダンジョンってあともうちょっと奥へ行ってみようって思わせる魅力の方が必要な気がするんだけど」


 確かにやり過ぎた感は否めない。造った僕ですら攻略できる気がしない。知らないで入ってきた人は疲れて帰るかもしれない。


 「ポイントを得る手段があるならわざわざダンジョンの奥に引き込む必要はないからね。サクラちゃんもこの世界でのダンジョン運営については一度考えてみた方がいいよ」


 「そうかもね。前の世界では生計を立てるためにダンジョンに入ってくる侵入者が普通だったけど、こっちの世界では前提条件が違うわね」


 「サクラちゃん、前の世界のことを教えてよ」


 僕はティア先生お気に入りの『落花せんべい』とあたたかいお茶をサクラちゃんに渡して話を伺うことにした。


 「なによ。師匠のくせに気が利くじゃない」


 なんだろう。師匠に対するリスペクトが全く感じられないぜ。


 「素朴な味がいいでしょ」


 ポリポリポリ、ズズゥー。


 「うん、美味しい。じゃあ、何から話そうかな」


 そういいながらサクラちゃんは話し始めた。


 「そもそも私ダンジョンモンスターだったからそんな詳しい訳じゃないからね。んー、前の世界はね、電気もガスも水道も冷蔵庫もテレビも電子レンジもかわいい服もアイドルも美味しいお菓子もハンバーガーもソフトクリームもないのぉ!」


 サクラちゃんの熱い想い、いや欲望が溢れだした。あとで『プレミアム枇杷ソフト』もあげよう。


 「あと寿命で死ぬのは珍しいかも。大抵がモンスターだったり人に殺されてしまうから」


 「モンスターはわかるけど人に殺されるの?」


 「うん。盗賊とかっていえばわかりやすいかな。指紋とかDNAとか無いし、証拠とか残りにくい世界だから普通に隣のおばさまが殺人鬼だったりするケースもあるらしいのよ。殺した理由も、夜中にうるさかったからとかでね」


 「それはまた、民度が低いというかなんというか」


 「街よりも村の方がその点、昔からの顔見知り同士だから安心らしい。その分、モンスター対策では街の方が安心できるみたいだけど」


 「なかなか難しい選択なようだね。モンスターはダンジョン内だけでなく外にもいるってことなのかな」


 「ダンジョン内が基本よ。師匠も知ってる通り魔素はダンジョン内にしかないの。だから外にいるモンスターはダンジョンから出てきたってことなのよ。そういえば私達もよく村を荒らして遊んでたなぁ」


 君たちはとてもデストロイヤーな遊びをしていたんだね。


 なんとなくわかったのは、ダンジョンは生計を立てるためには必要。近くに住むにはモンスターが出てくるので危険。でも少し離れた街は別の意味で危険。


 ここからは推測だけど、放棄ダンジョンにして少しでもリスクを減らそうと危険なダンジョンを中心に勇者が暴れていたとかかな。前の世界でダンジョンマスターやらされなくてよかった。こちらの世界には今のところ魔法を使える人間すらいないから安心だよね。

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