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42話 せっかくだから、世間話

『あっれ~……邪魔だった?』


 スィーヤの姿が机の上に映し出される。

 あ、これ……魔道具か!

 スィーヤが趣味と実益を兼ねて作っている物のひとつで、遠隔通信機!


「……分かっていて聞くんですか?」

『いやいや、まさか~。ティアがね、君たちは大丈夫かなって心配してたからさ、それなら入学祝いにあげたペンダント型魔道具で、様子みてこようって思って! なんか取り込み中ならゴメン! 切らないけど!』


 ちなみにこれ、スィーヤとしか話せない代物らしい。

 通信とはいえ、婚約関係にない男女がプライベートを晒しあうのはいけないと、妙なところで頭の固いスィーヤによってルヴァとティアのペンダントが姿を見て話せる機能はつけなかったそうだ。


 後でティアに聞いたところによると、学園に行ったら絶対にふたりで師匠を除け者にして学生生活で盛り上がる。除け者にされたら寂しすぎて泣くから……というしょーもない理由が真相らしいが。


「……相手をするまで居座る気か……」


 ぼそっとルヴァが呟く。スィーヤはニヤニヤして、そんな弟子を見ている。

 私はといえば、なんか変な空気がなくなりホッとしたような、なんか寂しいような?


 とにかく、状態が通常に戻ったし、ティアの事が気になっていたのでスィーヤの映像に近づいた。

 

「スィーヤ! ティアは、大丈夫だった?」

『はい。ケロッとしてましたよ。真実は調べれば分かることだって。いやぁ、さすがは私の愛弟子たち! どちらも強心臓! 師匠として鼻が高い!』

「今回は、学園側の体裁のための処置と理解しています。ティアだって、それが分からないはずがない。……心配しているのは、ミラだけだ」


 最後だけ、眉間のしわが消えて言い方が優しくなったけど……でもさ。


「なんだ、そういうことだったんだ……」


 うわ~これ、私だけ、分かってなかった系だよ。

 額面通り受け取って、権力に屈して善意の救助者にえん罪ふっかける気かって怒ってたなんて……。

 独り相撲にも程がある。恥ずかしい。


「だから、ルヴァは機嫌が良かったんだね」

「いいや? 僕はただ、純粋に久しぶりに君とずっと一緒にいられると思って浮かれていただけだ。……邪魔が入ったがな」

『ルヴァイド~? 師匠に凍てつくような視線を向けるのやめようか~?』

「だが、僕のために怒ってくれる君が……正直、嬉しかった」


 はにかむルヴァ。

 だけど、スィーヤが『無視とか泣くよ?』って主張してくるんだけど、スルーでいいの?

でも、ルヴァがどことなくキラキラした目で私の言葉を待っているから、こほんと咳払いして口を開く。

 

「ルヴァのことになると、私怒りっぽくなるから。それだけ大事なの」

「ああ、僕も君のことが大事だ」


 ぱーっと光が差し込むような笑顔を浮かべるルヴァ。

 パチパチと拍手の音がして、ちらりとスィーヤを見れば、わざとらしくハンカチで目頭拭う小芝居を入れつつ、手を叩いている。


「まだ、居座るおつもりですか、師匠」

『だってさぁ~、ティアにも予習の邪魔って言われたしさぁ~。さーみーしーいぃ~!』


 かまってちゃんと化したスィーヤに、ルヴァはうんざりした表情を浮かべる。

 だが、せっかくだからスィーヤには聞きたいことがあった。


「ねぇ、スィーヤ。この国の王子って、精霊について学ばないの?」


 へらへらしていたスィーヤの表情が、ゆっくりと苦笑いに変わっていった。

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