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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
五.五章 友達に

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六十話 友達

 



「……それじゃあ、私も行ってくるね。」

「うん、いってらっしゃい!」

「頑張ってください、ミルさん。」

「ありがとう、みんなも頑張って!」


 私はそう言ってみんなの元から離れて、ライナさんのところへと向かった。


(…うーん……やっぱりちょっと怖いなぁ……)


 みんなには一応大丈夫だと言ったが……よく考えれば、いつもウルスくんのそばにいたから、私1人だけで他人に話しかけたことがないような…………


「ふ、不安だぁ……」


 そう一度考えてしまうと、急に心臓の音がうるさくなってくる。

 そして、何故か足早になってしまい…………あっという間に席に座っているライナさんの前へと来てしまっていた。



(と、取り敢えず落ち着かないと……!)






「…ラ、ライナさん、こんにちは……こ、こ今回はよ、よろ、よろしく、ねねっ!」

「………『ねねっ』?」



 ………やってしまった。



(な、なんでこうなるのぉ……!? というか、私って焦るとこんなに気持ち悪くなるの!?)


 あまりにも噛みかみな話し方に、顔がボッと熱くなる。こんなことなら、話しかけられるのを待ってた方がよかった……!!


「…確か、ミルさん……だよね?」

「う、うん。」

「……もしかして、緊張してる?」

「えっ、いや、その……うん。」


 別に強くもない言葉なのに、まるで言いくるめられたかのように私は認めてしまった。なんて情けない…….


「……取り敢えず、訓練所に行こうよ。話は歩きながらでもしよう。」

「そ…そうだね、まずは外に行こう!」


 ライナさんの提案に、私は食い気味に答えて扉を開いて向かおうとした。



「………ふふっ。」

「……え?」


 しかし、不意に何故かライナさんは私を見て笑った。


(そ、そんなにおかしいのかな……私。いやおかしいけど……)


「……あっ、ごめんなさい。別に悪気はないの、ただ……」

「ただ……?」

「……()()()()、だなって。」

(…………?)


 そう言うライナさんの顔は……少し哀しげだった。















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
















(……それにしても、綺麗な人だ。)


 ライナさんと2人で廊下を歩く中、私は心の中でそう呟いた。


 ライナさんの顔はとても綺麗で……それでいて可愛らしく整っていた。

 目や鼻、口やまつ毛なども綺麗に整えられているにもかかわらず、化粧の類いのものは一切感じさせない…………


(……ウルスくんが入学初日に覗いてた人も綺麗だったし、やっぱりこういう美人な人の方が……)


 ……いやいや、私にはウルスくんとの長い付き合いがある。それを考慮すれば私の方が…………!


「ミルさんは確か……水属性の魔法が得意なんだよね?」

「ふぇ……あ、うんうん! よく知ってるね!」

「タッグ戦で水魔法をよく使っていたしね、そうかなって思って。自己紹介でも言ってたし。」


 …よく覚えてるなぁ……失礼な話だけど、私なんてまだクラスの人たちのこと全然覚えられてないし……


「ライナさんは何の魔法が得意なの?」


 私は取り敢えずそんなことを聞いてみる。すると、ライナさんは少し頭を捻りながら言う。


「そうだね、一番できるのは風だけど……一応、光も得意だと思うよ。」

「風と光……それらと水と合わせるのは…………思いつかないなぁ。」


 こういう時、ウルスくんからすぐに思いつくんだろうけど……


「……なら、無理に混ぜるより1つの属性に絞ったほうがいいね。3日しか時間は無いし、そっちの方が簡単だよ。」

「そうだね…なら属性は……」


 ……せっかくだ、少し意外性のある魔法にしよう!


「光で……回復魔法なんてどうかな?」

「回復……? 確かに光属性は体力を回復させる魔法が多いから、いいかも。でも、回復といってもどんな……」

「遠くからでも回復させられる魔法……とかなら、実用性もあると思う。」

「遠くから……うん、やってみようよそれ。」


 そう言って、ライナさんは微笑んだ。


「…………!」


 そんな反応が新鮮でありとても綺麗なものだったので、私は少し固まってしまう。

 その私の様子を見て、ライナさんは不思議に思ったのか聞いてくる。


「……どうしたの?」

「えっ、いやぁ……ちょっと意外だったから。」

「意外?」

「ライナさん、いつも1人でいるしあんまり笑ったところを見たところないから……あ、あぁごめん!」

「…ミルさんは正直だね。」

「ごっ……ごめんなさい……」

「いやいや、別に怒ってないよ? 面白いねミルさんは。」


 そう言ってライナさんはまた笑い出す。なんかすごく恥ずかしい……


「そうか……まあ、そうだね。周りの人達には冷たくなっちゃってはいるかも。」


 ライナさんはそう静かに呟く。


(………何かあるのかな?)


 心の中で、そんな疑問が浮かんだが……流石に口には出なかった。いくら気になるとはいえ、いきなりこんなこと聞いたら今度こそ変に思われそうだし………彼女にも色々あるのだろう、深掘りはしないでおこう。


「……着いたね、それじゃあ早速始めよう。」


 ライナさんが言うように、話をしていたらいつの間にか訓練所へとたどり着いていた。そこでは、私たちの他にもニイダくんたちやクラスの人たちが既に課題に取り組んでいたりした。


(よし、気合を入れていかないと……)



 ………そういえば、ウルスくんはいないけど……どこか他の場所でやってるのかな?














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


















「次、ミル・ライナペア。降りて来い!」

「「はい!」」


 名前を呼ばれ、私たちは下へと降りていく。


 あれから私たちは一緒に魔法制作に取り組んでいった。その中でライナさんと色々話したりしたことで、思っていた以上に仲良くなることができた。


(やっぱり、色んな人と話すのは楽しいなぁ……)




 ……正直、初めは不安でいっぱいだった。


 ウルスくんやグランさんには前向きなことを言ったけど……知らない人たちと生活するのはかなり怖かったし、何より……また、『あんなこと』になるじゃないかって………内心怯えていた。



 ……けど、それじゃ駄目だ。

 いつまでも小さな世界に引きこもって、ウルスくんやグランさんに守られて生活していては………本当に何もできなくなってしまう。


 何も、ウルスくんたちみたいにあそこまで強くなれなくてもいい。


 ただ、私はウルスくんと……みんなと一緒に楽しい時間を過ごして、幸せに過ごせればいいんだ。



(…………そのために。)










「……回復魔法か。それじゃあ、始めてくれ。」

「はい……いくよ、ミルさん!」

「うん!」


 ライナさんの指示で、私は手を前に構えて魔力を流し込む。そして、ライナさんも同じような構えを取り……私たちは唱えた。



「「『フィーリング・ライト』!」」


 そう唱えた瞬間、私たちの前に優しく輝く光が現れた。

 その光は直接見ても眩し過ぎず、むしろ体がぽかぽかと暖かくなるような感触を与えてくる。


「これは……なるほど。直接魔法をかけられなくても体力を回復させる代物か。」

「はい。回復速度は緩やかですが、これなら効率的に体力を回復させられます。」

「確かにな………しかし、これはどうやって相手を回復させているんだ? 直接当てなくてもよく、加えて複数の相手を回復させる……こんな性質、破壊級クラスの魔法にも存在しなかっだと思うが。」

「それは……えっと、どういう仕組みだったかな?」


 ライナさんが困ったように私に聞いてきたので、代わりに答える。


「えっと、私も完璧に理解はできていないんですが………物とか人は、常に光を吸収? とか反射? しているらしくて……なら、光自体に回復の効果を持たせて、それを吸収させて回復するっていうイメージで作ったんですが……」

「……随分あやふやだな。誰かに教えてもらったりしたのか?」

「は、はい。魔法は私たちだけで作りましたけど、その吸収とかの話は同じクラスのウルスくんに。」



 グランさんの家にいた時、私はウルスくんによく色んなことを聞いていた。その中で、私が『光』ってなにかと子供心で聞いた結果……ウルスくんから出た言葉は、私には理解し難い物だった。

 本人曰く、それは旅で得た知識などではなく、前世の記憶とやらの物からだそうだ。



(グランさんも全然理解できていなかったし……ウルスくんの前世ってどんな()()なんだろう…………)



 ……そもそも、前世と言われてもあまりピンと来ない。自分が生まれる前の記憶……つまり、私として何かが生まれ変わる前の記憶。







 ………うん、さっぱりだ。




「ウルス……ほう、なるほど。」

「……? どうかしましたか?」

「いや、何でもない……これで終わりだな?」

「は、はい。終わりです。」

「そうか……なかなか良かったぞ、今後も精進するように。」

「はい、ありがとうございます!」

「ああ、上に戻って全員分が終わるまで待機しておけ。」




 課題の披露も終わり、ラリーゼ先生の言う通り私たちは上の観客席へと戻ろうとした……




「………………」




 ……が、何故かライナさんはその場に佇んだままだった。




「………ライナさん、どうしたの?早く上にあがろうよ。」

「………うん。」


(…………?)



 ライナさんはそう小さく返事をして歩き出す。そして足早に私の横を通り過ぎていった。









「……………ウルくん。」








 そんな声が耳に届くと共に見えた顔は………いつもより幼く見えた。

















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




















「……ライナさん、どうかしたの? 元気ないよ。」

「……えっ、あ、ああ……ごめんなさい。課題が終わって少し気が抜けちゃって。」


 私が声を掛けると、ライナさんはポケットに何かをしまってこちらを向いた。


 現在は課題も終わり、私たちは観客席で次の人たち……ウルスくんたちのを見ていた。



「そ、それにしても……次のウルく…ウルスくんとフィーリィアさん、やけに話し込んでるけど……何かあったのかな?」

「……確かに、ちょっと様子が変だね。トラブルでもあったのかな?」


 ……何故か分からないけど、ライナさんの元気がさっきから全然ない。どうにかして元気に…………



(……そうだ!)


「ねぇライナさん! ひとつ提案があるんだけど!」

「て、提案?」

「うん……私たちってもう友達でしょ? だから、これからは私のことを『ミル』って呼んで! 私も『ライナ』って呼ぶから!」



「と……友達?」





 ………あれ、もしかして……



「わ、私だけ…勝手に………?」

「えっ……あっ、いやいやそういう意味じゃなくて! 全然嫌とかじゃないよ!」


(……よ、良かった。てっきり私だけ舞い上がってただけかと。)


 危うく枕を濡らしそうになったが……そういうことでは無かったそうだ。



 そんな私の心境を悟ってか、ライナさんは恥ずかしそうに語り始める。


「……私、クラスで冷たい感じだったし、『友達だ』って言ってくれるとは思わなくって、びっくりしただけで……」

「じ、じゃあ……!」

「うん、それじゃあ改めて…………















 ……よろしくね、()()。」




「………!!」










 ……ウルスくん、できたよ。











「……うん、よろしく! ()()()!!」












 私だけでも……!












(……友達が、できたよっ!)








 友達の定義って長年いろんな作品で語られてますが、かく言う自分もよく分かってません。何なんでしょうねほんと。




 あと、魔法の『中級』やら『破壊級』やらの具体的な強さの基準がまだ書かれてなかったと思うので、ここで一応記載しておきます。





初級<中級<上級<最上級<超級<超越級<破壊級<神威級



(右にいくほどレベルが上がっていきます)



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また、Twitterはこちら

https://twitter.com/@SO_Nsyousetuka

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更変えられないとは思うんですが、破壊級って弱そうで 最上級の上あたりが妥当に思えた
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