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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
五章 暴走

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五十八話 資格

 



「……さて、まずいくつか見せてもらう前に確認しておく。お前たちは2人で発動させる魔法なのか?それとも1人か?」

「2人で発動させる合体魔法です。」

「合体か…何属性だ?」

「氷と風です。」


 名前を呼ばれ、舞台に降りるとラリーゼが始まる前に幾つか質問をしてくる。もちろんフィーリィアは答えないので俺が返事をしていく。


「……それで、どんな魔法だ? 攻撃魔法か回復魔法か………それとも別の魔法か?」

「えっと……おそらく領域魔法ですね。」

「領域魔法?」

「はい。精霊族がよく使う魔法流派にその様な魔法があったので、多分その種類に分類されると思います。」

「……確かにあるが………よく知ってるな。」

「……勉強してるので。」


 この学院で教わる主な魔法の流派は和神と洋神の2つであり、他の流派の魔法は殆ど習うことはない。


 その理由は単純で、この2つの流派が最も有名でかつ、初級・中級・上級………と、習得難易度に明確な位があるので分かりやすいから……らしい。魔法の内容も一番扱いやすいので、合理的と言えば合理的だが………もっと他の流派の魔法も学んでも良いと思うものだ。


「領域魔法か…面白い、それじゃあ始めてくれ……あと、終わったら一応教えてくれ…私じゃ判断できないからな。」

「はい、分かりました。」


 そう返事すると、ラリーゼは俺たちから距離を取って採点用紙みたいな物を取り出し、観察を始めた。





(…急ぐ感じはない……まあ、関係ないが。)





 俺は、震えている彼女へと声をかけた。


















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















(手が……震えが…止まらない…)



 ……何で……今、こうなってるの…?


 ()()()とは違う……今回はウルスもいる……だから……なのに………何で……




「……じゃ判断できないからな。」

「はい、分かりました。」

(っ……始ま、る……!)


 そうは思っても…………足も、体も、手も………全て、微塵も動かない。


「あぁ…かぁ…はぁっ……!」


 それどころか、息も切れ始め、視界もぼやけてきた。


 顔も上げれず……ただ、俯くばかり。



『……お前は本当に使えねぇなぁ、このグズが!!!』



『……魔法は使えないどころか魔力暴走だし、おまけに不気味だし……本当、何なのこの子。』



(いや……やめて……!)



 ………やっぱり、駄目なんだ。私が魔法を使う……ましてや、誰かと仲良くなるなんて…………





(…むり……だぁ………)











「フィーリィア。」

「…っ………!!」




 不意に、私の名前を呼ぶ声が近くから聞こえた。


 そんな声に恐るおそる顔を上げると……そこには、ウルスがいた。



「どうした……体が震えてるぞ。」

「だ、だいっ、だぃっ……」


 慌てて言葉を返そうにも、増していく震えでまともに喋れなく、恥ずかしさで目に何かが溜まっていく。


(もう…おしまっ……)









「……失敗して、暴走するのが怖いか。」

「…………?」

(えっ……)


 明らかに変な私を見てもウルスは気にすることなく、ただ真っ直ぐにそう聞いてきた。





「………フィーリィア。」




 ウルスは私の正面に立ち、膝をついて見上げてきた。


 その目に映ったのは、軽蔑の色でも心配な色でもなく……




 …()()の色だった。



「失敗したっていい、だから頑張れ………()()()、俺は言わない。」

「……ぇ……?」


 あまりにも予想外な言葉に、そんな疑問の声が漏れてしまった。



「人は一度失敗や恐怖を経験してしまったら、必ず挫折する。『もう嫌だ……逃げてしまいたい』……俺も、そう思ったことがある。」

「……あなた、も……?」

「あぁ…でも、それは悪い事じゃない。当たり前なんだ……失敗を恐れてしまうことは。」


 恐れるのが……悪いことじゃない……?


「失敗すれば、誰かが傷ついてしまう……それを恐れない奴は、何も知らない馬鹿だ。だから……お前は正しいんだ。」

「正、しい……」

「そう、正しいんだ…………










 ……でも、間違ってる。」



 ……間違い?



「このままじゃ、お前は一生独りぼっちになる。誰かと話したり、笑ったりできない……そんな辛い人生を送ることになってしまう。」

「…だっ、だけど……そうしないと暴走する……!」



 ……ウルスの言っていることの意味が分からない。





 私には魔力暴走があるんだ。例え魔法を使おうとしなくても、誰かと関わっていく中で急に暴走したりしてもおかしくはない。

 そんな私が、誰かと笑う…?



「私に…そんな資格……ない……!」


 私は目に溜まった物を必死に堪えながら、彼に言い放つ。




「私は、人を傷つける…私が、傷つけたくなくても…そうなる……から、私は…わたし、はっ……!」




 もう、誰も………傷つけたくなんて………!!






「……資格は、ある。」

「な、ない…からっ……!」

「いや……ある。」


 私がそう否定するも、ウルスは違うと首を振る。




 そして……………励ますように、笑いかけながらこう言った。








「だってお前は…………優しいだろ?」







 『失敗は成功のもと』なんて言いますが、無責任な言葉ですよね。


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