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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
五章 暴走

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五十五話 恩人

 





 俺は…もっと……





 もっと…もっともっと……




 もっと強く……







(でなければ俺は……)








 何も……守れ………!

















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















 オリジナル魔法を作るため、フィーリィアとペアを組んで2日目。俺たちは昨日と同じように訓練所に来て合体魔法の練習をしていた。


「いくぞ。」

「…………」


 フィーリィアの頷きを見て、俺はまず風を球体を形取るように吹き起こし、どんどん勢いを増させながらその球体の中に空洞を作り出す。

 そして、フィーリィアがその空洞に圧縮した氷を作り出していく。


「……くっ……うっ!」

「フィーリィア……!」



 だが、フィーリィアは魔法の圧力に耐え切れず解除してしまい、その場に尻餅をついていた。それを見て俺は魔法を解除しすかさずフィーリィアの側に行く。


「大丈夫か?」

「…うん……」

「……少し休憩するか。」


 初めてまだ数分程度だが、既にフィーリィアには疲労が溜まっていた。それを鑑みて俺たちは一度休憩するために観客席へと移動した。


(……この様子を見ると、今まで魔法を使ったことが無かったのだろうな。)


 しかし、才能がないわけでは無い。現に昨日の際、コントロールは出来なかったものの発動することはできていた。普通ならいくら魔法のランクが足りていたとしても、使用経験がなければ発動すらできないこともある。


「……フィーリィア、ちょっとこっちに。」

「………?」


 俺は離れた位置に座っているフィーリィアを呼び、近くに座らせた。

 そして、俺はフィーリィアの頭上に手を翳して中級魔法を発動する。


「『ヒーリング』」

「……え、何を…………?」

「回復魔法だ、これを使えば体力も回復する……少し時間はかかるけどな。」

「……でも、それじゃそっちが………」

「これくらい大丈夫だ、この魔法は魔力消費も少ないしな。」

「…………」


 俺の取って付けた理由を聞いて、フィーリィアは渋々といった様子でその魔法を受ける。


「…………」

「…………」



 その回復の間、沈黙が生まれる………まあ、想定内だが。




(……果たして、昨日言ったことは正しかったのだろうか。)



 『選ばせたい』。その想いで俺はフィーリィアを引っ張ったが……これがフィーリィアにとって良い方に繋がる保障はない。

 それに…今、俺がやるべきなのは………



「……何、考えてるの?」

「……えっ、あ、ああ……少しな。」


 不意にフィーリィアが俺を見上げてそんな事を聞いてきた。まさかそっちから話しかけて来るとは思わなかったので、少し動揺しながらも誤魔化そうとする。


 しかし、それがバレていたのかフィーリィアは怪訝そうに俺を見つめた。


「……嫌な夢でも見た?」

「…………まあ、そんなところだ。」


 ()()()()()()な指摘に心の中で驚きながらも、悟られないように平然と頷く。




(………嫌な夢、か。)



「……フィーリィアは『強くなりたい』って、思ったことはあるか?」

「……強く………」



 俺の言葉を聞いて、フィーリィアは考えるように顔を伏せる。


 そして……頭を横に大きく振った。


「……私が強くなったら……暴走がもっと酷くなるから……」

「……そうか。」


 魔力暴走は持ち主の魔力総量が多ければ多いほどより暴走を起こした時、より激しいものとなる。

 フィーリィアの魔力量で昨日の冷気? みたいな物の量は少し異常だったが……魔力暴走は分からないことの方が多い、そういうものなんだろう。



(もしかしたら俺の認識が間違っているのかもしれない…が、とにかくフィーリィアの気持ちは分からなくはないが……)


「……でも、ここは主に魔法を習いに来る場所だ。なのにお前はどうしてここに?」

「それは………恩人のため。」

「恩人?」


 俺がそう聞き返すと、フィーリィアは何かいい思い出でも思い出しているのか、口元をほんの少しだけ緩ませた。


「私を助けてくれて……育ててくれた恩人。その人に『行ってみないか』って言われたから……」

「……優しい人なんだな。」

「うん、優しくて……強い人。」





(……そんな顔、するんだな。)



 今までほぼ表情を変えなかったフィーリィアだが……恩人の事を語る彼女の目は優しく、安心し切った顔を浮かべていた。

 きっと、その恩人がいたおかげでフィーリィアは、こんな称号を持っていても優しい心を持てていたのだろう。



「………どうだ? 疲れは取れたか?」

「……うん、もう大丈夫………」

「なら、続きをやろう……下に降りるぞ。」



 フィーリィアの体力も回復し、舞台へと降りて再び練習を再開しにいく。


 その最中、フィーリィアが背後から聞いてきた。


「……あなたは、強くなりたいの?」

「……ああ、なりたい。」

「……なんで?」

「………………」



 なんで……か。それは……………




「……守りたいからだ。」

「守、る……?」

「自分が守ると決めたものを絶対に守り抜く…………そのために、俺は強くなりたいんだ。」



 ………そう、忘れるな。

 



 俺は守るんだ、大切なものを。


 



(そのために……強くなるんだ。)












「……………」








 皆さんは誰か恩人と呼べる人はいますか? 自分はいません。


評価や感想、ブックマーク、誤字訂正などよろしくお願いします。

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