五十二話 フィーリィア
「よろしくな、ローナ!」
「うん、よろしく!」
「頑張りましょうニイダさん。」
「よろしくっす、カーズさん。」
ペア発表が終わり、早速課題を始めることになった。会話の通り、ソーラとローナ・カーズとニイダとペアが決まっていた。
(固まったな………)
なので、余っている俺とミルがペア………………というわけにはいかなかった。
「ミルさんは確かライナさんっすよね……大丈夫っすか?」
「うん…確かに話したこともないし、ちょっと不安だけど……多分大丈夫。」
「まあ、あの人は次席ですし失敗はないと思いますが……それよりもウルスさんの方が…………」
カーズの心配そうな言い方に、全員が頭を捻らせる。
「確か、フィーリィア……だったか?何か謎というか…喋ってるところを見たことないんだよな。」
「タッグ戦の時にライナと組んでたよね、その時も全然表情を変えなくて怖かった記憶があるよ……」
「ライナさんの雰囲気とはまた違った近寄り難さがあるね……大丈夫、ウルスくん?」
「……そうだな…………」
みんなの言葉を聞きながら、俺は教室の片隅に座って本を読んでいるそのフィーリィアとやらを観察する。
彼女は耳に少しかかるくらいの短めの桃色髪に、服は藤色のスカートと長めの上衣を着ていた。
顔は……おそらく可愛いと言われる部類に入るのだろう。ローナもタッグ戦が終わった後にそんなことを悔しがりながら言っていた気がする。
(…しかし、あの雰囲気は…………)
ソーラたちの言う通り、フィーリィアにはただならぬ雰囲気を感じ取れた。
ラナの様な1人というものではなく、独り……ただそれを望むような、そんなオーラを放っていた。
「…まあ、大丈夫だろう。タッグ戦の時も別にサボっていたわけじゃないだろうし、最低限は協力してくれるはず。」
「さ、最低限……」
「……じゃあ、俺は行くぞ。みんなも頑張れよ。」
俺の言葉にローナは顔を引き摺っていたが、構わず俺はフィーリィアのところへと向かった。
「………………」
俺はフィーリィアの横の席に座ったが……彼女の反応は全く無く、ただぼんやりと手に持つ本を眺めていただけだった。
(隣に座ったのだから気づいていないことはないと思うが……ここは少し待つか………?)
「……………」
「……………」
…………まさか、本当に気づいていないのか…?
「…………」
(……こっち向いた。)
あまりにも動きがないので少し焦り始めたところ、やっとフィーリィアは反応……というか、こちらに顔だけを向けて来た。
その目に光は無く、ただ『見ている』………それだけを感じさせた。
「……お、俺はウルス。フィーリィアであってる……よな?」
「…………」
俺の問いに、フィーリィアは首を小さく縦に振った。
とりあえず無視されているわけではないことに少し安心しながら、俺は話を続ける。
「聞いていたと思うが、俺たちはペアだ。これから3日間で協力して魔法を作らないといけない……早速だが、何かいい案はあるか?」
「……………」
俺がそう聞くと、フィーリィアは本当に小さく頭を傾けた……おそらく何か考えているのだろう。
(……本当に無表情だな……何を考えているのか全く分からない。)
いくら表情に変化がないといっても、普通眉をピクリと動かしたり何かしらの癖みたいな物が人間にはあるはずなんだが……そんな物が何一つ無い。
ひょっとして何か魔法でも使っているのか………なんて疑いに辿り着いたところで、フィーリィアの方が初めて動いた。
「…………お互いの……」
「……?」
「お互いの……得意な魔法を……合わせたら……」
「……合体魔法をやるってことか?」
「……………」
フィーリィアは静かに頷く。
(……2人で合体魔法か。確かに1人でならプロメテウスの風焔のような物を作ったことはあるが、複数人でというのは一度もないな。)
「じゃあ、やってみるか……訓練所に行こう。」
「……………」
俺が立ち上がり訓練所へ向かおうとすると、フィーリィアは恐るおそると言わんばかりにひっそりとついて来た。
(……………?)
如何にも謎だらけです。
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