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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
四章 タッグ戦

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五十話 分からない

 



「いっぱい訓練所があるね……食堂とか寮とかも!」

「研究所みたいな場所や広場、図書館もあるな……これは退屈しなさそうだ。」


  ミルと2人で学院を回っていく。


 ……回っていて気付いたが、どこかここの景色には既視感を覚える。この街に来たことは何度かあるが、この中まで来たことがあっただろうか……?




(………ん……?)



 そんな事を考えている時、不意に近くの訓練所から魔力を感じた。


 ……どうやら、誰かがそこで特訓をしているようだ。ここは寮や校舎からも結構な距離もあり、俺たちのクラスが早くに終わったからなのか、ここは人がかなり少ないが……珍しいものだ。


「……あ、あそこで誰か訓練してる。」

「……少し『覗く』か。」

「えっ……う、うん。」


 俺がそういうことを言うのが予想外だったのか、ミルは驚きながらも付いてくる。









「……はぁっ!!」




 中から、そんな女の凛々しい掛け声が聞こえてくる。

 覗くとそこには、頭に鉢巻はちまきを巻き長い漆黒の髪を後ろに束ねた女がいた。


(……見たところ上級生か、魔力量も動きもそこそこ。それなりの強さは持っているようだな。)



「……ウルスくん、もしかして…………見惚れてる?」

「いや、見惚れてたわけじゃない…ただ…………」

「……ただ?」




 ……何故俺は()()()

 別に特段凄い魔力を感じたわけでもないし、俺に覗き見の趣味は無い。


 

(何か気になったのか……?)



「……ウルスくん、やっぱりああいう大人な女性が………」

「違うぞ……まあいい、行こう。」

「怪しいなぁ……」



 ミルに変な誤解を残したまま、俺たちはその場を去った。









「………………」












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「じゃあウルスくん、また明日!」

「ああ、また明日。」



 あの後学院を一通り周り、日も暮れてきたので俺たちは解散した。そしてこの学院生活では寮に寝泊まりをするので、俺は自身の部屋へと向かった。



「……ここか。」



 扉を開け、中に入ってから鍵を閉める。

 部屋には机やクローゼット、ベッドが置いてあり、他にもシャワールームやベランダなどもあった。


(……見た感じ物が多い分、師匠の家の自室の方が広く感じるが……そこまで変わった勝手もない。不便さは無さそうだ。)



 そんなことを独りで考えながら、俺はベッドに座る。そのベッドは弾力も強く、体がどんどん沈んでいった。



「……これから、どうする……」




 ミルは順調に学院に馴染めるだろう。2人と仲良くできているだろうし、楽しい学院生活を送ってくれるはず。



 ローナと再開した時は少し焦ったが、どうやら既に疑いは消えているようで普通し接してきている。ボロが出ないよう気をつけないと。



 ニイダのことは……よく分からないが、確実に俺の何かを怪しんでいる。目的も理由も検討が付かないが、これからも警戒はしておく必要があるな。



 そして…………





「……………ラナ。」





 分からない。

 学院に入って何をしたいのか、何になりたいのか。










『ここまで来たよ、ウルくん。』









 ()()()に聞いた言葉が頭を回る。



 ………『ここ』ってどこだ。




 ………何で俺にそんなことを言うんだ。





(……まるで、俺の為みたいに…………)







『大切な()()()』…………








「……くそっ………」








 俺は……最低な奴なんだろう。




 それでも…………俺は言えない。











 信じてくれない…………そうに違いないの、だから。





 これで四章は終了です。一体ウルスは何を考えているのでしょう。


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