三十八話 ガラルス=ハート
「……お前はさっきの彼と知り合いなのか? やけに親しそうだったが。」
「………いいえ、さっき知り合った変な奴です。」
舞台に立つや否や、学院長はそんなことを聞いてきた。
それに対して俺は適当に返しながら、ステータスを覗こうとした。
(………見れないな。)
しかし、俺の頭には何の情報も入ってこなかった。おそらく超越級魔法の心眼を使っているのだろう。
「………おっと、ステータスは見せないぞ。ちゃんと手加減はするから安心しろ。」
「そうですか…………分かりました。」
『神眼』
俺はそう言いながら前髪をわざとらしくいじり、不満そうな姿を見せた。
そして、疑いをゼロにしてから強制的にステータスを見た。
名前・ガラルス=ハート
種族・人族
年齢・40歳
能力ランク
体力・430
筋力…腕・590 体・508 足・600
魔力・394
魔法・27
付属…なし
称号…【成人の証】
【力の才】(体力や筋力に才能がある者に贈られる。また、この称号を持つ者は体力と筋力の成長速度が上昇する)
【英雄】
【未来の使い手】(神器・アヴニールの使い手に贈られる)
(英雄……ガラルス=ハート…………やはりか。)
あの強さとこのステータスの高さ、称号と名前、そしてその武器の力……どうやら、この人も師匠と同じ20年前に活躍した英雄の1人のようだ。
………ということは、師匠は『それ』を分かっていて………
「……? 今、なんか魔法でも使ったか?」
「……いや、使っていませんが。」
「そうか……何か魔力を感じた気がするんだがな……気のせいか。」
………神眼を感知することは不可能なはずだが……流石、英雄といったところか。おそらく強者の勘のようなもので感じ取ったのだろう。
(……能力はかなり高い、筋力だけで言えば師匠以上だ。それに……称号の説明に書いてある通り、彼の両手剣・アヴニールは神器らしい…………未来の使い手っていうのはよく分からないが。)
俺にそのような称号は付いていない。アヴニール限定のものなのだろうか……
「それじゃあ……準備はいいか?」
「はい、大丈夫です。」
ガラルスの言葉を聞き、俺は構えを取る。
それを見てガラルスも剣を構えようとしたが、途端俺の構えを見て片手を顎に当て始めた。
「…………ほう……」
「……どうしました?」
「いや……構えがグランさんに似てるなって。」
「………グランさん?」
「ああ……なんでもない、こっちの話だ。さあ、いつでもかかって来いっ!」
ガラルスはそう言って今度こそ剣を構える。
(……確かに、この構えはグランさんの物だが。)
俺の持っている2つの構えの内の1つとして、腰を低くしながら片手で持っている剣の剣先を相手に向け、そしてもう一方の手を心臓のある方の胸に当てるといったものがある。
胸に当てる理由は、魔力の流れが一番活発な心臓の近くに手を当てることによって、初動に魔法を使う場合に素早く発動できるからだ。
そして、この構えは師匠に教わったものだ。ならば、交流のあったガラルスがこれを見て師匠のことを思い浮かべるのも、自然なものだろう。
「…………」
「…………」
お互いに相手を見据える。どうやらあっちから仕掛けることはないようだ。
(……本気でやって勝ちに行くのはもちろん駄目だが、下手に負ければ落とされる可能性もある。それなりに上手く負ける必要があるな………)
……さて、どうしたものか。
良い具合に考えます。
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