二十七話 神眼
数日後、俺とミルは師匠に紹介された魔道学院に入るための入学試験に行くため、準備をしていた。
その魔道学院の名前は、『ソルセルリー学院』。
15歳以上から入れる魔導学院で、3年間で魔法や世界のことを学んだり、実践的な訓練を行なったりする施設らしい。
そして、ソルセルリー学院の街は人族の国の中では首都に続く大きな街『プリエ』で、そのソルセルリー学院もかなりの有名……というか実質国1番の指導施設だそうだ。そのため入学を希望する人も多く、数をある程度削るためにそれなりの試験があるらしい。
「ウルスくん、準備できたよ。」
「ああ…それじゃ行こう。」
お互いに準備を終える。試験は受付日を含めて2日間試験があり、全てが終わった次の日に入学者発表があるので、プリエには二泊する予定だ。
外に出てると、師匠が見送ってくれた。
「師匠、行ってきます。」
「グランさん、絶対合格するから待っててね!」
「ああ、お前たちなら楽勝だろう。頑張ってこい。」
「はい……じゃあミル、俺の方に触れてくれ。」
「うん!」
そう言うと、ミルは腕に抱きついてくる。
肩を触る程度でいいんだが……いちいちツッコミのも疲れるので無視する。
俺は師匠に手を振り、転移魔法を唱えた。
「『転移、プリエ』」
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「……着いたぞ。」
「おお、本当に一瞬だ!」
目を開けると浅い森の中に居た。そして目の前には大きな街、プリエが見えた。
「ねぇウルスくん、なんでここなの?そのまま街に入ればよかったんじゃ……?」
「転移魔法なんて街中で使えば目立つ、それに……離れてくれ。」
「あ……ごめんごめん。」
「……じゃあ行くぞ。時間はあるが、のんびりして遅れたら元も子もない。」
「はーい!」
転移魔法は超越級なので、街なんかで使えば騒ぎになってしまう。旅なら顔も隠していたのでそこまで支障はなかったが、今回はただの受験者として訪れるので、騒ぎになれば今後必ず面倒になる。
2人で森の中を歩く……まあ、森といってもすぐ近くに街があるので、今のうちに事前に言わないといけないことをミルに伝える。
「ミル……入学試験や学院生活では少し手加減するんだ。」
「えっ、なんで?」
「ミルは師匠とずっと一緒に育ってきたから分からないかもしれないが……俺たちの能力は、子供にしては異常に高い。まだ学院のレベルも分からないが、俺たちより高いことは無いはずだ。そんな俺たちが圧倒的ステータスで今後過ごすとなると絶対に目立ってしまう。」
「う、うん。確かにそうだけど……でも、学院の人にもし心眼を使う人がいたら……」
「それは大丈夫だ、『これ』で誤魔化せる。」
『神眼』
俺は神界魔法の神眼を使って、ミルに触れる。
「あ、紫になった。」
「…………これでいいだろう。」
「……? 何かしたの?」
「神眼の能力は相手を全て見破り、心眼の効果を完全に消せる……これは前にも言ったな? そしてその効果の一部は、触れた相手にも使用することができる……つまり今、俺とミルは心眼で見られると、同年代と同じくらいのステータスが表示されることになるはずだ。」
そう言いながら、俺は今のミルのステータスを見せた。
「えっ……あ、本当だ! 凄く下がってる……けど、これって実際の私のステータスは変わってないんだよね?」
「ああ、変わったのはあくまで見た目だけだ。だから、今後はそのステータスに合わせて動いてくれ…………よし、着いたな。」
そうこうしていると、街はもう目の前だった。
便利すぎますね。
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