二十二話 勝負
「はぁ………」
あの後も色々と2人に質問攻めをされ、解放された時にはすっかり日が暮れていた。
俺はその質問攻めから来た精神的疲れから、久しぶりの自分の部屋に入ってすぐさまベッドに倒れ込んだ。
(………甘い香り? 師匠が何かしたのだろうか。)
……しかし、この匂い。どこかで嗅いだことのあるような……
「…………まあ、いいか。」
そんな事を呟きながら、寝返りをうつ。
俺がここに戻ってきたのは、今の時点ではこれ以上の成長はできないと感じた……そして、戻ってくると約束をしたからだ。
あの2人のことも見届けたし、強くもなれた。だから今のところ自分に焦りや心配はないはず……だが…………
(………心が、騒がしい。)
身体の内側から、何やら得体の知れないものが騒いでいるような……そんな感覚がある。
………これは、心に染み付いてしまっている……強さへの執ちゃ………
「ウルスくんっ!!」
「なっ、いきなり何だ……!?」
考え込んでいたため、ミルが俺の部屋に入ろうとしていたことに気付けず……不意打ちでベッドにダイブされてしまった。
慌ててミルを引き剥がし説教をしようとしたが………その表情に嬉々とした色は、あまり見えなかった。
「…………どうしたんだ。」
「あの、もう夜になっちゃうけど……私と勝負して欲しいの!」
「勝負? ……いきなりだな。」
俺がそう聞くとミルはベッドから離れ、部屋を歩き回りながら話し出す。
「……私もグランさんに鍛えられたんだ。旅で強くなったウルスくんに勝てるとは思ってないけど……でも、その成果をウルスくんに見て欲しいんだ。」
「成果……」
「私がどれだけ強くなったか……試してくれない?」
そう頼み込んでくるミルの顔は、少し暗かった。
(……見て欲しい、か………)
「……ああ、分かった。」
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「ふぅ……緊張するなぁ。」
ミルが息を整えながら呟く中、俺は戦う前にステータスを覗いた。
名前・ミル
種族・人族
年齢・15歳
能力ランク
体力・179
筋力…腕・120 体・99 足・111
魔力・185
魔法・13
付属…なし
称号…【魔法の才】
……まあ、予想通りだ。流石に師匠に鍛えられただけはあって、大人顔負けの強さを持ち合わせているな。
「ねぇウルスくん、どうやって勝敗を決める?」
「……そうだな、ミルは俺を魔力防壁を壊せれたら勝ちでいいぞ。」
「ウルスくんの勝利条件は?」
「ミルが『降参』というまでだ。あくまでミルの力を確認するだけだからな……満足するまでやってくれ。」
「……分かった。」
ミルはそう言い、腰につけている武器の柄を握る。
(あれは…………)
「師匠に貰ったのか? その武器。」
「うん……これは『アステール』て言うの。グランさんが旅で見つけた魔法武器だって。」
ミルが持つアステールは蒼く透明で、レイピアの中では長めの武器だ。
確かこの武器は、師匠が旅で見つけたうちの一つの武器らしく、師匠は旅でいろんな武器を見つけては持って帰っていたそうだ。
ほとんどの武器は師匠も扱えるらしいがこのアステールは俺の武器と同じように、師匠があまり上手く扱えない数少ない武器だったはず。
……もしかして、ミルなら使えるのか。
「じゃあ……行くよ!」
「ああ、かかって来い。」
俺が手を招いた瞬間、ミルがアステールを自分に突き出す。
(……さあ、どれくらい強くなった?)
VSミルです。
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