二十話 運んで
「ウルス……その目は……」
「……これですか?これは…うっ……?」
師匠に『目のこと』を指摘され、俺は軽く説明しようとしたが……不意に、体に軽い衝撃が走る。
その衝撃の正体を確かめるため、下に目線を送ると……何故か、ミルが俺の体に抱きついていた。
「……本当に、ウルスくんなの?」
ミルは俺を見上げて、そう聞いてくる。
その目は少し潤っており、家から飛び出してきた時とは全くの別人と言っていいほど幼く見えた。
そんな様子を見て……俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
「……ああ、ただいま……ミル。」
「……!! うん…おかえり、ウルスくん……!」
俺がそう告げると、ミルは再び俺の胸に顔を埋めて、小さく嗚咽を漏らした。
俺はミルの頭を撫で続けながら師匠に視線を移すと、未だ俺の『目』に驚き続けていた。
「師匠、これは……」
「……とりあえず、家に入ろう。色々聞きたいこともあるしな。」
「……はい。ミル、一旦離れて……?」
師匠に言われ、俺はミルの肩を掴んで離れようとしたが……ミルは何故か、回している腕に一層力を入れ始めた。
「……ミル? 離れてくれないと動け…………」
「………運んで。」
「…………えっ、いや、動けるだろ? 早く……」
「運んで。」
「いやだから、歩けないわけじゃ………」
「運んで。」
「「………………。」」
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結局、ウルスは渋々ミルを抱えて家の中へと入った。
……久しぶりに会えたのだから甘えたい気持ちは分からないでもないが…………相変わらず女心はよく分からん。
「……じゃあ、そろそろ本題に入るか。」
「………は、はい。」
ウルスは歯切れ悪く返事をする。
それもそのはず……あの後もミルはウルスから離れようとはせず、今もウルスの上にちょこんと座っていたからだ。
溜め息を吐きながら、俺はミルに言う。
「ミル、ウルスに甘えるのは後にしてくれ。それじゃ話に集中できないだろ。」
「………はーい。」
ミルは不満たっぷりな顔をしながらも、ウルスの上から降りて横に座った。
「……で、ウルス。まずは……お前さんは、この旅でどれほど強くなったんだ?」
「そうですね……口で言うより、見てもらったほうが早いですね。」
「そうか、なら……『心眼』」
俺は超越級魔法を使い、ステータスを確認しようとする。おそらく、普通に見ようとしてもステータスの差で文字化けするだろうしな……
『詳細不明』
「……なっ、詳細不明……?」
しかし、俺が見たかった物は現れず……代わりに、今まで見たことのない表記が視界に映る。
「……えっ……見れない!?」
「ミル、お前さんにはどう映った?」
「しょ、詳細不明って………」
(……同じか。)
ミルはまだ心眼は使えないはずなので、どうやら今のウルスのステータスは誰にも見えない……というか、隠されているといったところか。
「……さっきお前が隠れていた時も、魔力反応がほぼ感じられなかった。この『詳細不明』もそれと関係しているのか?」
「いえ、魔力反応と『これ』は直接的な関係ありません。あの時に俺の魔力反応が無かったのは、俺がステータスを抑えていたからです。そして…………」
ウルスはそう話しながら、自身の紫色の目を指差す。
(目の色……確か、昔集めた本にそんなものが書いてあったような……)
どうやら、とんでもない強さになったようです。
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