百七十七話 手に
「…………降参しましょう、グランさん。」
「なっ…………いや……そう、だな。」
「……そうですか。」
ガラルスの提案にグランは何か言いかけたが、振り払うように頭を震わせ頷く。それを確認した俺は2つ目の玲瓏龍華を解除し、腕を払ってオーラを解く。
そして、ゆっくりと地面へ降下し……グランに手を差し出した。
「……想像以上でした、さすが師匠です。」
「…………ああ、ありがとう。」
掴まれた手には、まだ熱があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて……今日はもう疲れたし解散するか。」
「それもそうだな……あっ、おいウルス。勝負も終わったんだしステータスを見せてくれよ。」
「……いいですよ。」
後片付けをし、学院長室に転移で戻ってきた俺たちだったが、長椅子にぐたっと座っていたクーザにそんなことを言われる。しかし、別に彼らに隠す理由はなかったので、俺は3人に見えるよう自身のステータスを可視化した。
名前・ウルス
種族・人族
年齢・15歳
能力ランク
体力・974
筋力…腕・994 体・952 足・908
魔力・2041
魔法・30
龍魔力・300
神界魔法・2
付属…なし
称号…【運命の束縛者】
【記憶維持者】
【魔法を極めし者】
【限界を超えし者】
【龍神流継承者】
【化身流継承者】
【武身流継承者】(武身流を習得した者に贈られる)
【真・龍神流継承者】(真・龍神流を習得した者に贈られる)
【裏式の使い手】(裏式魔法を扱う者に贈られる)
【今来の使い手】(龍器・テラスの使い手に贈られる)
【神界・神眼】
【神界・鬼神化】
【龍の恩恵】(龍から力を与えられた者に贈られる。発動時、ステータスと魔力操作能力が超上昇する。また、龍の魔力を扱えるようになる。)
「な、長っ……一個いっこ確認するのも一苦労だな。」
「今来に神界魔法は分かるが……最後の称号と『龍魔力』というのが…………」
「ええ、金色成る龍から授かった力です。この魔力と称号を使えば真・龍神流だけではなく、通常の魔法の威力も桁違いに底上げできます。」
「……これはまた、凄い称号を手に入れたな。この力さえあれば神を……いや、そんな簡単な話じゃないか。」
一旦自身の考えを肯定しようとしたが、師匠はすぐさま首を横に振る。
「龍を操っていたんだ、あいつら自身にも龍の力があるのかもしれない……ウルス、もし神眼に龍の魔力を混ぜたらどうなるんだ?」
「今試します………………いや、ダメです。今回の調査隊の場所まで確認しましたが、反応は無いです。」
「単純にそこに居ないか、龍の魔力は関係ないか、それこそ同じような対策を取ってるか……何にせよ、もっと調査範囲は広げておかなければ。」
「色々、やることも山積みだなー。今年の冬には例のアレもあるしな。」
「……例のアレ?」
その言葉に思い当たる節がなく、俺が鸚鵡返しをするが……クーザは口を閉じるような動作を見せた。
「それはまたのお楽しみだ……まあ、お前にとってはお遊戯だろうけどな。」
「……そうですか、なら俺は先に帰ります。」
「ああ、儂たちはもう少し話したいことがある、また何かあったら来てくれ。」
「……しっかり休めよ、ウルス。」
「はい。」
別れを告げ、俺は学院長室を出る。とりあえず今日の予定は無くなったが……師匠の言葉通り休むわけにはいかない。
『………ウルス、頑張れよ。』
(…………龍の力を磨かなければ。そして、アイツを……この手で…………!!)
「ねぇ。」
…………………え?
「…………ハ、ハート……さん? いつの間に。」
「何で、そんな怖い顔してるの? っていうか、何で学院長室から出てきたの?」
熱くなって周りが見えていなかったせいか、いきなり目の前に現れたかのように立っていたフラン=ハートは、相変わらずの無感情な瞳で俺の目を覗き込み、そう聞いてきた。
「……調査隊で少し報告することがあって、今はまだ忙しいらしいので用があるなら後の方がいいと思います。」
「…………そう。」
「…………それじゃあ、俺はここで。」
適当に誤魔化しながら、俺はその場を離れようとした…………その時。
「……………?」
「……………」
隣を横切ろうとした瞬間、俺の腕は何も感じられない冷ややかな手に掴まれる。その犯人へ振り返ると、彼女は何か思い付いたかのような表情をしていた。
「…………じゃあ、君でいいや。」
「……まだ、何か?」
「……………………
………………勝負、しよ。」
温度がよく変わりますね。
評価や感想、ブックマーク、誤字訂正などよろしくお願いします。
また、Twitterはこちら https://twitter.com/@SO_Nsyousetuka




