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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
二章 『強く』なるために

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十五話 覚悟はできてる

 



「おら、さっさと金出せよ!」

「えぇ……」


 男は私を壁まで追い込み、脅迫をしてきた。


 私が今、何故こんな目にあっているのか。

 それは単純、ここは街の中心で私の家は街の端とかなりの距離があったので近道をしようとしたらガラの悪い男にぶつかった……それだけっ!


(………まあ、ピンチなんだけどね。)


 心の中では余裕そうにしてられるけど……正直怖い。見た感じ私よりも全然強そうだし、下手に言えば何をされるか分からない。まあ男の言い分はどう見ても冤罪だし暴論でしかないけど……荒事は嫌いだし、私は大人しくお金を出そうとした。


(ああ…母さんになんて言おう………)



 幸い大したお金もないけど……『少ない!』なんて言われたら…………







「っ……痛ってぇな。あ? てめぇもぶつかったんだから慰謝料払えやコラ!」

(………?)




 私は渋々お金を出そうとした時、男がそんな声を上げていた。

 見てみると、そこにはフードを深く被った人が1人そこに立っていた。


(……子ども? 私と同じくらい…かな。)



 身長は自分よりも数センチ高い男の子のようで、フードが付いた短いマントを着ており、中の服は普通の茶色や黒色の服を着ている……見た感じ普通の冒険者みたいな旅人だった。


「…………………。」


 旅人は一瞬男を見ていたが、その眼には何の興味も抱いていなさそうだった。すると、そんな眼が気に入らなかったのか、男は怒りをあらわに拳を握った。


「……舐めてんのか、この野郎っ!!!」

「あっ……!!?」


 男はその握った拳を思いっきり旅人へとぶつけようとする。その勢いはとても子どもが受け止められるようなものではなく、下手をすれば怪我どころでは済まないほどに速いものだった。


(危なっ…………!!!)













「…………………」



 ………………が、その心配は杞憂に終わり……旅人は何事もなく拳を『紫色の壁』で難なく受け止めた。



(あれは……『魔力防壁』?)



「な、なんだ……このぉ!!」

「……………」


 男は拳が効かなかったことに驚きながらも、再び拳をぶつけた。しかしそれも全くと言って良いほど効いておらず、精々彼のフードを少し揺らす程度にしか届いていなかった。


 ちなみに、旅人のフードの奥は()()()なくらいに暗く、口と鼻……そして眼くらいしか確認できなかった。


「な、くそがっ……こんなもの!」

「っ……だめっ!!」

「……………」


 相当イライラしているのか、男は腰につけている鉄の片手剣を旅人に向けて振り(かざ)そうとする。いくら拳は聞かなかったとはいえ、剣は流石にまずい。


(でも、私の力じゃ止められ………!)



 


 










「……………え?」




 だが………剣でさえも魔力防壁で旅人は軽く受け止める。その魔力防壁には傷一つなく、剣は弾かれ男は顔を青く染めた。


(…………すごい。)

「な、ど、どうなって……ひぃ!?」

「速っ…!?」


 男は悲鳴をあげた。

 それもそうだ……いきなり目の前まで瞬間移動でもしたかのようなスピードで来て、胸ぐらを掴まれたのだから。


「………………おい。」



 相変わらず顔の見えない旅人だったが、ここで初めて声を出した。



「人に斬りかかるってことは…………()()はできているってことだよな?」

「ひぃぃ! た、助けてくれぇ!!」

(……えぇ…………)


 さっきまでの威勢はどこに言ったのだろうか、男は足をガクガク震えさせて何故か私に助けを乞う。実に情けない……


(…………というか……………)


 ………それにしても凄いな、この光景。男の子が190センチはある男を脅している。何も知らない人が見ればきっと腰を抜かすだろう。


「………とっとと消えろ。」

「す……すみ、すみませんでしたぁっ!!!」


 旅人が男を離すと、男はスタコラとどこかに行ってしまった。さっきまでの態度と比べ、あまりにも情けない姿に私はため息を吐きそうになるが……まあ、私もあんな事されたらビビりまくるだろうな…………




「……大丈夫だったか?」

「え……だ、大丈夫。何もされてないよ。」


 旅人は私の前に来てそう聞いて来た。相変わらず顔は見えず、何をどう思っているのかはさっぱり分からなかったが。

 しかし……その強さは誰の目から見ても異常、少なくとも子どもが持っているべきステータスの高さではないということは私にでも分かった。


「そうか…………じゃあな。」


 旅人は言うだけ言うと、どこかへ行こうとしていた。そんな彼に私は何故か勿体なさを感じた。



(……どうしよう。せっかく助けられたんだし、お礼がしたい………)



 それに…………何故、そんなに強いのか。私はそれが…………







「……ねぇ、ちょっと待って!」






 私はそう思い、旅人を呼び止めた。



 

「……なんだ?」

「助けてくれたし、何かお礼がしたくて。」

「……お礼なんていらない。」

「で…でも、そこをなんとかっ! あなためちゃくちゃ強いし、話も聞いて見たいの……お願いっ!!」

「…………………」


 …………助けてもらって厚かましいことこの上ないが……『押せる時は押さないと』と母さんも言ってたし、こんな強い人と話せる機会は滅多にない。


「…………はぁ。」


 しばらく何かを考えていた旅人は、溜息を吐きながら渋々と言った様子で答える。


「…………お礼か、なら……近くに店はないか? 腹が減ってるんだ、話をするならそこで。」

「店? ……分かった! それなら私のイチオシのところがあるから、そこへ行こう!」

「…………ああ。」


 その返事を聞いて、私と旅人は店まで一緒に歩いていく。その道中はずっとお互い無言で話す機会もなかった…………あまり乗り気ではないようだが、それはそれだ。





 覚悟ができている奴なんて、この世に1人もいません。


評価や感想、ブックマーク、誤字訂正などよろしくお願いします。

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