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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
十三章 龍と仮面

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百五十五話 手を抜いて




『……不意打ちだと?』

『はい、魔物は魔力感知をほとんどしてきません。だからうまく隠れられればそこまで難しいことじゃないです。』

『だが、そこにある洞窟とやらの奥に居た場合はどうするんだ? 私たちはこの森の地形をよく知らないし、下手をすればグダグダになって返り討ちに遭うぞ?』

『そこは、俺が(おとり)になって呼び出します。魔物に大した知能は無いので失敗はしませんよ。』

『お、囮……ならせめて2年の俺が……』

『心配入りません、任せてください。』

『……………』







「ガッラ、ハルナ……行くぞ!!」

「はい!!」「うん!」


 三重(さんじゅう)の渦に魔物が包まれた直後、崖からクルイたち3人が滑り落ちて来る。そしてそれぞれ武器や魔法を放つ準備をしながら、魔物が渦から出て来るのを待っていた。


「俺が1体誘導する、先にお前たちでもう1体倒しておいてくれ!!」

「えっ、大丈夫なんですかクルイさん!?」

「ああ、俺の魔法じゃ人がいると動きづらい……だから気にするな、『ライトニング・ライジング』!!」

「………………」


 そう言ってクルイは魔法を発動し、体に電気を走らせ始めた。正直言ってその作戦は得策ではないと思うが……仕方ない。


(ゴブリンキングのステータスは200前後……それに加え強い個体、クルイ1人で戦える相手かどうか…………)


 …………いざとなれば、()()しかないな。


「「グルオオオォッ!!!!」」

「来たぞ、そっちは任せるっ!!」

「はい……ハルナ、攻撃を受け止めてくれ!」

「分かった……はぁっ!!」


 キングの1体が俺へ武器を払おうとした直後、ハルナがこて籠手(こて)で直接受け止めた。そして、その隙を縫って俺は胴体へ蹴りを入れるが…………


「ガウゥッ!!!」

(効いてない……打撃はほぼ無意味だな。)

「『武装・毒牙』……はぁっ!」


 俺が蹴りを入れた後、キングの背後をガッラが毒の剣で斬り裂くが、威力が足りていないのかそれもほとんどダメージになっていなかった。このペースじゃいつまで経っても倒せないな……


「ラナ、魔法で牽制してくれ! ……ガッラ、その魔法を俺たちの魔法に組み合わせられるか?」

「魔法? 魔法って言われても何を!?」

「武装・毒牙だ! その魔法を俺たちが今から放つ魔法に織り交ぜて欲しい……『獣霊流(じゅうれいりゅう)』だ!」

「……………()

「アレだね……はぁぁっ、『大地(だいち)(いしずえ)!!」


 俺はそれぞれに指示を出しながら、自分も魔法の準備を始めていく。しかしそんな猶予を与えてくれるはずもなく、キングは俺たち全員に当たるようにハンマーを振り回して来た。


「くっ……すまない、そっちに行けない!」

「俺が向かう、ハルナはガッラをサポートしてやってくれ!!」

「ギャルガァォッ!!!!」

()()()()うん!!」

 

 キングの叫びで声が届きづらかったのか、ハルナは少し遅れながらもガッラを守るよう前に立つ。

 今はガッラとハルナの2人、俺の1人でゴブリンキングを挟み込むように位置取っている。また、生半可な攻撃じゃ意味が無いので、即興だが合体魔法を放って倒したいところだが……まずはガッラたちの方へ移動しなければ。


(……効率よく行こう。)

「『ジェット』……通るぞ!」

「グゥ? ……ガラァッ!!!」


 俺は宙に浮きながらキングの頭上を素通りしようとするが、もちろんそれは視界に入っていたためハンマーで叩き落とそうと(おもむろ)(かざ)してくる。


「危ないぞ、ウルス!!!?」

「大丈夫だ。」

『フレイムアーマー』


 それを確認した瞬間、俺はジェットを解除し足にフレイムアーマーを付与する。そして落下の勢いを前進の力に変えながら、キングの股下をスライディングで(くぐ)っていく。


「グラァッ!?」

(かす)ったか……だが今ので数秒隙ができた、その内に……)

『グランドアーマー』


 流石にステータスの差と落下のラグからか、ハンマーを魔力防壁に掠らせてしまったが、気にせず足の炎を()かせてガッラに指示をする。


「ガッラ、俺の足とハルナの拳に武装・毒牙をかけてくれ。それで一気にダメージを与えてやる。」

「だ、だがそんなこと急にできるものなのか? 俺はそこまで魔法が得意じゃ……!」

「表面に付けるだけで十分だ、早く……」

「来るよっ、2人とも!!」


 急な話で判断が鈍ったガッラの隙に、ゴブリンキングは立て直して俺たちへ再びハンマーを振おうとするが…………


「ラナ!!」

「うんっ、『ライトレーザー』!!」

「ガルゥアッッ!!!??」


 崖上からのラナの光線はキングの目に直撃し、その振り下ろしはあらぬ方向へ繰り出された。これでまた時間ができたな。


「ガッラ、行くぞっ!」

「あ、ああ……失敗しても文句言うなよ、『武装・毒牙』!!」


 ガッラはそう言って俺たちの足とハルナの拳に手を近づけ、毒属性を付与する。すると、赤く燃えていた炎と(だいだい)色に光っていた手は紫色へと変化し、より一層勢いを増していた。そして…………


「『妖炎(ようえん)鎧脚(がいぎゃく)』!!」「『ソイルアシッド』!!」

「グゥォォォォオオオォッ!!!???」


 放った攻撃たちはキングの腹を焼き付け、内臓にまで大きくダメージを与えていく。


「効いてる……俺の剣じゃびくともしなかったのに……!?」

「表面化とはいえ、混ざり合った属性攻撃なら俺でも通用する……だが、()()。」

「ガッ、バァ……ギャアォォアッ!!!!」


 相当なダメージが入ったのは確かだったが、それでも致命傷にはなり得なかったようで、ゴブリンキングは痛みを誤魔化すように咆哮をあげる……あと一歩ってところだろう。


「ど、どうするウルス……もう一回やるか?」

「いや……その必要は()()。」

「えっ、それは…………」







「準備できました、ウルス様!!」


 その時、崖上からミーファのそんな声が聞こえた。そして、そこには……自身の武器である杖笛(つえぶえ)に魔力を込めている彼女がいた。

 

「ふ、笛の音……?」

「魔力で音を(かな)で、その音を武器の力に変える魔法だ……あれなら………」

「グラァァァッ!!!」


 キングは叫び声と共に、背を向いていた俺たち目掛けて攻撃を仕掛けるが…………それが届くことはなかった。



「『詠霊(えいれい)詩杖(しじょう)』」

「ガッ…………ラァ………?」

「…………なっ!?」


 力を溜めた杖笛は光り輝きながら瞬きの間に消える。そして次々とゴブリンキングの体に穴を開け、あっという間に奴を絶命させた。


「つ、強い…………って、クルイさんたちの方は!?」

(…………不味いな。)


 …………あっちはクル……いや、ニイダとメイルドもいるが……いくら2年の首席とはいえ、見たところ苦戦しているようだ。


(できれば、最後まで()()()()()()()()()()が…………潮時(しおどき)だな。)




 …………戦いは、ここからだ。





 よく分からないことをしてますね。


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