百二十話 運命の束縛者
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今日の朝は、珍しく早く起きてしまった。
「……よし!」
僕は勢い良くベッドから起き上がり、着替えて家の外へと出る。今日はいよいよお父さんが魔法を教えてくれるということだったので、いてもたってもいられなかった。
(お父さんは…………居たっ!)
外に出て周りを見渡すと、お父さんは庭の切り株の上に座ってぼんやりと森を見渡していた。そんなお父さんに僕は声をかける。
「お父さん、今日から魔法を教えてくれる約束してたよね。早速教えて!」
「……ああ、そういえば今日だったな……でも、こんな朝早くからやるのか? ご飯もまだじゃないか?」
「大丈夫! それより早くやろうよ!」
「分かった分かった………それじゃは
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しかし………お父さんは、僕の背中を無理矢理押した。
「いいから早く逃げろ! 俺は強い……それは知ってるだろ!!」
「で、でも………!!」
「大丈夫だ、俺は母さんも連れて必ず生き残る…………行けっ!!!」
「っ…………!!!」
その強い言葉に、僕は全てを飲み込み………走り出した。
(………お父さんは大丈夫だ。あの魔法も使えるんだし、負けるはずない……!!)
希望的観測と分かりながらも必死に足を動かして、僕は村を
「………ウルス、まだ頑張るのか?」
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「....分かりたくない。』
…託され…んだ。
もう二度と……失イたく、ない?
「僕を……『俺』を鍛えてください。もう…誰も⬛︎⬛︎な⬛︎ように。」
【………俺は、今日から………最強を目指す。)
もう…度も親を失った、こ れ い
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「…………あ、 あの。」
「…………なんだ?}
(その小さ〔力につい振り返ると、ミルは恥ずかしそうニしなが はっきりと言)
「………昨……?! ウルスくん。おか ちょっとになったよ。」
「…………そうか、そ タ
「…………もう、彼女は だろ 。これ以上心配必要はないな。”
「……じゃあ、モウ…………」
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(……ねぇ、⬛︎⬛︎⬛︎?』
「……………」
沈黙の中、初めて??を呼ばれて驚きのあまり…………目を瞑った。
【………………」
俺がそう聞くと、俯いたままのフ⬛︎?? は と遊ばせながら、遠慮気味に質問をし た !
「 ゃ 魔法、できて▲?〉
「………………】
…… ……?
「…………閉じたい。」
「……そう、かな……??」
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ー ーーー ーー ーー ー
「…………ラナ。」
「……ぁ……い や だ ぁ…………
そのまま、さけて欲しかった
いや…………ずっと ょ… …いっしょにぃ… … …い!?、………◆◆、くん……?
歪む。
(………………一緒に、生きたかった。)
ー ーーー ー ー
ーー ー ー ー
「…………………」
「…………『ラナ』って、呼びたい。」
「…………………」
「………………でも、きっと怯えられる。」
「…………………」
あの村が、好きだった。夢が、忘れさせてくれないんだ。
「 」
ー ー ー
ー ー ー
「…………分からないのか? 確かに俺とお前は似ている、馬鹿なところもクズなところもそっくりだ。自分より弱い人間を馬鹿にして見下して、何も見ようとしない…………『見る必要がない』と思ってしまうからな。」
お前の言う通りだ。現実を乗り越えようとするフリをして、俺は何も考えなかった。見ようとしなかった。
「でもな、理解できないんだろ? この世に “安心” も “安寧” も “平和” も無いんだって。見て見ないふりもできない、『想う心』ってやつを。」
何度も、色んな人を傷つけた。悪人も善人も……優しい人も。知らなかったんだ。
「逃げるなよ、ウルス。いつかは選ばなければいけない……そして、現実を知ることになる。その現実に泣きたくなっても、恋しくても…………目を逸らすなよ。」
…………………逸らしたい。
ー
ー
「……………………」
………………こ、こ……は?
(………暗い………いや、違う………黒い?)
体は……動かない、けど確かにあるし見える。手を開く感覚も、擦れる服の感触もある。
しかし、どれだけ力を入れても縛られるような痛みは消えない。まるで鎖にでも括り付けられているようだ。
「……白い……柱………? どこだ、この場所……?」
後ろを見ると感覚通り、俺は白い柱に何かで縛り付けられていた。また徐々に慣れてきたのか、視界が少し明けてきたが…………見えるのは、だだっ広いワインレッドの空間だけだった。
(何もない……人気も生き物の気配もない。風も温度も明暗も、何も感じない……あるのは、俺と柱と縛り付ける何か。)
自分でこんなことは……流石にしない。だとすれば誰がこんなこと…………いや、それより俺は…何か忘れて………
『………………守れ、ウルス。』
「…………っ!! 仮面は、アーストは……みんなはっ!!?」
そうだ。武闘祭の次の日、俺たちは集められ最後に到着したミルがアーストによって攻撃された。それに怒りが抑えられなかった俺はアーストを叩きつけたところ、赤仮面によってみんなに魔力暴走をぶつけようとした。
それを阻止しようと俺はすかさずアーストに接近し、奴を自身の魔力防壁内に取り込み、結果俺だけが攻撃を受け……倒れてしまった。
(そして、赤仮面に立ち向かおうとするみんなを……守るため………鬼神化を発動した。)
鬼神化を使った時……俺の怒りは底の底から溢れて、止められなかった。
ミルを傷つけたこと、人の心を弄んだこと、罪のない人を傷つけようとしたこと……ラナを殺そうとしたこと。溢れて、溢れて抑えられなかった。
(……でも、ミルの声で………俺は………)
あの声がなかったら……俺はみんなの前で、人を殺していた。あのゴミ野郎の首を……グチャグチャにしていた。
惨たらしく……跡形もなく。
「…………何が、したかったんだ……俺は。」
……殺して、何か変わったのか? あのまま赤仮面を惨殺して……何が残ったんだ。
誰が望むんだ。死んだら終わりだって…………己以外に誰が知ってるんだ。
(……なさけない……自分が一番…………知ってたのに…………)
赤仮面は、正直死んでほしい……殺したいほど、憎い。人を貶め、今までにもたくさん人を殺したことがあるのだろう。
そういった人間は、誰かに殺されても仕方ないと思う。それくらいのことをしたのに何の報いもないのは、あまりも不条理で理不尽だから。
(でも…………それを肯定するのは……してしまえば……何かが、壊れてしまう。)
表現……できない。取り留めがなくて、具体的な物も無くて、本当に感覚的な……でも、絶対に無くしてはいけない心。
もし、それを捨ててしまえば……………もう…………
〔…………君は、本当に執念深いね。これが人の世を二度渡る者の思い……ってね、ウケる。〕
(………………っ!!?)
刹那、そんな小馬鹿にしたような声? が頭に響く。それは男か女か判別できないような中性的な音であり……また、どこから聞こえてくるのか全く判別できなかった。
「だ、誰だ………どこにいる。」
〔……あぁ、ムダムダ。わたしはこの場所にいないからね、謂わゆるテレパシーってやつさ…………まあ厳密に言えば違うんだけど、分かりやすいでしょ?〕
(テレパシー……? そんな魔法、和神流や洋神流にあった………)
〔いやいや、これはわたしのオリジナルさ。魔法とも違う………力? ってところか。〕
………心が……読まれてる?
「……何者だ、俺をここに縛りつけたのはお前か?」
〔うーん、そうとも言えるしそうじゃないとも言える。何せ完璧にできなかったからね、君のせいで。この世界最強というのは厄介で困るこまる。〕
「…………何の話だ、とっととコレを外せ。俺は今こんなことをしてる場合じゃ………!」
〔まあまあ、どうせ君は今動けやしない……だって、眠ってるからね。〕
(…………………眠ってる、だと?)
俺が心でそう呟くと、こいつはイヒッと不気味に笑った。
〔そうそう、君はあの時にやられて3日間ずっと寝たきりだ。さすがに体が……いや、心がボロボロで起きられないってところかね? いやまあ、わたしのせいでもあるだがね!〕
「…………煽ってんのか?」
〔ご名答! 君には散々手を拱られたからね、ちょっとした腹いせさっ。〕
「……何の話だ。」
〔こっちの話さ、世の中には知らない方がいいってこともあるんだ…………転生者よ。〕
………………………しってる、のか?
〔オウとも! わたしに見通せない物は存在しない、文字通りにね!〕
「……………ナニモノだ。」
〔……意外とテンション低いね、さっきからそればかり。そんなにわたしが誰か知りたいのか?〕
「………………教えろ。」
〔…………まあいい、といっても君はもう知っているかもな。〕
……口調の定まらない、中身のない言葉。聞いているだけで反吐が出そうだ。
〔そうカリカリするな……ずばり、わたしは絶賛お騒がせ中でもある、さっきも君が戦っていた敵だ。分かるかな?〕
「っ…………神か……!」
〔大正解、わたしは神だ! この世のことは何でも分かっちゃう、全知全能の存在なのさ!!〕
「……よく喋る神様だな、どいつもこいつも饒舌な奴ばかり…………所詮、俺に負ける程度の仮装集団の癖に。」
〔そう言われると痛いねぇ、実際君相手じゃ流石のわたしもそう簡単に手を下せない……強くなりすぎなんだよ、ったく。〕
神? の奴はそう悪態を吐く。どうやらこんな芸当ができる奴でも俺の力には到底敵わないようだ。
〔おいおい、自惚れるな。確かに簡単には手を出さないが、ちゃんと苦労を掛ければどうとでもできるものさ。〕
「……何が言いたい、俺に何をした。」
〔『何』って……今まで何の疑問も浮かばなかったのか? これ見よがしに何度も君は認識していただろ? もしかしてセットだと思っていたとか? 思ったより抜けてるなぁ。〕
『セット』……? こいつは一体、何の話を………
〔くくっ、まあ無理もないか。あのシーンであの称号が付いたら、
【 運 命 】感 じ る っ て も ん だ 。〕
『……僕の知らない称号が【二】つも付いている。しかも、その内【一】つは詳細が 全然 分からない。』
「…………運命の……束縛者……?」
〔おっ、ピンと来たね。そうさ、その称号はわたしが君に贈った物だ。中々皮肉の効いたネーミングになってるだろう?〕
「……何が皮に………く…………………………………」
『お父さん、今日から魔法を教えてくれる約束してたよね。早速教えて!』
『そりゃもちろん、俺は大人だからな。でもウルスも鍛えれば俺より強くなれるかもしれないぞ!』
『魔法!? いいなぁ〜私にも教えてよおじさん!』
『……うん、風の魔法を覚えたい! 教えてお父さんっ!!』
…………お前が
『な、なんだ……これ……!!?』
『う、うわぁっ……来るなっ!!』
『………どうやら “ 盗賊 ” が魔物を引き連れて襲って来たんだ……ウルス、お前は逃げてくれ。』
…………あ の 刻
『…………やるしか、ない!』
『っ、しまっ……ぐぁぁっ!!?』
『ご、めん………お父さん、僕……ぼく、は……………』
……………あ の 日
『努力は、頑張ってる人を絶対に裏切らないの。だからウルスもいつか、必ずお父さんの魔法ができるようになる……ウルスが諦めない限りは、必ずね。』
『はっはっ、相変わらず元気だなウルスは!!』
『お母さ、ん………お、とう……さぁ………』
…………そ う だ っ た ん だ
『い……家、が…………』
『お父さん………お父さんの字だぁ……!!』
『………嘘、だ……』
な ん で ?
〔……振り返りコーナーは終わりかい? だったらもう察しがついてると思うけど…………あの事件の犯人はわたしたちだ。〕
─────────────。
〔…………クハぁっ!! 何だいその顔はぁ!!? 何か言いたいならその口で喋ってくれないか、なぁ!?〕
「 」
〔だってさぁ、君もおかしいと思っただろ!? ただの盗賊さんが魔物を操っているわけがないじゃないかっ!! そんなことが楽々できたら世界がとんでもないことになるくらい分からないかなぁ!?〕
「ーーーーーーーー」
〔でもさ、あの時は正直わたしも驚いたよ。まさかただの子供が、あの強化されたゴブリンを倒すだなんて……そこで思いついたんだよ。暇つぶしにあの危機的状況を脱せた、君というイレギュラーな人間を観察したいと……ね。〕
「............................」
〔そこで登場、『運命の束縛者』! 様々なショックで脆くなった君の体と心につけ入り、称号を与えた。この称号には色々と効果があるんだが、その1つとして称号所有者の状況を客観的に観察することができるってやつ。便利だよねぇ〜〕
「…………………」
〔……そろそろ何か言ったらどうだい? 1人で喋ってたらこちらも寂しい、何のために君をここまで引っ張ってきたと思ってんの?〕
……………………。
「…………ちょうど、いい。」
〔…………丁度?〕
「…………要は……お前ら、俺の両親の……村の仇ってことなんだろ?」
〔まあ、そうなるね。〕
「…………なら、丁度良かった。」
……今まで、仮面を追う明確な理由が俺にはなかった。ただ人に迷惑をかけているから、傷つけようとしているからと、どこか他人事のようになっていた。
けど、これではっきりした。
「テメェら全員……奈落に叩き落としてやる。たとえ地を這おうが……何ど死のうが殺されようが、必ず…………かならず、生き地獄を味合わせてやる。」
〔………………生き地獄、ね。さすが転生者様だ、生きることの方が辛いことをよく理解いらっしゃる……説得力が違うなっ!!〕
「糞餓鬼が……生まれてきたこと、後悔させてやるッ!!」
全身をナイフで刺すような怒りが……
頭を大槌で跡形も無く潰されたような憤りが………
肺に毒ガスを吸わされたような忿懣が…………
心臓を齧られたような瞋恚が……………
何もかもが、止まらない。
「さっさと面を見せろ……神様共。ただの子供にすらまともに戦えない、弱者が…………そんな塵の集まりに人をどうこうできるとでも思ってんのか?」
〔…………………〕
「言えよ、ほら。精々こんな精神世界でしか粋がれないんだろ? それも自分が有利な状態で…………結局、下衆は人も神も変わらないって証明だよな、なぁ!?」
〔………………〕
「なぁっ……何なんだよお前たちはっ!? なんでお前たちみたいな奴らなんかに、どいつもこいつも苦しまないといけないんだ!!? 俺たちが悪いことでもしたのか!!??」
〔………………〕
「何故村の人たちは死ぬ必要があったんだっ!!??? なんでラナを泣かせるんだッ!!!??? なんでミルが独りにさせたんだァッ!!?!? どうしてフィーリィアがあんな淋しく過ごさなきゃいけないんだァよッっ!?!?!!」
身体が、無意識に暴れ始めるが…………縛りは解けない。
「黙るな、答えろよッ!!!! 何の理由があって僕のお父さんは殺されたんダァぁッ!? 意味わかんねぇよっ!!!!」
〔さぁ、知らね。〕
…………………は?
〔そんな捲し立てられてもさ、わたしは君の質問を素直に答えるほど馬鹿じゃないんだよ。何でもかんでも教えたら……ほら…………つまんないじゃん。〕
「…………なに……いって…………」
〔……にしてもちょっと驚いたよ! 君はどこか冷めてる節があると思ってたけど、やっぱ仲間思いのいい奴じゃん!! いやぁ実は心配だったんだよ……心情はともかく、いつも冷静ぶってて、いざ怒ったと思ったら毎回まいかい相手を諭すようなことばっかり…………童謡の登場人物でも、もうちょっと感情的だって。〕
「………ふざ……け、てんのか……!?」
〔うん、巫山戯てる。だって約10年、やっとこさチャンスが舞い降りてきたんだ……少しくらい、揶揄ってもいいじゃないか。〕
……揶揄、い………………理解が、できない。
〔それが『敵』ってものさ。理解できないから戦う……正義とか悪とか、正しいとか間違ってるからとか、そんな理由で争う生物はこの世にいない。もしかしたら『都合が良い』なんて理由も、解らない恐怖から逃げている証拠なのかもね?〕
「……………狂って、る………お前は………」
〔……さて、話もまとまったことで。ここからが本題なんだよなぁ……色々と寄り道しちゃったし、単刀直入に言ってあげる。今回君たちを襲った理由でもあるんだけど…………さっき言ったよね、『運命の束縛者』には色んな効果があるって。覚えてる?〕
…………こいつは……なんなんだ………?
「ぐぅっ………がぁっ……!?」
〔おい、ちゃんと聞きな? これから話すことは今までの話の数億倍は大切なことだぜ? お前にとっても、わたしにとっても。〕
突然、俺を縛る何かが強まり、堪らず声が漏れてしまう。
「くそっ………野郎…………!!」
〔はいはい、わたしはくそ野郎です……で、だ。その称号の効果は対象の観察以外にも呪ったり縛ったりすることができる。君がさっきの戦いで見せたようにな。〕
(さっき……? そんな物、使った覚えは…………)
〔いーや、使ってた……でも、普通はこの称号はかけた奴しか効果を発動させることができないんだよ。なのに君はそれを意思の力だけで強制発動していた……さすがのわたしもびっくりしたわ!〕
「……だからいつ、俺がそんなことを………」
〔まあわたしもずっと君を観測しているわけじゃないからね、細かいことまでは知らないけど…………ほら、【呪え】ってやつ。心当たりあるだろ?〕
「…………!!」
……まさか……じゃあ、あの時夢の中のような何かで現れたアレは…………俺が、自分に何かをかけたということなのか? だが一体何を…………
〔夢の話はわたしも見てないからしらん、大方自分の意思に何か縛ったとか……そんなもんじゃない? けど肝心なのは……あの時、完全に君は魔力暴走で死にかけていた。全身中までボロボロ、暴走の影響で魔力バランスもバラバラ……あの状態から神界魔法、しかも鬼神化発動だなんて普通はムリムリ。いくら君の意思自体が強かろうが精神論でどうにかなるシーンじゃなかったからな。〕
「…………それと称号になんの関係が……」
〔さっき言ったじゃん、運命の束縛者は縛ったり呪ったりできるって。死にかけた君は意思の力で称号を無意識に発動、そして自分を呪って強制的に鬼神化発動させ、再び立ち上がった…………かっこいいねぇ? まるで物語の主人公・ヒーローじゃねぇか!〕
こいつは……本当に………何なんだ………? 俺に何を……何を求めてるんだ………??
〔さっきから『何なに』うるさいなぁ……そんなに全部理解したいの? 知ったところで理解しようとしないくせにね……まぁ、それが人間って奴だ。優先順位をいつも履き違えて…………結果、面倒ごとを引き起こす。〕
「…………………お前に、何が分かんだよ。」
〔分かるわかる、少なくとも君よりは。これでも人を見る目は誰よりもあると自負してる。そして君は…………1番、生きてほしくないタイプの人間。だからさ…………………〕
そう言って、不意にこいつは言葉を止める。その沈黙は…………今日まで感じた、誰とも違う空気だった。
喜び…………悲しみ………怒り……迷い…不安。
(…………違う。)
高鳴り…焦り……鬱………恐怖…………不快。
(……………分からない……)
…………いや、嘘なんだ。1番知っている『モノ』だ。けど………でも…………………
〔……倒れた君の隙をついて、ある【呪い】をかけた。本当なら 今 す ぐ にでも…………っていきたかったけど、無理だったよ。いやぁ勘弁してくれって、どこまで手強いんだよ君は……怖すぎる。〕
(…………違う………ちがうだろ、『コレ』は…………)
〔ん? ……ああ、ある意味そういうことかもね。うん、君の感じてる感情は間違ってない、正しいよ。〕
(なんで………なんで…………)
〔もう、そんなに聞きたいのか? じゃあ教えてあげる、君は……次の春頃には………………
………………死ぬんだよ、“ 孤独 " にねっ!〕




