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第806話 『海軍の拡大とシーレーン』

 文禄三年十月十七日(1594/11/28) 諫早城


 石炭ストーブで暖を取る面々を前に、コーヒーを飲みつつ談笑し、一息ついたところで直茂が発言した。

 

「さて方々。こたびは先の陸軍再編の如く、海軍の再編について議を進めたく存ずる。まずはこれまでの働きと急務の課題について、海軍大臣より報せていただきたい」


 直茂の発言を受けて海軍大臣の長崎純景が続く。


「は。まずは様々な題目よりもっとも急ぎ、かつ重きをなす儀にございますが、朝鮮沿岸部ならびに渤海(ぼっかい)、そして黄海全域を管轄する艦隊。加えて新大陸の西岸ならびに南太平洋をイスパニアより(いまし)むる(警戒する)為の艦隊を新しく設ける儀にございます」





 万座が静まりかえった。


「一度に二つの艦隊にございますか……」


 誰かは不明だが、そう言った声が聞こえたのか聞こえないのか、同席していた深沢勝行が発言する。


「わが小佐々家は海賊の末裔(まつえい)であり、この日ノ本は島国なるぞ。方々、いわんとする事はおわかりであろう?」


 勝行には威圧するつもりは全くない。が、その一言でざわつきが収まったのは事実である。


「銭は、問題なかろう? 財務大臣」


「は。それにつきましては問題ありませぬ」


「うむ。では純景よ、聞こう。本当に二個艦隊が要るのか? 既存の艦隊で賄えぬのか? 要るのならば作らねばならぬが、足りるのならば()いてつくらぬともよかろう。いかがだ?」


 純景は深く息を吸い、ゆっくりと答えた。


「はい殿下。二個艦隊の新設は必要不可欠でございます。現状の艦隊編制では、以下の理由から対応が困難となっております」


 



 ※新艦隊設置の必要性※


 1.朝鮮沿岸部・渤海・黄海艦隊


 現在の第1艦隊は東シナ海北部から朝鮮海峡までを管轄しているが、渤海や黄海全域まで守備範囲を広げるには戦力不足であり、朝鮮半島周辺の情勢変化に迅速に対応するためには専門の艦隊が必要である。


 2.新大陸西岸・太平洋艦隊


 イスパニアの脅威に対抗するには現在の第6艦隊(南遣第1)や第7艦隊(南遣第2)では不十分であり、広大な太平洋を監視し、新大陸西岸まで展開するには新たな艦隊の編制が不可欠である。


 既存艦隊はそれぞれの担当海域が明確に定められており、現状でも広大な地域であり、これ以上の拡大は困難。新たな海域の管理に既存の艦隊を転用すれば、現在の防衛体制に穴が生じてしまう。





「つきましては朝鮮沿岸部・渤海・黄海全域を管轄する第十二艦隊、および新大陸西岸・太平洋を警備する第十三艦隊を新たに設けることを提案いたします」


 純正は純景の説明を聞き、しばらく考え込んだ後にゆっくりとうなずいた。


「あい分かった。では、その艦隊を統べる鎮守府は何処(いずこ)におくのだ?」


「はい。鎮守府については、第十二艦隊は天津、第十三艦隊はハワイが最も適していると考えます」


 純景は純正の質問に対して明確に答え、その理由を簡単に示した。



 


 ・天津は渤海と黄海の結節点に位置し、両海域を効果的に管理できること。貿易港として栄えており、軍港への転用が容易であること。


 ・ハワイは太平洋の中心に位置し、新大陸西岸と南北太平洋の両方の管轄が可能。真珠湾を中心に優れた港湾施設を建設できる上に、新大陸までの航海の中継地点として最適。





「以上が彼の地を鎮守府に推す由(理由)にございます。鎮守府を設けることで、新しき艦隊をもっとも甲斐(かい)良く(効果的に)用いること能いまする。もってわが国の海の備えを大幅に強められると考えております」


「然れど、そうなるとあまりにも遠き地ゆえ、そこまでの補給の地も要ろう?」


「は。そのためにミクロネシア・メラネシア・ポリネシアの島々に警備府を置き、足溜り(拠点・補給路)といたします」


 純景は眼前に太平洋の地図を広げ、的確に鎮守府と補給路となるべき警備府候補の島々の場所を示した。


「ミクロネシア方面ではトラックに警備府を。メラネシア方面ではニューアイルランドに警備府を。そしてポリネシア方面では、サモアとキリバスに警備府を置くことで、ハワイまでの足溜りを確保し、さらに西岸方面への足溜りとする計画でございます」


 地図上には、点々と赤い印が付けられていく。西太平洋に広がるミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの島々を結ぶ赤い点々は、まるで巨大な蜘蛛の巣のようだった。


「これらの島々には、小さき修理船渠(せんきょ)を設けます。これにより長距離航海をなす艦船への補給や修繕が能い、いざ戦となった際には艦隊の足溜りとして使うこと能いまする」


「うむ。然れどこれらの島々を警備府とするには、先住民との交渉や島々の開発が要るであろう。その点については如何(いかが)なのじゃ?」


 純正の鋭い指摘に、純景は自信に満ちた表情で答えた。


「はっ、殿下。先住の民とは交易を基とした友誼(ゆうぎ)を結び、互いを知ることで、滑らかなる開発を進める所存にございます。既にいくつかの島々において交易を開始し、良好なる関係を築きつつあります。また、開発に関しましては、国内の商人たちをあえて(積極的に)その地に進出させ、開発を進めることで利を得ることも叶いましょう」


「うべな(なるほど)」


 純正は感心したようにうなずいた。


「さらにこれらの警備府は先には(将来的には)通商航路の足溜り(拠点)としても機能させる企てにて、イスパニアが如何あいなるか知らねど、新しき地と交易をなすとなれば、おおいに役に立ちましょう」


 実際のところ新大陸にはヌエバ・エスパーニャがあり、その立場はイスパニアの副王である。フェリペ2世に任じられてその地を治めている以上、肥前国と交易することなどあり得ない。


 もし純正が新大陸交易に乗り出すならば、それはイスパニアの全面降伏を意味するか、もしくはヌエバ・エスパーニャの反乱しか考えられないのだ。





「あい分かった。皆、反対はないか? ないのであればこの儀は以上といたす」





 次回予告 第807話 『イスパニア・ポルトガル・イングランド・オランダ』

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