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第750話 『フレデリックの立場と仕事』

 天正十八年二月二七日(1589/4/12) リスボン 王宮


 1か月に及ぶ協議の末、肥前国とポルトガルとの間に条約が結ばれた。


 肥前国ポルトガル王国相互防衛条約


 肥前国とポルトガル王国は、両国の安全保障を強化し、相互の防衛協力を確立するため、以下の相互防衛条約を締結する。


 第1条(相互防衛の誓約)


 締約国は、アジア太平洋地域、北極圏、印度洋、アフリカ、大西洋、および南米における平和と安定の維持に共同で取り組み、互いの領土保全と政治的独立を尊重することを誓約する。


 第2条(軍事協力)


 1. 締約国は、第三国からの武力攻撃に対し、個別的または集団的自衛の固有の権利を行使して、軍事的支援を行う。


 2. この軍事協力は、以下の地域において有効とする


 ・アジア太平洋地域

 ・北極圏

 ・印度洋

 ・アフリカ

 ・大西洋

 ・南米


 第3条(海上防衛協力)


 1. ポルトガル船の肥前国近海、および肥前国船のポルトガル領(南米を含む)近海での活動を相互に保護するため、両国は海上護衛を提供する。


 2. 両国は、海賊対策や海上交易路の安全確保のため、第2条に規定された全地域において共同巡視活動を行う。


 第4条(相互防衛支援)


 1. 肥前国・ポルトガル王国両国は、相互の領土における拠点の防衛に協力する。これは当該国の拠点外において、第3国が当該国の領土とみなされる地点に新たに拠点を設けようとした場合にも適用される。


 第5条(軍事情報の交換)


 締約国は、第2条第2項における地域において軍事情報を定期的に交換する。


 第6条(軍事技術協力)


 締約国はそれぞれの軍事技術の優れた分野における技術を、必要に応じて提供する。


 第7条(オスマン帝国との軍事的関係)


 1. 締約国は、オスマン帝国の領土に対する積極的な軍事行動(侵攻)を行う場合、相手国に軍事支援を要求しない。


 2. しかし、オスマン帝国によって一方の締約国の船舶や領土が攻撃された場合、他方の締約国は集団的自衛権を発動し、防衛的な軍事支援を提供する。


 3. 集団的自衛権の発動に際しては、以下の手順を踏む


(1)攻撃を受けた国は、直ちに同盟国に通知する。

(2)両国は、事態の評価と対応策について緊急協議を行う。

(3)協議の結果、集団的自衛権の発動が必要と判断された場合、支援の具体的内容と範囲を決定する。

(4)海上における場合、緊急を要する場合はこの限りではない。


 第8条(ムガル帝国とヴィジャヤナガル王国の戦いへの軍事的不介入)


 締約国は、ムガル帝国とヴィジャヤナガル王国の戦いには軍事的に一切関与しないことを確認する。この不介入方針は、直接的な軍事介入および武器供与を含むものとする。


 第9条(その他の地域紛争への対応)


 1. 締約国は、第7条および第8条に規定された特定の紛争を除き、第2条に規定された地域における紛争に対し、以下の原則に基づいて対応する


 ・両国の直接的な利益に関わる紛争の場合、共同で軍事的対応を協議する。

 ・一方の国の利益にのみ関わる紛争の場合、他方は軍事的支援の可能性を検討する。

 ・両国の利益に直接関わらない紛争の場合、原則として軍事的中立の立場を維持する。


 2. 特定の地域紛争への軍事的対応方針について疑義が生じた場合、締約国は速やかに協議を行い、共同の方針を決定する。


 第10条(条約の見直し)本条約は5年ごとに見直しを行い、必要に応じて改訂する。次回の見直しは、肥前国で行うものとする。


 署名地:リスボン

 署名日:天正十八年二月二七日(1589/4/12)


 肥前国王 小佐々平九郎


 ポルトガル王国 セバスティアン1世





 ■オランダ アムステルダム <フレデリック>


 あれから1か月が経ったが、オレの身の回りでは変わった事がない。


 毎日風呂に入り、雨の日以外は布団を干し、服の洗濯をこまめにやってもらう事だったが、風呂に入れば風邪を引く、病気になると言われ、布団や洗濯はなんでそんな事をするのか? と怪しまれた。


 すべてが臭い。香水でごまかしているようだが、耐えられないのだ。食べ物もどういう風に作っているのか厨房(ちゅうぼう)にいって確認したくらいだ。


 まじで、いろんな事に耐えられない!


 現実を受け入れられない。ここが16世紀のオランダなんて、信じられないのだ。


 そしてこの1か月間、自分が何者で、ここに来る前に何をやっていたのか考えた。仕事は外交官、しかも大使だ。駐オランダ日本大使で、任期が延びに延び、いい加減帰国の申請を出していたのだった。


 オランダ独立戦争やオラニエ公の事を詳しく知っていたのも、オランダ語が話せたのもそのせいだ。現代のオランダ語と多少違うので戸惑ったが、人に聞かれた時は記憶障害っぽい、という理由で押し通した。


 どうやら転生したらしいが、なんで転生したのか? どうやって転生したのかなんて、皆目見当がつかない。とりあえずは異世界放り投げパターンじゃなくて良かった。貴族の家なら多少のワガママは許されるだろう。


 と言う事で、オレは現在(1589年)のオランダの状況を聞きまくって状況の把握に努めた。


 ・ネーデルランド17州が統合してネーデルランド連邦共和国として存在。

 ・カトリックとプロテスタントの対立はあれど、お互いに親和政策をとって共存している。

 ・南部の産業とくに織物業と北部の貿易が統一されて経済が発展中。

 ・フランスでアンリ4世が即位し、スペインに宣戦布告。そのため対スペイン戦線が有利に。

 ・オランダ語、フランス語、ドイツ語が公用語に。





「うーん、よくわからんが、いちおうオランダ的にはいい感じの国威なのかな? けっこう領土も広いし……ん? ちょっとまて! 17州だって?」


 おかしい! オランダの州は南北ホラント・ゼーラント・ユトレヒト……全部で12のはずだ。17って何だ? それに親和政策? アンリ4世が即位? なんかおかしいぞ。


 まて、兄上に聞いてみよう!


「ヤン! ヤンはどこだ! ?」


「はいフレデリック様、ここに」


「ヤン! 兄上は今どこに?」


「公爵様はいま出発の準備で書斎にいらっしゃいます」


「出発ってどこかに出かけるの?」


 ヤンは物腰柔らかく、丁寧に答えてくれた。


「連邦共和国会議のためにブラバント公国のアントウェルペンへ出発いたします」


「え? アントウェルペンだって? (……日本ではなじみがないが、アントワープのオランダ語発音だ)」


 確信した。オレが知ってるオランダじゃない。知っている16世紀のオランダじゃない。





「兄上! 兄上!」


 オレは兄貴の書斎のドアをドンドンと勢いよく叩く。


「フレデリック、どうした? そんなに慌てて」

 

 ドアが開き、兄貴が顔を出した。いつもの冷静沈着な表情だ。


「兄上、ちょっと聞きたいことがあるんだ。今のオランダの状況について」


 兄貴は変な顔をした。

 

「お前、また記憶が飛んでいるのか? もう一度医者に診てもらったほうがいいぞ」


「いや、そうじゃなくて…… 確認したいんだ。17州って本当? それに、カトリックとプロテスタントが共存してるって?」


 兄貴はため息をついた。


「フレデリック、お前本当に大丈夫か? そりゃあ、17州が統合してネーデルラント連邦共和国になったのは周知の事実だ。カトリックとプロテスタントの共存政策も、お前は積極的に支持していたじゃないか」


 オレは混乱した。これは明らかに自分の知っているオランダとは違う。


「それで、アンリ4世がスペインに宣戦布告したって本当?」


「ああ、そうだ。フランスとの同盟は我々にとって有利に働いている。お前、本当に何も覚えていないのか?」


 まじか……こりゃあ単なる転生じゃない。


 どうやらパラレルワールドみたいなところに来てしまったらしい。もっと話がややこしい。いよいよ戻れないかもしれない。いや、ただの転生でもタイムスリップでも……戻れる保障なんてないが。


「兄上、ごめんなさい。少し頭が混乱してて……」


「お前、無理するなよ。アントウェルペンへの出発は延期してもいいんだ」


 兄貴は心配そうな顔でオレを見た。


「はい、大丈夫です。それより兄上、お願いがあるのですが……留守の間、ヤンや副官(総督補佐)の方々に政治のことを教えていただいてもよろしいでしょうか?」


 兄貴は目を丸くした。


「お前が政治? 珍しいな。いつもは全然興味なかったじゃないか」


「はい……色々と考えることがありまして。この国のこと、もっと深く知りたいと思ったんです」


 兄貴は不思議そうな顔をしたが、すぐに微笑んだ。


「そうか。その好奇心は大切にしろよ。ヤンたちには基本的なことから教えるように言っておこう」


「ありがとうございます、兄上」


「ただし、無理はするなよ。お前はまだ6歳なんだ。遊ぶ時間も大切にしろ」


「はい、わかっております。ご心配なく」





 オレはまず、さらなる現状の確認と、戻れないなら快適な生活を目指すために、できる事をやろうと決めたのだった。





 次回 751話 (仮)『6歳の子供にできる事とできないこと。肥前国と大日本国』

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