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彼杵村の耐火粘土と朝鮮人技師

永禄九年 七月 金石城 日高喜


俺は外務省の役目で対馬にいる。海を渡ったのは初めてだ。今までは親父の日高資と伊万里や唐津、佐賀など九州本土ばかりだった。今回は初めての一人仕事。相手は対馬国の国主で、壱岐国も併合した宗讃岐守義調様。


わが殿が従四位下弾正大弼で、讃岐守様が従五位下刑部少輔。ぶっちゃけ官位と官職名、面倒くさい。これだと二つ違いの差。一応、わが殿の方が上だから、多少はましなんだけど、それでも自分と比べれば、やはり緊張する。


今回の目的は、朝鮮の陶器?窯?の職人・技師を招聘するために、讃岐守様に間に入っていただく事だ。対馬は昔から朝鮮との関わりが深く、宗氏は米の取れぬ対馬で生き抜くために、朝鮮との交易で収益を得ていた。


この日の本で朝鮮との交易を考えた際には、宗氏なくしては考えられないのだ。


なんでもわが殿いわく、耐火粘土とやらを彼杵の彼杵村、川棚あたりでみつけたらしい。俺は仕事ではないからよくは知らない。だが工部省の人間が一年半かけて領内をくまなく探して、実際にどの粘土がどれほど度熱に強いか調べたらしい。


唐津、伊万里、有田、波佐見、三川内・・・考えうるところ全部探してやっと見つけた!と騒いでいた。・・・彼杵村。


そこでとった粘土が一番高温に耐える粘土のようだ。その耐火粘土で窯を作って耐火粘土を材料にした耐火レンガをつくる?なんかなぞなぞみたいだな。


しかし、そこは俺の仕事ではない。


「お初に御意を得まする日高左衛門少尉喜にござりまする。讃岐守様におかれましては・・・。」

やっと覚えた口上を述べていると、


「ああ、よいよい。弾正大弼殿はこういう形式張った事は嫌いであろう?わしもあまり好きではないのじゃ。できればやりとうないし言いとうない。」


「ありがたき幸せにございまする。しからばこたびは、お願いの儀これあり、罷り越しました。」


「ふむ、朝鮮との事か?」


「え!?なぜそれを!」


「ふふ、左衛門少尉どの、外交とはすべからく、ない物を与えあい、お互いに欲しい物を補いあうものだ。」


「わしが持っていて弾正大弼どのが持っていない物とはなんだ?銭は掃いて捨てるほど持っておろう?兵も十分養えるし水軍もしかり。鉄砲矢玉、大砲まで十分揃えておる。加えて南蛮からの珍しい品々に、日の本の物は全て小佐々にあり、と言っても過言ではなかろう。」


讃岐守様は笑っているが真剣だ。


「そこで、だ。わしが考えるに、対馬が長年培ってきた朝鮮との信頼関係ではないかと思ったのだ。」


「国と国との信頼関係とは一朝一夕には築く事はできぬ。ましてや異国ならなおさらだ。」


「どうだ?当っておるであろう?」

子供みたいに笑う。


「はは、讃岐守様のご慧眼恐れ入りましてございます。されば、朝鮮の陶工技師をわが国に招きとうございます。お力添えいだけますでしょうか?」

思い切って切り出してみた。


「ふむ。で、何をくれるのだ?」

「されば、どの様な物をお望みでしょうか?」


讃岐守様は腕を組んで目をつむり、考えている。


「では・・・せっけんの作り方を教えてくれぬか。」

「石けん、にございますか。・・・さすがにそれはわが国の産物に秘密にて、それがしの独断で決める事はできかねます。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

沈黙が続く。


「そうか、弾正大弼殿の使いだと聞いて期待しておったが、存外、外れじゃったのう。利三郎どのや大和守どのならば即決であったろうに。子は親をこえぬのだなあ・・・・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小佐々城


「馬鹿者!それで乗せられて『はいわかりました』と二つ返事で帰ってきたのか!!この愚か者が!せっけん製造はわが国の秘中の秘ぞ!いかな盟のある国とは言え、殿のお許しもなく承知するとは!殿!まことに申し訳ございませぬ!」

親父は怒り心頭だ。


「よいよい。材料と作り方と申したのであろう?教えてやればよい。()()()()()()()()()()をな。灰と油と仕掛けと、分量さえわかれば誰でもつくれる。問題はその先だ。」


「どの油を使えばどの様な違いがでるか?どれをいかほどつくって、どこで、いかほどの値で売れば、どれほど儲かるのか?何が一番良いのか。われらも最初からわかっていた訳では無い。」


「そこら辺は道喜と殖産方の忠右衛門が、苦労に苦労を重ねて見つけ出したものだ。それはやすやすとは教えられん。言わばそれが肝だ。讃岐守どのには悪いが、石けんの製造と販売は、われらに一日の長がある。用途によって四種類の石けんを売っておるのだ。価格も材料も違う。朝鮮との信頼が一朝一夕には出来ぬ様に、われらの技術や知識、経験も簡単には教える事能わぬのだから。」


殿は真面目な顔でそう言い、後は笑いながら交渉の詳細を聞いていた。

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