小城郡の千葉胤連と神埼郡の江上武種
同年 二月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
年始のあいさつに、いや、もう二月だから年始のあいさつでもないか。
小城郡の千葉胤連と神埼郡の江上武種が来た。ようやく決心がついたのだろうか?遅いよ。最後まで口裏をあわせるために、二人でヒソヒソ話している。
俺が上座に座るといそいそと平伏した。
「遠路、大儀であった。面をあげよ。」
ははあ、と言いながら顔をあげる。二人とも降ったとはいえ、長年龍造寺隆信とやりあってきただけの事はある。
しかし威風堂々とはしてはいるが、どことなく狡猾さが見て取れた。俺の一挙手一投足から、何かを盗み出し、交渉の材料にしようとでもいうのだろうか。
「それで、こたびは何用じゃ。」
分かりきった事を聞く。話は決まっている。帰属を願い出る上での条件の交渉だ。あいにく、条件なんて聞く気はないんだよね。共謀して反乱起こされたらたまらないから、『俺は別にどっちでもいいよ』オーラを全面に出す。
「されば、われら弾正大弼様の配下に加わりたく、罷り越しましてございます。」
「なるほど。よいぞ。」
「はは!有難き幸せに存じます!」(あれ?)
「それで、どうするのだ?」
テンプレートな返しをする。
「は、どう、と言われますと?」
「だから、その方らは帰属を認めるかわりに何を俺にくれるのか、と聞いておる。」
二人は顔を見合わせながら、
「そ、それは今後変わりない忠義をもって・・・・。」
「は!ははははは!あーっはっはっはっは~!いや、悪い。何だって?おいおい、俺は夢でも見ているのか?」
「愚かな事を申すな。お主ら二人、昨年の十一月に、俺と戦ったのをもう忘れたのか?お主らの忠義とはなんだ?少し形勢が悪くなった程度で、簡単に主君を裏切るのか?俺はそんな家臣を抱える様な博打はできんぞ。」
二人は、呆気にとられている。
そういえばこのくだり、前にもあったな。ああ、針尾三郎左衛門の時か。思い出したくもない。なんでみんな信頼はタダで手に入れられるって勘違いしてるのかな。大間違いだよ。
「されば一体どうすれば?」
「そのようなこと、考えればわかるであろう。」
「・・・人質、でございますか?」
「(いや、あのさあ)親兄弟で争っているのに、人質など意味があるか?まあ、その気持はわからんでもないが。」
「では、所領でしょうか。」
「やっと話が通じたな。」
「ああ、それから波多は降ったぞ。かろうじて家は保ってはいるが、独力ではなにもできぬ。」
「されば、すぐには決めかねまする。家臣とも協議して決めたいかと存じます。」
「わかった。しかし長くは待たんぞ。俺はどっちでもいいのだからな。最初に攻めてきたのはそっちだ。反撃しても誰も悪くは言わん。」
二人は顔面蒼白気味に帰っていった。さあ、どんな結論をもってくるかな。




