表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/827

塩田津の湊を制すものは肥前を制す

龍造寺陣中 鍋島直茂


「殿、策がございます。」

「なんだ?」

また、酒を飲んでおられる。


「殿、陣中にござる。酒はお控えくだされ。」

「何を申すか直茂、ゆるりゆるり、と申したのはそなたではないか。それにこの戦、どうまかり間違っても負けはせぬ。そうも申したぞ。」


「そうは申しておりませぬ。焦る必要はない、という事です。それと、戦に絶対はありませぬが、絶対に近づけるよう、いくつもの策を練っている、と言ったまでの事。油断はなりませぬ。」


「わかったわかった。それでどうした?」

赤ら顔で殿が私に尋ねる。


「は、策が全てはまりましたゆえ、そろそろかと。」

うむ、と殿はうなずく。


「まず大前提として、兵力はわが方が有利ですが、地の利は敵にあります。これを覆すには敵を移動させる他ありません。」

「敵を山から引きずり下ろし、平地にて決戦するのです。」


「しかし、下りてくるか?」


「普通は下りてこないでしょう。定石として小高い丘の上や山頂に布陣するのは、守りやすく攻めがたいためです。さらにこたびは、われわれが圧倒的な兵力で勝っております。」

「ですから山を下りる時は、下りざるを得ない時か、もしくは下りれば勝機がある場合です。」

「有馬・大村の三方からの西郷包囲、五島宇久の北上に旧平戸の反乱、そして最後は波多の伊万里領侵攻。兵士の士気は下がり、弾正大弼の心中穏やかならぬ事、間違いござらぬ。」


確かにそうだな、という風に殿はうなずく。


「まず、われらは軍を二つにわけ、一隊は私が指揮をいたします。殿は本隊を指揮して本陣にてお待ち下さい。夜陰に乗じて山の裏手より忍び寄り、撹乱してまいります。不意を突かれた敵は防戦一方にて、混乱するのは必定。」


「このままでは負ける、とやぶれかぶれの突撃命令を出し、本陣に向けて山から下り攻めかかってくるでしょう。」


「そこを待ち構えた殿と私で、挟み撃ちにして殲滅いたします。また、様子を見ていた有馬・大村も攻めかかるでしょう。そうなれば、勝ちは間違いござりませぬ。」


「下りて来ぬ場合は?」


「その時はその時です。もともと我軍が有利なのですから、撹乱は失敗として、引き上げるのみ。敵も深追いはせぬでしょう。いや、できませぬ。そしてまた、作戦の練り直しです。いずれにしても長期戦は我らに有利。敵は早期決戦がしたいはずなのです。時間がたてばたつほど、敵は後方から崩れまする。」


「なるほど。わかった。待ちの戦は性に合わんが、致し方あるまい。そちの作戦でいこう。」


「それともう一つ」


「なんじゃ、まだあるのか?」

本陣待機となった隆信は、焦りや不満を隠そうとはしない。


「殿は、敵が山を下り終えるまで、()()()()()()()()()()()()ぞ。山を登って敵と一戦交えようなどと、考えてはいけません。仮に城に火の手が上がったとしても、です。大将はどっしりと構えておいてください。」


「言われんでもわかっておるわ。」

隆信の機嫌がさらに悪くなる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平井経治 陣中


「平井どの、ついにこんな日がきてしまいましたね。」

神代長良は、親である勝利の死後、家督をついですぐに、居城である三瀬城を隆信に落とされている。まさか自分が龍造寺陣営の一員として加わるなど、考えもしなかったのだろう。


「なんじゃ、勝利どののせがれか。」

歴戦の強者である平井経治は言う。


「せがれはやめてくだされ。今は家督もついで、わしが当主なのですから。」

「ははははは。そうであったな。すまぬすまぬ。」


「平井どのはこのいくさ、どうみますか?」

「どう、とは?」

「勝てるかどうか、という事です。」

(長良も勝利どのの血をひいて戦上手だが、やはり気になるのはそこか。)

経治は思った。


「どうもこうも、こちらは一万、有馬の兵を入れれば一万三千。敵は五千。三倍近くの兵力差。普通に考えればこちらの勝ちは疑いようがないのう。」


兵法の定石を、言う。


「普通に考えれば、ですか?」


「左様。戦とはさまざまなものが絡み合って決まるもの。『故に、これをはかるに五事を以ってし、これをくらぶるに、計を以ってして、その情をそとむ。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。』とある。」


「要するに、大義名分と時期、そして地の利と将の器、最後に軍の良し悪しですね。」


「まあ大義名分は(あるわけない)、あれだな、うん。時期は良い。大友の騒乱にあわせておる。地の利は到着が遅かったのでこうなっておるが、絶対的に不利ではない。将の器は、戦ったお主がよくわかっておろう。軍はいわずもがな、だ。」


「大義がなくてもわれらは負けた。今回は、まずいところがあるとすれば、あるとすれば・・・軍の良し悪しであろうか、な。」

わしは続ける。


そうだな、と前置きをおいて、


「わが軍は『一将功成りて万骨枯る』が言い得て妙じゃ。特にわれら外様は目も当てられん。それに、つづく戦で、まさに『苛政は虎よりも猛し』じゃ。何事も、足下をしっかり固めておらぬとな。」


???という顔を長利はしているが、

「長利どの、そなたも本当はわかっている事であろう?何をなすべきか。」


平井経治は静かに微笑みをたたえて黙った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国 武将 転生 タイムスリップ 長崎 チート 無双 歴史 オタク
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ