表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/611

都会に憧れて

「ねえねえ騎士君。同じ上京組仲良くしようよ」


 そう言って、涼子が水の入ったペットボトルを差し出してくる。

 蓋を開けて、中身を一口飲む。


「涼子さん、都民じゃなかったんですか?」


「ミュージシャンに憧れて、ね。上京したんだ。やっぱり都会は違うね。人の数が段違いだ」


「そうですね。初めて上京した時は、僕も若いグループと頻繁にすれ違うので、どこかで祭りでもやっていたのかと思いました」


「あるある~」


 そう言って、涼子は愉快げに笑った。


「音楽、なさるんですか?」


「売れないシンガーソングライターだよ。投稿サイトじゃそこそこ再生数あるんだけどねえ」


「へえ、そりゃ凄いですねえ」


「凄かないよ。売れてないもん」


 そんな雑談をしているうちに、店にたどり着いた。

 中々古風な佇まいの店だ。


 ちょっと古臭くて、大丈夫だろうかと思う。


「こういう店のが美味しいんだよ」


 涼子は何故か自信たっぷりに言う。


「前に入ったことあるんです?」


「んにゃ~?」


 にやりと微笑んで言う。

 なにが楽しいのかわからない。


「騎士君もライブ感を楽しまないと損するぞー」


 楽しみすぎても損する気がするのだがな、と思う。

 店の中に入った。

 常連客らしき人々が数人入っている。

 最低限の味は保証されていそうだ、とほっとする。


 メニューは変わり種もなく、シンプルだった。


「醤油ラーメンチャーシュートッピングで」


「あいよ」


 涼子が早々に注文を頼む。


「じゃあ、僕も同じで」


 ラーメン好きと言うほどでもないのでこだわりはない。


「ああ、ついでにこの子に炒飯と餃子を」


 涼子の言葉に、僕は驚いた。

 結構な額になりそうだ。


「悪いですよ」


「いいんだよ。若い子が遠慮しない」


「涼子さんも若そうですけどね」


「大学、行ってないからねえ。姫君ちゃんとそう大差ないんじゃないかな」


 となると、かなり若い。それで一人暮らししつつ音楽活動をしているとなると、立派なものだ。


「それでさ、話なんだけど」


 目と、目があった。

 どきりとする。

 そして、それ以上に吸い込まれるような気分になった。

 なんだろう、この気分。


 足元がおぼつかなくなるような。


「鬼瓦君はアイスケースをぶん投げるような、常人とは程遠いような腕力の持ち主だったよね」


「ええ」


 その映像は、ニュースで何度も取り上げられている。


「君は、どうやってそれを鎮圧したのかな?」


 涼子の目が、怪しく光った。



続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ