アリエルの家庭
「私の父、ウーテルは天使族の天才児で、傑出した魔力を持っていたにゃ。自然、神族とも交流が多くなり、まあもてたにゃね」
たはは、とアリエルは照れ笑いを浮かべる、
「半神の私は嫉妬もあり、出来が悪かったこともあって苛められたにゃ。それをいつも庇ってくれたのが、成績優秀で絶大な魔力を持つ姉だったにゃ。姉は幼少期からメキメキと才能を発揮し、私はちょっと置いてかれた気分で、だからせめて明るくあろうと思ったにゃ」
雑で明るい性格。
アリエルの人格形成がそんなところから来ていたとは。
俺は目からウロコだった。
「その、聡明で人格も出来た姉がなんで反乱なんかを……?」
俺は核心に踏み込んでいた。
「優秀、過ぎたにゃね」
アリエルは遠くを見るような表情になる。
「姉は神格として認められることを要求していた。実際、その才覚と実力はあった。けど、その野心こそが神格に相応しくないと見られていた。そして、ある日」
アリエルは、言いづらそうにそこで言葉に詰まる。
「私に神格にならないかという話が来たにゃ」
俺は絶句した。
それではまるで、姉妹の仲を裂いているようなものではないか。
「あの時の姉の表情は忘れられないにゃね。話はここまでにゃ。冗談みたいな話にゃろ?」
俺は、アリエルを抱きしめていた。
小さくて細身な体。
こんな体でそんな重荷を背負っていただなんて。
アリエルは、抵抗しなかった。
「お姉さんとの戦いになるかもしれないぞ」
俺は呟くように言う。
「覚悟の上にゃ」
アリエルは、淡々とした口調で言う。
「それよりも、今は決着を」
アリエルの言葉に、俺は頷いた。
アリエルが気持ちを固めているなら、俺が迷う必要はない。
俺はアリエルを離す。そして、涙目になりながらその顔を見つめた。
「ったく、呑気な顔して。重いもん背負ってるのはなんも言ってくれねーんだ」
「同情を買うのは好みじゃないにゃ」
アリエルは苦笑交じりに言う。
「それでこそ、俺の相棒だ」
アリエルは驚いたような表情になったが、緩く微笑んだ。
女神は、アリエルに帰ってこなくて良いと言った。
アリエルの天界の立場はけして良くはないのだろう。
ならば、それを挽回するためにも、戦おう。
そう、俺は決意を新たにした。
続く、




