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初デート リベンジ

「で、どこへ連れて行ってくれるの?」


 先輩が腕を引かれながら言う。

 俺が先輩の腕を引きながら歩いている。

 数ヶ月前の俺に言っても信じないだろうシチュエーションだ。


「ついてからのお楽しみ。穴場だから結構閑散としてるとは思うけど、夏休みだからなあ」


「そうだねえ、今はどこも混んでるか。映画館は人少なかったね」


「午前だったからですかね。今はサブスクとかもあるし」


「なるほどなあ」


 二人して人の多い街を歩く。

 学生の姿が案の定多い。

 スーツ姿のサラリーマンが、その合間に疲れた表情で歩いている。


 どこから悪霊が飛び出してきてもおかしくないな、これは。俺はそんなことを想像してぞっとする。

 いかんいかん。今はデートに集中。


 俺達は公園に入った。

 草場でカップルや家族が休憩している。

 その中をさらに奥に進む。

 動物園のゲートが俺達を出迎えた。


「動物園かぁ」


 先輩が感心したように言う。


「日光の下。開放的。可愛い動物がいっぱい。パーソナルスペースも守れる。ここなら大丈夫でしょ」


「うむうむ。君にしては良いチョイスだ」


 先輩はくくくと笑いながら重々しく頷く。


「苦労かけるねえ」


「その苦労だって、俺の幸せの一欠片ですよ。先輩のためだったら、なんだって厭いません」


「……そっか」


 先輩が急に黙り込んだので様子を見ると、照れたように俯いていた。

 その顔が前を向く。


「行くか!」


「ええ!」


 その後は喧々囂々と言った感じ。

 あれがでかいあれが臭いあれが可愛いあれが綺麗と子どものように騒いで、はしゃいで、デートと言うよりは友達同士のじゃれ合いのような感じだったが、付き合いたての俺達には丁度良かったかもしれない。


 エイミーのことが一瞬脳裏によぎる。しかしそれはほんの一瞬で、すぐに先輩の笑顔に塗りつぶされた。

 先輩は眩しい。

 まるで太陽のようだ。


 そんな彼女を曇らせた貴文を、俺はあらためて憎いと思った。

 あらためて、早く捕まってほしいものだ。


「そんなこと、考えるまでもないよ」


 誰かの声が、俺の脳に直接響いた。

 誰だ?

 必死に周囲を見渡す。

 親子連れ。カップル。赤子連れ。その中ですぐに彼は見つかった。

 まだ高校生ぐらいの若さなのに、ビジュアル系の男。


「貴文なら、俺が始末したから」


「岳志君?」


 先輩が異変を察知して声をかけてくる。

 俺は駆け出すと、ビジュアル系の男の真ん前で決闘のクーポンを起動した。




続く

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