コールドレイン
それはかつての試合。
中学三年最後のトーナメントをかけた試合。
相手は二刀流で県下でも有名な投手。
ここまでその選手のホームランと無失点でこちらは劣勢。
雨が徐々に強くなっていた。
俺まで打順が回れば。
俺は思う。
前回の打席でどんな投手かは大体掴んだ。
次はまともな勝負になるという自信がある。
雨が強くなってくる。
審判が告げた。
「コールドゲーム!」
それは過去の苦い記憶。
冷たい雨が、ネクストバッターズサークルに立つ俺に突き刺さっていた。
そして、場面は現代に移る。
アリエルは頭上に炎のドームを展開した。
もう、遠慮することはない。
あの時の、絶望的な気持ちを込めて、俺は唱える。
「コールドレイン!」
氷の矢が降る。
それを、旧・風の精霊は暴風で吹き払った。
頭上に意識がいった瞬間。真正面に隙ができた。
ヒョウンから貰った装備は羽毛のように軽い。
俺は一足飛びで旧・風の精霊の間合いに入り、その首を断ち、その背後に着地していた。
「まだにゃ!」
アリエルが必死の声で叫ぶ。
振り返ると、二つに切断された体は風となって、再び一つの形を成した。
「精霊は魔法生命体。魔法以外の攻撃は効果が薄いにゃ!」
「そういうことは先に言え、駄猫!」
言うと同時だった。
風のランスが、俺の肩を貫いていた。
激しく出血する。
目眩がして、俺はその場に座り込んだ。
アリエルの炎の傘は遥か遠く。
コールドレインもこうなると自爆技となり使えない。
絶体絶命だった。
続く




