迷宮を彷徨う
二人共起きて、冒険に戻った。
歩きながらアリエルが言う。
「そう言えば、気になっていたことがあるにゃ」
「気になっていたこと?」
なんだろう。
「岳志のサンダーアロー。確かに強力にゃ。だけど、あれだけイメージを乗せていない。魔術はイメージ。あれだけは強化の余地があるとはあると思わないかにゃ?」
「……考えたことなかったな」
なにせ、現状で十分強力だ。
さらに、光の速さで相手に届く矢。イメージのつけようがない。
「まぁ考えてみることにゃよ。ふとしたことから閃くこともあるかもしれないからにゃ」
ヒョウンが武の師匠だとしたら、魔の師匠はアリエルなのだろうか。そんなことをふと思って、俺は少し苦笑してしまった。
「なんかおかしいことでもあったかにゃ?」
アリエルが不思議そうに問う。
「なーんでも」
俺はとぼけた。
アリエルは不服そうだったが、問い詰める気もないのか、前に進んだ。
その先、俺達はオーク、シャドーウルフ、1つ目コウモリ等を退治しながら進んだ。
アリエルが言うには、幸いなことに軽い敵に当たっているようだ。
迷宮の中に風が吹き始めていることに俺は気がついた。
目的地が近づきつつある。
「来るにゃよ」
アリエルが緊迫感の籠もった声で呟くように言う。
開けた大部屋に出た。
緑色の髪と服を着た女性が、血の涙を流しながら、こちらを呆然とした目で眺めていた。
今までの敵と気配が違う。
これが、旧・風の精霊。
今回倒すべきボス。
その内包する魔力の濃さは素人目にもわかった。
続く




