愛はどう動く?
俺はそこではと、愛の方はどう動いているのだろうと考えた。
アリスは東京へ行けといった。
しかし愛に行動を委ねる方法もあるわけだ。
愛の資金力ならば京都までやってくることも簡単だろう。
現金の調達も楽かもしれない。
時間が経てば愛は俺との合流を選ぶのではないか。
しかし、そこで思い直す。
愛は俺を信じている。
だから、アリスが俺が動くと伝えたならばそれに沿った行動をするはずだ。
その行動とは。
俺は東京駅に行き、新幹線に乗った。
名古屋で降りる。
金の時計の下で待つ。
中間地点で待つ。それが俺の出した答え。
銀行が使えないことは愛も知っているだろう。
ならば、中途半端な所持金で何処を選ぶか。
実は、ここに俺達は何度も来たことがある。
金色の時計を待ち合わせ場所にして。
将来のデート先にも上げていた。
それを愛が覚えてさえいれば。
一縷の望みに縋るような考えだ。
けど、今はこれしかなかった。
俺は待つ。
待ち続ける。
そのうち不安が滲む。
京都で待っていた方が良かったのではないか、と。
その肩を、ぽんと叩かれた。
振り向くと、抱きつかれた。
俺は苦笑する。
この体格、確認するまでもない。
愛だ。
「愛、今、幸せか?」
「ん。ちょっと幸せ、かな」
俺達は抱きしめあった。
本番はこれからだ。
つづく




