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ねーねー春武ー

 昼休みの時間、辰巳と俺と翔吾は三角キャッチボールをしていた。

 それを見守る愛は、遠巻きに窓から観察されている。

 俺と愛が付き合っているのは公然の事実。

 皆が気になるところなのだろう。


「ねーねー春武ー」


 愛が言う。


「なんだー?」


「やっぱ男って大人しくて恥じらいのある女の子の方が好きなの?」


 一瞬、呆気に取られた。


「危ない!」


 辰巳の声で我に返り、胸元に飛んできていたボールをキャッチする。


「なんだよ藪から棒に」


「なんとなーく」


 そう言ってベンチに座った愛は両足をぶらぶらさせる。


「俺は愛が一番好きだよ」


「アリスさんに未練ありそうだけど?」


「そりゃ吹っ切れたとは言わないけど今は愛が一番だ」


 吹っ切れたとは言えない。それが正直なところだ。

 幼い頃から想い続けてきた相手。一朝一夕で忘れられはしない。


「けど俺、最近アリスと会ってないぜ。合体したからわかってるだろ」


「あの時は一体化しそうでそれどころじゃなかった」


 それもそうか。俺もそれがあって愛の心境を今ひとつ掴めていないのだ。


「愛ー?」


「なにー?」


「幸せか?」


 愛はきょとんとした表情になった後、不敵に微笑んだ。


「知らなあい」


 これだ。

 尽くし甲斐がないというものだ。


「春武」


 翔吾が諌めるように言う。


「ごちそうさまでした。けどキャッチボール、止まってる」


 俺は我に返って翔吾に向かってボールを投げる。


「時間限られてるんだから真面目にやってよね」


 呑気なようで野球に対しては真摯な翔吾なのだった。



+++



 少年は廊下を歩いていた。

 何故だ? と言う思いがある。

 愛・キャロライン。

 彼女は距離を置かれていた。

 不敵な態度。有名な母。素直じゃない感情表現。

 複雑なその存在を許容するのは自分しかいないはずだった。


 しかし、愛はぽっと出の男と交際を決めた。

 何故だ?

 そんな思いが拭えない。


 何処で間違えた?

 何処まで遡ればやりなおせる?


「君、良い魂をしているね」


 部外者の女が、軽薄に笑った。

 不法侵入者か? 一瞬身構える。


「スキル、欲しくないかい」


 女は軽薄に微笑んだ。



つづく

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