合体拒否
「ということなの、お願い春武! 手を貸してもらえないと私魔界の女王になっちゃう!」
そう言ってギシカは深々と土下座した。
また頭突きでコンクリートにヒビ入れてる。
「手を貸すって……合体か?」
俺は恐る恐る問う。
「うん、私達の魔力の波長は似てるから、合体してもお父さん気づかないよ。春武の技術を貸してくれれば良いの!」
俺は困ってしまった。
原因は簡単だ。
「けど俺、愛がいるし」
愛という恋人がいる以上、他者と心を一つにするのはいかなるものか。
「それは勝手じゃない!?」
ギシカが悲鳴のような声を上げる。
この前まで散々合体しようって持ちかけてたのはこちら側なので耳が痛い。
「あー……じゃあ愛が良いって言ったら」
「駄目よ」
後ろからピシャリとした声。
「春武を呼び出してるからなに話してるかと思えばあんたは」
叱るように言う愛。
ギシカは再びアスファルトにヒビを作る。
「お願いします! 魔界なんて行きたくないです! 私は東京生まれ東京育ちなんです!」
「私と春武の思い出は二人だけのものよ。なんであんたと共有しなきゃいけないのよ」
理解しかねる、とばかりに愛は言う。
「ともかく、だーめ」
今後緊急の場合はどうなるんだろうなあ。
それを考えると先が思いやられる。
「まあ代替案はあるから、それで手を打ってくれよ」
「代替案!?」
後がないらしく、ギシカはがばっと体を起こした。
「まあ単純な手だ」
俺は淡々とした口調で言う。
ギシカの瞳は期待に満ちていた。
つづく




