迷宮のあらまし
「さて、大部屋はいくつもあるけどどこを目指すかな」
この広大な迷宮にはいくつもの大部屋がある。それぞれになにかが隠されてると見てもまあ甘い考えではないだろう。
「駄猫ったらなんの情報も知らないっつーんだから本当お前なんの役に立つのかな」
「しょうがないにゃ。天界に住んでいたらこんな場所管轄外にゃ。けど舐められるのは癪だから、ちょっと私の力を見せてやろうじゃないかにゃ」
そう言って目を閉じると、アリエルは精神統一を始めた。
小さな三つ編みが浮き上がる。
そして、四つの光が放たれ、ものすごい勢いで迷宮を駆け抜けていった。
迷宮の地図に、赤、黄色、緑、水の四色の色が浮かび上がる。それぞれ、違った位置の大部屋に存在していた。
「それは、それぞれの属性の具現化にゃ。そこにいればその属性のボスがいると考えてもらえればいいにゃ」
俺は思わず黙り込んだ。
どうしよう。
この猫意外と使えるんですけど。
もう迂闊に無能呼ばわりできないじゃないか。
「どこを目指すかだな。羽毛のように軽い鎧……風属性かな」
「倒す算段はあるのかにゃ?」
「流石に物質化してないとかなら勝てないけど、その場合は世界を閉じる」
「まあ無難だにゃ」
重いリュックを背負って、歩き始める。
ヒョウンに貰った装備は本当に軽かった。
「そもそも、この迷宮はなんなんだ? レベルアップのためだけに作られたのか?」
「それはナンセンスな考えにゃね」
アリエルは淡々とした口調で俺の言葉を否定する。
「人間一人や二人のためにこんな広大な異次元やモンスターを用意しないにゃ」
「じゃあ、ここはなんなんだ?」
「有り体に言えば、監獄」
部屋の気温が、数度下がった気がした。
「堕天した精霊の行く末にゃよ」
「つまり、将来のお前の行き場所ってわけだ」
「私は堕落はするけど堕天はしない自信はあるにゃ」
堕落してる自信はあるのか、と呆れる俺だった。
駄弁りながらもマップを凝視しながら進む。
目的地まで、三日と言ったところだろうか。
これが現実世界では一瞬なんだから、このクーポンの世界というのは不思議なものだ。
続く




