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謎の女
「誰だっけ」
俺は率直な意見を述べていた。
眼の前の女性に思い当たる節はない。
「初対面さ」
女性は軽薄に微笑む。
戸惑いが心を占める。
何故初対面の女性に話しかけられているのだろう。
変人だ。
そう結論づけて、先を急ぐことにした。
「面白くないほど真っ直ぐな魂だね」
女性は軽薄な笑顔のまま言う。
俺は踏み出した足を止める。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味さ。苦難も何も無い。真っ直ぐな人生を歩んできた魂。私が魅力を感じない魂だ。育ての親が良かったのかな?」
俺の産みの親と育ての親が違うことを知っている?
俺の中に警戒心が芽生える。
「パパラッチか?」
「違うさ」
女性はそう言うと、歩き始めた。
「君とはまた近々会うよ。近々ね」
そう言って、女性は歩き去って行った。
俺は戸惑ったが、家路へと向かうことにした。
後から思えば、ここがターニングポイントだった。
つづく
昨日は仮眠を摂るつもりが起きたらこんな時間に……。
今日は昨日の分まで二話投稿します。




