ギシニル再訪
「ともかく合流。集まって春歌の探知で大体の距離を絞り込む。近距離になれば私の方が精度は高い」
千紗の言葉に俺は同意する。
「了解。合流場所は?」
「都庁!」
なるほど、六華の、ひいては政府の指示も仰げるわけか。
俺達は電車を使って都庁へ向かって移動を始めた。
その時、愛が気配を察知したらしく身震いする。
「強い力……けど、知ってる魔力のような?」
「知ってる魔力?」
「誰かの魔力に近いのよ、質が」
「それはこの前俺とお前でやっただろ」
「そうじゃなくて、本当に既視感を覚えてるの」
バスから降りる。
その時、都庁の高い階に向かって突入する影があった。
ガラスが舞い散る。
俺は咄嗟に愛を抱きかかえると、縮地で割れた窓まで飛び上がった。
着地すると、そこには男の背中。そして硬直する六華と春歌。
「ここにいたか、六華」
その言葉で、六華は慌てて男の背後の俺に声をかけた。
「大丈夫。この人、敵じゃない!」
「窓割って訪問してくるような常識外の知り合いいるんすか叔母さん」
戸惑いつつ言う。
退魔の双剣に手が伸びるところだった。
「この人は、その……」
男は俺を見た。
角が生えていた。
悪魔だ。
ギシカがキレた時に出る角。それが常時出ている。
「岳志の子供か。似ているな」
「親父を知っているのか……?」
六華は頭を抱えて溜息混じりに言う。
「かつて模造創世石をかけた最終決戦で味方側についた悪魔、ギシニル」
そして、恥ずかしげに目を逸らして言葉を続けた。
「私の旦那よ」
「ギシカのお父さん!?」
そりゃ数十メートルの高さから突入できるわけだ。
妙に納得した俺と愛だった。
「それで、用は何? 魔界から来訪がある時は言ってって言ってたじゃない。それも魔界の長の貴方が直々に」
「話は密を要するのだ」
ギシニルは淡々とした口調で言った。
彼はなにを話すのだろう。
俺は愛を降ろし、彼が再び口を開くのを待った。
つづく




