ヒョウン再び
「それじゃあ行くぞ、駄猫」
食料は十分に買い込んだ。
俺達は迷宮に潜る準備をしていた。
アリエルは頷く。
「こういうのはすぱっといってすぱっと帰るにゃ」
迷宮のクーポンを起動する。
周囲が薄暗い迷宮へと様変わりする。
ファイアを詠唱し、灯火とする。
アリエルが、まず役割を果たした。
「ヒョウン、出番にゃ」
腰に゙剣を帯びた騎士が音もなく現れた。
顎をさすり、興味深げに俺達を見る。
「久々だな。また、やるようになったな少年」
「魔術の方はちょっと自信ありかな。けど、剣術ではまだまだ貴方には届きません」
「一朝一夕で届かれては私も立つ瀬がないよ」
ヒョウンはそう言って苦笑する。
「で、如何ようか」
アリエルが事情をかいつまんで説明する。
有り体に言えば、装備への不安感だ。
ヒョウンは難しい表情になった。
「これはいらぬ不安なのかも知れないのだが……」
そう前置きして、言葉を続ける。
「今の君の装備は、君の機動力持久力を殺さないいいバランスの取れた装備だと思う。重い武装となるとそうはいくまい」
確かに、言われてみればその通りだ。
重い鎧を着て飛んだり跳ねたり。レベルアップして筋力が上がっているとは言えどこまでできるものか。
「と言っても、迷宮の中には羽毛のように軽い鎧もあるという。探求するのは無駄ではなかろう。これは私からの、手向けだ」
そう言うと、俺の体が光り輝いた。
兜、鎧、腕にくくりつけられた盾が――しかもそれぞれ軽い素材のものだ――が、装着されていた。
「それは多少耐久力に難があるが、ないよりはマシだろう。まあ、使ってみてくれ。武運を祈る」
そう言うと、ヒョウンは姿を消した。
「相変わらず格好いいなーヒョウンは」
素直な感想を言う。
「そうにゃね。誰かさんと違って背も高いし」
「駄猫とどこで差がついたかなあ……」
「そういうこと言うならもうウリエルのヘルプを伝えてあげないにゃよ」
「すいませんでした」
なにはともあれヒョウンおじさんはいつもありがたい。
ここからが冒険だ。
続く
いつもより遅くなって申し訳ありませんでした。
二回目の投稿も、付き合いの飲食があり、遅くなると思います。




