さらば、相棒
「愛の光を展開して包むことはできる?」
春歌は口早に訊いてくる。
こうしている間にも先生の保有する魔力は膨れ上がり続けている。
「一方向にしか出せない。全方位に出せるならそれこそ無敵だぜ」
愛の母親譲りの無効化の光。
それは一方向にしか出すことはできない。
ここで展開しても、上から巻き込まれるだけだ。
「退魔の長剣では斬らないでね。暴発する可能性がある」
「わかった」
じりじりとしつつ時間だけが過ぎていく。
そのうち、俺の脳裏に――俺と言うより愛だが――閃くものがあった。
俺は退魔の長剣を先生に突き立てる。
先生は目を丸くする。
爆発的な魔力が暴走し始める。
「なっ」
春歌が唖然とした口調で言う。
俺はその刹那、退魔の長剣に愛の無効化の光の力を注ぎ込んでいた。
相手の魔力を体内から無効化する。
荒業だ。
しかしそれは成功したようで、先生はぐったりとして、動かなくなった。
静寂がその場を包んだ。
「力技ねえ」
春歌が呆れたように言う。
長剣が扇子の形に戻る。
無効化の光で元の姿に戻ったのだ。
二度と、長剣になることはないだろう。
「あばよ、相棒」
そう言うと、俺はギシカに扇子を手渡した。
俺と愛は分離すると、抱き合った。
「終わった……のか?」
「すぐに警察と陰陽連を呼んで先生を拘束する。首謀者が捕まれば一連の事件は終わりよ」
春歌は淡々と言って、パネルフォンの操作を始める。
辰巳の歓喜の声が周囲に響いた。
「さあ、これで帰れるわね、春武」
俺はぎくりとした。
俺が東京に来たのは六華の護衛のため。そこから親父の護衛に転じたが要は人材不足のしわ寄せだ。
その問題が解決した。
俺の拠点は関西だ。
帰らねばならない。
ふと愛を見ると、不安げにこちらを見ていた。
つづく




